表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/348

ご忠告、ありがとうございます

 

「あら、お二人とも面識があったんですのね」


 今朝方のイザベラさんのお話ぶりですと、せいぜい有名人のお宅をご存知だというくらいかと思っておりましたけれども。


 明らかに知り合い以上の関係性が見てとれましたの。


 ぽっと生まれ出た私の疑問にシロンさんがサラリとお答えくださいます。



「ああ。幼馴染みとまでは言えないけれど、彼女とは結構な付き合いでね。僕は勇者の血筋として、彼女はこの街の才女として、ある意味での有名人同士だったからかもしれないな」


「…………どちらかと言えば、私が面倒を見てさしあげていた時間のほうが長いと思うのですが」


「ははは。きっと歳の差のせいかな」


 鋭いツッコミに、バツの悪そうに照れ笑いをしておりましたの。


 はにかむお姿はスピカさんにとても似ていらっしゃいますわね。さすが従兄弟さんですの。


 各々の歳の差につきまして、この辺で少しばかり整理をしておきましょうか。


 先代様からお聞きした感じですと、イザベラさんは私よりも少し歳上とのことでしたから、スピカさんの弟的なシロンさんとは少なくとも三つか四つ、もしくはそれ以上に離れているかと思われます。


 一緒に遊ぶというよりは、確かに面倒を見るという表現のほうが近いかもしれませんの。


 血縁のスピカさんは離れた王都でずっと暮らしておりましたから、実質のお姉さん役はイザベラさんが担われていた可能性も大いに考えられます。


 確かに嘘や誇張の類ではなさそうですの。


 こっそりとスピカさんに耳打ちをしておきます。



「ちなみにスピカさんはイザベラさんとご面識がありまして?」


「ううん。多分、今日が初めてだと思う」


「であればお一つご助言をば」


「うん?」


 ご本人に聞かれたらまた面倒なことになりそうですので、より一層に声を潜めてお伝えいたします。



「あのイザベラさんは結構厳格なタイプの修道女さんですの。彼女の琴線に触れると何かと面倒ですゆえ、できればなる早におサラバしたく思っておりますの」


 彼女とは馬が合わないと言いますか、そもそもの考え方自体が異なっていると言いますか。


 ましてイザベラさんはこの神聖都市の住人そのイチみたいな考え方のお人ですゆえに、私に対してのあたりの強さだけでなく、こちらのミントさんが魔族と分かった暁にはどんなご表情をなさるか想像もできませんの。


 見ぬもの清しの精神でまいりましょう。

 触らぬ何かに何とやらなのでございます。



「リリアちゃん、もう何かやらかしたの?」


「べ、別にそういうわけではありませんけれどもっ。いわゆる乙女の勘ってヤツですの」


「どうだか〜」


 ニヤニヤしてもこれ以上のボロは出しませんのっ。


 既に溢れんばかりの自由さを振り撒いてしまいましたし、なんなら面と面を向かって喧嘩も売ってしまいましたけれども、まだ事件勃発レベルにはなっていないはずです。


 できればあまり関わらないほうが平和に過ごせる気がしてならないのでございます。


 無理矢理に関わらねばならないこともありませんし。


 スピカさんも私の忌避的精神を汲んでくださったのか、初めはやれやれといったご様子でしたが、そのうちに私にだけ分かるように小さく頷いてくださいましたの。


 いわゆる営業スマイルに切り替わってくださいます。



「あーっと、えっと、イザベラさん」


「…………なんでしょう?」


「リリアちゃんを連れてきてくれてありがとうございました。ここで引き取っていきますね」


 んまっ。引き取るとは、ヒトをモノみたいに。

 私がお荷物とでも言いたいんでしてっ!?


 ……とは素直に言えない私なのです。

 真っ向から否定できないのが悔しいですの。


 スピカさんがぺこりと礼儀正しく頭を下げますと、その言葉を受け取ったイザベラさんはより一層スンとした澄まし顔になられましたの。


 とにかく淡々と返答なさいます。



「…………どうやらリリアーナさんは聖職者にあるまじき欲深さをお持ちのようですので。日頃からキチンとご監督されることを推奨させていただきたいのですが」


「あっはは。面白いこと言いますね。是非とも前向きに検討しておきましょうか。別に私はリリアちゃんの保護者ってわけでも何でもないですけどね」


「…………それでも、貴女が今代の勇者とのことであれば、むしろ当然の責務かと」


「ご忠告、ありがとうございます」


 ニコッと笑って、スピカさんはそれ以降、何もお発しなさいませんでしたの。


 ただただ強く私の手を握りしめただけなのでございます。


 はぇー、オトナな返答をなさいますことー。


 受け答えをしていたのが私だったら、即刻売り言葉に買い言葉な口撃バトルが始まっていたかと思いますのにー。



「…………話が済んだのであれば私はこれで。先代様には途中でお迎えの方が来たと申し伝えておきます」


「ええ。よろしくお伝えくださいまし」


 次か、またその次の〝真夜の日〟にちょろっとご挨拶に伺おうかと思っておりますゆえに、どうかそれまでご健康に過ごしていただけたらと思いますの。


 そのうちに道順も再確認しておきましょうか。

 何回か歩けば少しは覚えられると思いますの。


 とにもかくにも、未練も何も感じさせない、冷淡(クール)すぎるほどサッと踵を返したイザベラさんのお背中を、私たちは静かに見送らせていただきました。


 そうしてお姿が完全に見えなくなってから、ようやく緊張の糸を切ることができたのでございます。


 この後邸宅に戻ってから、まずは昨晩の間に何があったのか、スピカさんとミントさんにキチンとお伝えせねばなりませんわね。


 それとこの指輪についても軽く擦り合わせをしておきたく思っておりますの。


 優雅にティータイムなどに勤しみながら、のんびりと確認していければと思っておりますの〜……っ。


 今一度スピカさんの顔色を伺おうとした、ちょうどそのときでございましたの。



「スピカ姉さん。僕はこの後用事があるからここで失礼したいんだけど、後は任せても大丈夫かな?」


「あ、うん。先に戻っておくね」


「よろしく頼むよ」


 イザベラさんに続いて、シロンさんもまた、街の雑踏の中に消えていってしまったのでございます。


 ふぅむ。ご予定時間のギリギリになるまで私の捜索を手伝っていてくださったのでしょうか。


 そう考えると忍びないですわね。

 大変、ありがたい限りですの……!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ