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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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さすがに黙ってひた隠すような性格の悪い方ではないと

 

 私の言葉を聞いたアナスタシア様は初めはポカンとしていらっしゃいましたが、そのうちにクスリと苦笑いを零してくださいましたの。


 己の聖女人生と重ねてみて、でも重ならなくて、そういうのもアリかもしれませんわね、と。


 きっとそんなことを思ってくださったのだと勝手に判断させていただくとして。


 どうぞ次世代の聖女の活躍を楽しみにしていてくださいまし。そして私のことを温かく見守っていてくださいまし。


 必ずや貴女のようにキチンと役目を果たしてみせますし、ご期待にも応えますゆえにッ!


 はい。言いたいことは言いましたの。


 私も現役として意地を張りましてよ。

 何か文句はございまして?


 もちろんあるわけがないですわよね。

 こんな堂々と宣言されてしまっては――

 


「……口では何とでも言えますがね」


「ふぅむぅ? ほっほ〜う?」


 ボソリと呟いたイザベラさんのそのお言葉。

 こうして耳に届いてしまっては反応せざるを得ませんわね。


 売られた喧嘩は買わないのが淑女ではございますが、まだ私は見習いの身ですゆえに。


 気分でどうにでもできてしまえますのッ!

 後で反省すればよいだけなのですから。



「イザベラさん、とおっしゃいましたわよね。アナタ、何やら気に食わないことでもございまして? 言いたいことがあるなら直接言ってくださってもよろしいんでしてよ?」


 私の決意表明に対して真っ向から泥を塗るようなやり方、あんまり褒められたモノではないと思いましたの。


 私が今代の聖女であるのが気に食わないのであれば、どうぞ面と向かって文句を垂れてくださいまし。


 受けて立ってさしあげますの。


 能力で劣っていようと人望で負けていようと、聖女でありたいと思う気持ちに嘘偽りはありませんゆえに。


 スタタと目の前まで歩み寄ってから、腰に手を当てながら、はは〜んと舐めるようにお顔を見つめてさしあげます。


 いわゆるガン飛ばし(・・・・・)のポージングってヤツですの。



「………………別に」


「なーるほど。それとも真面目なイザベラさんも、その実はお口が悪ぅございまして? 適当な言葉を探されなくとも結構ですの。むしろお好きに話してくださって構いませんの」


 ついでに余裕ありげな微笑みもプラスしておきます。


 そもそものお話、自制心とはスタートから発揮できてこそのモノだと思うのです。


 毎回毎回そう簡単に負の感情を口から出しては、アナスタシア様がお叱りになるのも当然かと思われますけれども。


 妬み嫉みは成長への一番の害なのです。


 足を引っ張っていても自分は前に進めませんゆえに。淡々と己を磨くまでですのッ!


 ……こっほん。一応、今は普段の私は棚に上げさせていただきましょうか。


 私のほうがよっぽど毎日のようにスピカさんやミントさんに小言を言われていると思いますの。


 怠けや弱音に対して喝を入れてくださっておりますわよね。


 でもそれは、お二人が私のことをよく知っていてくださるからですの。


 愛ゆえのモノだと重々に理解しております。


 だからこそ、まったくの初対面の方に色々と言われる筋合いはないってことなんですのッ!



「……口の悪さに自覚がないわけではありませんが、少なくとも私は、貴女のような似非(エセ)な言葉遣いは習ったことがありませんね」


「むっ。おあいにく幼き日の私には、残念ながら師事できるようなヒトは身近におりませんでしたゆえに。コレも修道院に入ってから必死に身に付けた、いわゆる処世術の一つなんですけれどもねぇ?」


 今でこそ違和感なくこのお嬢様言葉を駆使しておりますけれども、初めの頃はヒト語を扱うことさえ大変だったのでございます。


 無邪気に野山を駆け回っていた私は、突然に保護されて人間社会に放り込まれてしまいましたの。


 それからというもの、老若男女の方と分け隔隔てなく接せるように、そしてどうにかして柔らかな印象を与えられるようにっ。


 苦肉の策で学び掴んだモノなのでございます。


 ほら、お淑やかな喋り方をしていれば、お相手方も高貴な生まれと勘違いしてくださいますでしょう?


 少なくとも身寄りのない小娘だとナメられることは減りましたの。


 無意味ではなかったと安堵しております。


 むしろアナタのように幼き頃から偉大な聖女様が身近にいてくださった方こそ、それはもう素敵な教養を身に付けていらっしゃるんですわよねぇ?


 正直、イザベラさんの境遇は羨ましくて仕方がありませんけれども、かといって無いモノねだりをしたまま己の足を止めるほど、私は暇でも愚か者でもないつもりです。


 使えるモノは何でも使いましてよ。


 たとえそれが、私のことを疎ましく思っていらっしゃる方だったとしてもッ!



「ふっふんっ。きっと聡明で博識で優秀なイザベラさんは、ハリボテな私とは違ってもちろん地図の読み方もご存知なのでしょうし、勇者様の血筋であるタリアスター邸までの行き方も、ご存知でいらっしゃるかと思いますの。

さすがに黙ってひた隠すような性格の悪い方ではないと、そう信じさせていただきたいものですけれども」


「はぁ? いきなり何を……?」


「知ってるんですの!? 知らないんですの!? どちらなんでして!?」


 謙虚でいたいと思いつつ、常に図々しくはありたいと思っているのも、また事実なのでございます。


 どうぞ恥知らずとお笑いなさいまし。

 私の方こそ鼻で笑い飛ばしてさしあげますの。

 

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