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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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押してダメなら引いてみろ作戦


 パッと手を振り解こうといたしましたが、ビクともいたしませんでしたの。


 そのままの姿勢でジトーっと睨まれてしまいます。終いには舌打ちまで聞こえてきましたの。


 とはいえ、ここでミントさんにヘソを曲げられてしまいますと、肝心な改善の術を教えていただけませんからね。


 しゃーないですの。別に私は悪くありませんけれども、折れてさしあげましょうか。


 オトナな私には多少の理不尽を乗り越えられるだけの忍耐力があるのでございます……!



「こっほん。分かりましたの。根性論でも何でも構いませんの。是非とも魔力操作のコツを教えてくださいまし」


「フン。いい心掛けね。どうせザコ聖女のことだから、ふぬぬぬーっとか何とか言って無駄に(りき)んきただけなんでしょ?」


「ご名答ですの。よく分かりましたわね」


「かーっ。マジで脳筋よねアンタらって」


 ぺっしーんと叩かれちゃいましたの。

 でも今度は痛くなかったですの。


 地味ぃにご配慮いただけたようで。



「ちょっとミントさん!? アンタらってどういうことかなぁ!?」


 変なところに引っかかったのか、スピカさんが釣れちゃいましたの。スタタと近寄ってきては、こちらもジトーっと睨んできております。


 ……いや、私はともかくスピカさんは脳筋そのものだと思うんですけれども……。


 基本的に腕っぷしだよりの戦闘スタイルですし。己が傷付くことも恐れずに果敢に懐に潜り込んでいくではありませんか。


 むしろ脳筋以外の何者でもないですの。


 私とミントさんで顔を見合わせて、示し合いもなしにほぼ同タイミングで頷き合います。



「あの、私が脳筋なのであれば、スピカさんは間違いなく脳筋だと思いますけれども」


「自覚は成長への第一歩よ。その調子その調子」


「へっ……?」


 キョトンとなさっていらっしゃいますが、今はスピカさんがメインのお話ではありませんわよね。


 私の魔力操作が上手くなるか否かという分岐点なんですもの。


 この機を逃すわけにはまいりませんの。



「では、ご教示よろしくお願いいたしますの」


「……ハァ。調子いいヤツめ」


 私が真摯にぺこりと頭を下げますと、いつもながらミントさんは溜め息とともに苦笑いを浮かべてくださいましたの。


 イヤな顔をするわりには聞いてくださるのでございます。


 私もわがままの吐き甲斐があって嬉しいですの。


 姐さんには存分に頼ってこそですものねっ。



「もちろん魔力の送り先を意識するって行為は間違ってないわ。けどね、必要なのは気合いじゃないの。本当に大事なのは血の流れに乗せるイメージよ」


 胸を張ってドヤりとお答えなさいます。


 いわゆる先生モードのときのミントさんの癖ですの。


 小柄なお身体で目一杯にアピールなさるのでお可愛らしいのです。


 ただしニヤニヤしていると殴られてしまいますので、あくまで平常さを装って受け答えをするのが円滑にやりとりを続けるコツですの。



「血の流れ……ですか。修道院時代にも同じようなことを言われましたの。よく分かりませんでしたからスルーしてまいりましたけれども」


「ま、抽象的な物言いだってのはアタシも分かるわ。手っ取り早く体感させてあげるから腕貸しなさい」


「既に委ねておりますの」


「あら、そうだったわね」


 私の白くて艶やかな細腕をグワシと握っていらっしゃること、もう忘れてしまわれまして?


 きっとあまりの素晴らしい触り心地に手が馴染んでしまったのでございましょうね。


 私ったら罪な美女聖女ですこと。うふふ。


 ミントさんは私の手を掴む位置を、手のひらのド真ん中の辺りから、少しずつ手首のほうへとおズラしなさいましたの。


 やがては付け根のあたりに親指を当てるようにして、軽く握り込んできております。



「ほら、こうやって誰かに手首を押さえられると、嫌でも自分の脈拍が分かってくるでしょう?」


「え、ええ。トックントックン言ってますの」


 自分でも驚くほどにゆっくりで、そして弱々しいモノでしたの。


 元々血気盛んなタイプではありませんでしたし、昔から菜食メインの貧血気味な人生を強要されてまいりましたゆえ。


 こうでもされないと分からないくらいなのです。


 でも、私の脈がどうしたんですの?



「ようはこのリズムに合わせて魔力を送ってやりゃあイイのよ。それも少しずつでいいわ。一度に大量の魔力を送ったところで、どっかで渋滞を起こすわね。終いにゃ無駄に疲れて終わるだけよ」


「ほっほーう。なるほどイイことを聞きましたの」


 言わば〝押してダメなら引いてみろ作戦〟ってことですわよね?


 完全に盲点でしたの。確かにおっしゃるとおり、効力に乏しければ何もしていないに等しいのです。


 それならば今度は慎重にチビチビと魔力を注いでみましょうか。試したことありませんでしたもの。


 私の脈拍に、つまりは鼓動に合わせてリズミカルに魔力を送るってことですから……。



「……すぅ……ふぅ……むぅ……っ」



 とにかく心を落ち着かせて、目を閉じて。


 どうですの?

 だいたいこんな感じで合っておりまして?


 

 

そういえば最近、新しい挿し絵を作成中です。

ミントちゃんのビジュアルも初公開ですの(*´v`*)

 

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