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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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ああぁーッ! リリアちゃんいたァーッ!

 


 イザベラさんが淡々とお続けなさいます。



「気に食わないどころか、むしろ聖職者の風上にも置けない存在だとさえ思っています。どうして貴女が聖女に選ばれたのか、甚だ疑問しかありません」


「あら、随分と直接的なおっしゃりよう(・・・・・・・)ですこと」


 先代様がいない今、先ほどよりはずっと自由に発言できるのでございましょうか。


 腹の探り合いをしていたところで意味はありませんし、私の性格や態度が聖職者としてはあまり好ましくないということも、重々に理解しているつもりですの。


 そこまでダメージはありませんでしてよ。



「そう言われましても、別に私自らが聖女に立候補したわけでもありませんし、そもそも私に拒否権なんてありませんでしたゆえ」


「だからこそ余計に腹立たしいのですッ!」


「ふぅむぅ……困っちゃいますわねぇ」


 そしてまた、お譲りしてさしあげるつもりもないですので、文句を言われ続けるのも癪ですの。


 与えられた任を途中で放り投げるのはスピカさんに申し訳ありませんからね。


 というより、もしも私が女神様に対して堂々とイヤと言える立場であれば、とりあえず私のお股間を守っている光の貞操帯を即刻解除していただいていたかと思いますの。


 そうなれば今頃は自由恋愛に勤しんでいたはずですし、もしかしたらもう結婚相手を見つけて子供を授かっていたかもしれません。


 けれどもそうはなっていないから。

 私は今も聖女であり続けているのです。


 私が聖女である限り、聖女としての責務を果たしてみせますの。



 鋭い睨みに対して、こちらも毅然とキメ顔を見せつけてさしあげます。


 武力をもって解決するような、愚直な選択肢を選ぶことはありません。



 ……けれども、イザベラさんが睨むどころか蔑むような目付きになったことを、私は見逃せませんでしたの。


 

「正直に申し上げましょう。私は貴女を今代の聖女とは少しも認めていません。品性を感じさせない話しぶりに、際限のない欲深さに……私は私の人生観をもって、貴女を否定しなければならないのです」


「否定しなければならないってそんなお窮屈な……あんまり気張ると息が詰まってしまいましてよ」


「……本来であれば、貴女をここに置いてさっさと立ち去ってしまいたいくらいです。けれども私がそうしないのは、恩義ある先代様にお願いをされてしまったから。私には貴女と話すことは何もありません。黙って着いてきてください」


 私の返答も聞かずに……いえ、むしろ聞く気がないことを堂々と示すかのように、さっと踵を返してはまた歩き始めてしまいました。


 私が初っ端に挑発をしたせいもあるのでしょうが、それでも……。


 先代様がイザベラさんに対して複雑そうなお顔をしていらした理由も、今なら分かるような気がいたしますの。


 聖職者としての礼儀正しき振る舞いに隠された傲慢さが――彼女の元来から持ち得ていたであろうプライドの高さが、ひしひしと滲み出ているような気がするのでございます。


 こんなにも簡単に他者への嫉妬や憎怒や嫌悪を表側に出してしまうのはダメだと思いますの。


 そんなの全然聖女的ではないですもの。


 たとえイザベラさんがどんなに聖女になりたかったとしても。


 私が絶対に譲ってさしあげませんの。





――――――

――――


――




 やがて、私たちはほとんど無言のまま、粛々と大通りのほうへと戻ってまいりました。


 ようやくながら人の往来が増えてきた場所に来れた気がいたします。



「ふぅむ……!? この辺りは……!」


 さすがの私でもつい昨日に歩いたばかりの場所であれば、覚えていないわけがありませんものね。


 精巧な硝子細工を飾っていた古物店や、軒先で甘味を売っていた菓子店に、はたまた綺麗な反物をズラリと並べていた衣服店などなど……。


 いわゆる職人街と呼べる区画ですわよねッ!


 お小遣い程度では手を出せないシロモノばかりでしたゆえ、ほとんどウィンドウショッピングくらいしかできませんでしたけれども。


 この手元の指輪を購入した雑貨屋からも、そこまで距離は離れていなかったかと記憶しております。


 あ、そうですの。


 お二人からのご連絡はありませんでし――



「ふぉっ、ちょうど光っておりますのッ!」


 手元の指輪がピカピカと発光していることに今気が付きましたの。



「…………………………何ですか、そちらは」


「旅のお仲間さん方からの通信連絡ですの! ただ今もお探しいただけているらしく」


 とにかく詳しい話は後ですの。

 

 指先の光ですが、心なしか私たちの進行方向に光の矢印が伸びているような気がしないでもなく。


 指輪間の距離が近ければ近いほど、伸びる長さも大きくなる〜みたいな機能があったら分かりやすいんですけれどねぇ。


 取り急ぎお返事をしておきましょうか。


 ふぅむ、ふぬぬぬぬぬ……!

 これでヨシっと、ですのッ!


 再度ありったけの魔力を指輪に込めさせていただきました。


 きっとスピカさんに、そしてお側にいらっしゃるであろうミントさんに発光信号が届いていると信じて、今はタリアスター邸に向けて歩みを進めておきましょ――







「ああぁーッ! リリアちゃんいたァーッ!」



 ふぅむっ!?

 聞き慣れたこのお声はっ!?


 人混みの向こう側から聞こえてきたような気がいたしますのっ!

 

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