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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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イザベラ・ローズウッド

 

 というわけで、私とアナスタシア様は共に聖堂まで移動いたしましたの。


 やはりここは駄々っ広くてガランとしておりますゆえ、高い天井も相成って少しばかり寂しいような印象を受けてしまいます。


 ……しかしながら、ですの。


 私、昨晩とは異なる色味(・・)に気が付いてしまいましたのっ。



「はぇー……っ」


 なぁんだ、ですの。この古ぼけた教会にもしっかりとした魅力があるではございませんか。


 夜を越えて朝を迎えましたゆえ、窓のステンドグラスにはバッチリと陽光が差しております。


 昨晩の仄暗(ほのぐら)さとは打って変わって、とても色鮮やかで幻想的な光景が広がっているのでございます……!


 赤や青や黄色の光が床に映り込んで。

 それが壁や天井へと乱反射して、キレイで。


 こうしてじっくり見てみると年季の入り具合が趣深く感じてしまうから不思議ですの。


 先代様がこの場所を余生を過ごす場所に選んだ理由も今なら分かる気がいたします……!



「ふふ。気付かれましたか。もちろんのこと中央の教会のほうが華々しい装飾を随所に施されておりますが、その代わりに周りの建物や街壁が高いせいで、窓からの陽光を取り入れにくくなっているのですよ」


「ふぅむふむふむ」


「その点、この教会の周りには遮蔽物となる建物がないですからね。夜の薄暗さにさえ目を瞑ってしまえば、なかなか悪くないモノでしょう?」


「ええ。とっても素敵だと思いますの……!」


 ガラスの煌めきにうっとりとしながら、端から端までをゆっくりと瞳に映しておりますと、教会の入り口に一人の人影があることに気付きましたの。


 おおっと。そうでした。

 むしろこちらが本題でしたわねっ。


 はじめは逆光のせいでお姿が分かりませんでしたが、近付いてみてようやく分かりましたの。


 修道服をカッチリと着こなした――とってもスマートそうな女性が佇んでいらっしゃったのです。


 私と同じようにベールを被っていらっしゃるのですが、隙間から見える御髪は、光の当たり方によっては濃い紫色に見えたりしますの。


 キメ細やかなお手入れをされているのが一目見ただけで分かります。私も気を付けておりますもの。


 修道服の上から見ても細身と分かる身体は、その清廉さをド正直に示しているかのようです。


 逆に考えれば私の摘める二の腕は怠惰と我欲の証とも言えてしまうんですけれども……。


 彼女のお姿をざっと観察してみた限り、何よりも特徴的に思えたのはその眼差しでしょうか。


 目元がとてもキリッとしていらっしゃいます。

 どことなく意志の強さを感じます。人によってはキツめの表情とご判断されるかもしれません。


 その女性は先代様と目を合わせた途端、深々と頭を下げなさいました。単なる佇まいだけでなく、精神性においてもかなり敬虔な方でいらっしゃるようです。


 その後姿勢を戻されてから私の顔をチラリと見て、こちらの方は? と言わんばかりのすまし顔を先代様にお向けなさいました。


 理解なされたのか、こくりと頷きなさいます。



「貴女の疑問ももっともでしょう。しかしながら、まずは来客さんへ身内を紹介するのが筋というモノなのです」


 ゆっくりとした動作で、女性の横に立たれました。 そのまま平手を用いて私を視線誘導なさいます。



「この子が弟子のイザベラです。歳は貴女と同じか、少しばかり上だったかしら? この神聖都市の中でも、幼き頃から多くの才を披露してきた修道女です。彼女から学べることも大いにあるでしょう」


「はぇーっ。この神聖都市の中でも……! つまりはスーパーエースさんってことになりますわよねッ!?」


「ええ。胸を張って外にも送り出せましょう」


 先代様がにこやかに微笑みなさいます。

 その自信のほどが伺えましたの。


 幼き頃からということは、先代様がずっと目にかけてきたご自慢の一番弟子さんなのでございましょう。


 歴代の聖女様はその血を後世に残してこれませんでしたゆえ、代わりに己の持つ技術や知識を弟子に託していくのが一つの文化として成り立っているらしいのです。


 ポッと出の私なんかよりもずっと厳しい修道女修行をこなされてきたのだと推察いたします。


 お若いながらも風格があるんですもの。


 そのうちにはエースさんも、アナスタシア様と同じように修道院の長やら地域のまとめ役やらを平然とこなされて、最終的には人の上に立っているのが常という状況になられるんでしょうね。


 神聖都市も安泰だと思われますの、いやはや……。


 釣られてついウンウンと頷いてしまいます。


 これだけ見た目も中身もしっかりとしているということは、逆に言い換えれば、ちゃらんぽらんな私とは反りが合わなそう、という危険性も孕んでいることに注意ですの。


 でも、おその辺はほら、上手いことヤりますわよ。

 私だって一介の淑女なんですしっ。



(わたし)はイザベラ・ローズウッドと申します」


 ぺこりと上体を倒して、修道女の鑑のようなお辞儀を見せてくださいました。


 はぇーっと思わず見惚れてしまいかけましたが、ハッと我に返って私も急いで礼をお返しいたしますっ。



「こちらこそ、ご丁寧にどうもですの」


 ともなりますと今度は私が自己紹介をはしる番ですわよね。


 昨晩、先代様に初めて名乗ったとき、私の名前を軽く聞いただけで、今代の聖女であると理解なさっていらっしゃいましたの。


 きっと弟子のイザベラさんもわざわざ身分の詳細までをお伝えせずとも分かっていただけると思います。


 ゆえにサラリと名乗らせていただきますの。



「こっほん。お初にお目にかかりますの。(わたくし)、リリアーナ・プラチナブロンドと申しま――」


「リリアーナ・プラチナブロンド、ですってッ!?」


 ふぅむっ。何とビックリ、最後まで言わせていただけませんでしたのっ。


 いきなり私の名前を復唱なさったかと思いきや、今も口の中で一つ一つ確かめるように、何度もブツブツと呟いていらっしゃるようなのです。


 えっと、あの、これ……。

 いったいどういう状況なんですのッ……!?


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