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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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もしや自由とお酒には密接な関係があったりッ!?

 

 私にとって自由とは何なのでしょう?


 修道院時代はほとんど幽閉されていたも同然ですゆえ、ほとんど陽光に照らされることもありませんでした。


 あの頃に比べれば、今のほうがずっと好き勝手に振る舞えていると思いますの。


 しいていうならまだ窮屈なのは〝真夜の日〟当日くらいでしょうか。


 それでも人目につかない場所であれば、スピカさんやミントさんとは既に普段と変わらぬ態度で接することができておりますの。



 もしも私が無事に旅を終えられたとして。


 王都に凱旋して、この時代の英雄として迎え入れられたとして。


 そこに私の求める世界はあるのでございましょうか……?


 好きなモノを好きなだけ食べて、寝たいときに寝て、好きな人と好きなだけ恋をできるような、そんな自由な世界が、ですの……っ。



「私は今、実はもう結構な自由を満喫しているかもしれませんの。でも、完全な自由とまでは呼べないかもしれませんの……」


 しいて言わせていただけるのであれば。


 幼少の頃が一番自由だったのかもしれませんわね。裸足で野山を駆け回っていたあの頃ですの。


 王都の捜索隊の方々に保護されるまで、たったの数年間だけでしたが、何かに気を遣うこともなければ、何かに阻害されるようなこともない……。


 もはや種族の壁も軋轢さえも何もない、そんな自由な世界だったかと朧げながらに記憶しております。


 ふぅむっ?


 そういえば私の育ちの故郷って、この神聖都市セイクリットから考えますと、実はそこまで離れていないのではありませんでしたっけ?


 さすがに過酷な道のりになりますゆえ、魔王城への通り道にはならないかと思いますけれども。


 たまには思いを馳せてみるのもよろしいかもしれませんわね。


 みんな元気にしておりますかしら……。



 ほんの一瞬だけ、心ここに在らずな空気を醸してしまったからなのでしょうか。


 先代様がハァとわりと大きめの溜め息を吐きましたの。


 仰々しい咳払いまで聞こえてまいります。



「そもそものお話、貴女には聖職者としての心構えを半刻ほど問いただしてさしあげたいところですが、まぁいいでしょう」


「ふぅむ?」


(ひと)(せい)は、大人になってからのほうがずっと長いモノなのです。歳をとればとるほど人は自由を失っていきます。リリアーナさんは成人を迎えていらっしゃいますか?」


「い、いえっ。もうそろそろですけれどもっ」


 19を迎えたのが旅に出る少し前のことですから、しばらくしたら20歳になりますわね。


 と言いますより、私は自身の具体的な誕生日を把握しておりませんゆえ、だいたいこの季節を迎えたら年を一つ重ねる〜的なアバウトなカウントをしていたりするのです。


 下手したらセイクリットに滞在している間に誕生日が来るかもしれませんの。


 はてさて、そんなことも置いておきまして。



 大人になったら解禁されること。


 それはつまり飲酒(・・)に他なりませんッ!!



 もちろん私たち聖職者は基本的に飲酒は禁じられておりますけれども、何も全てがダメというわけでもないのでございます。


 女神教ではアレですわね。麦酒はわりと敬遠されている地域が多い印象ですの。


 代わりに果実酒なんかはだいたいどこでもおっけーと聞いたことがありますのっ!


 製法だか何だかが関係しているのだと修道院時代に学んだ記憶がうっすらとございます。


 ……その辺、よくは覚えておりませんッ!!


 本を読むのは好きでしたが、誰かに強いられて覚えさせられるお勉強はあんまりでしたゆえにっ。

 


「ふぅむッ!? もしや自由とお酒には密接な関係があったりッ!?」


「……ええ。実を言えば私にとって、祈りの合間にいただく葡萄酒が何よりの自由(・・)だということを、特別に教えておいてさしあげましょうか。

ただでさえこの街の中央のほうは、もっとずっと厳粛で頭の固い方々が集まっておりますからね。彼らと話していると本当に息が詰まるのですよ……」


 はぁ、と。アナスタシア様はもう一度大きめの溜め息をお吐きになられました。


 今度の対象は私ではないと思いますの。茶目っ気の溢れる微笑みをわざわざお見せしてくださったんですもの。


 なるほどっ。先代様がこんな寂れた教会にいらっしゃる理由は、自分の好きなときにお酒を楽しみたいから、なんですのねっ。


 確かに聖職者が毎日のように堂々とお酒を嗜まれていては、体裁がよろしくありませんものね。


 周りに隠れてチビチビとお酒を飲むくらいなら、逆に周りに誰もいないようなところで堂々と飲み干してさしあげるだけだ、とッ!


 先代様ったらトンデモなく逞しい方ですのっ。



「ちなみに昨晩は飲まれておりませんでしたの?」


「いいえ? しっかり飲んでおりましたよ? 幸か不幸かあまり顔には出ない体質のようで。ふふふ。先代の勇者様にもよくドン引きされたものです。懐かしいですね」


 ほんの少しだけ顔を赤らめていらっしゃいますけれども、珍しく自ら崩れた言葉遣いを選んだことから察するに、この人絶対、お酒に対しては少しも反省してない気がいたしますの……ッ!


 むしろその逆、お酒を浴びるように飲むタイプの人かもしれませんッ!


 それでたまーに誰かと飲み比べをしたりなんかして、ケロッとした顔で相手を酔い潰すタイプの酒豪に違いありませんのッ!


 私のアホ毛センサーがビビッと反応しているのです。ビヨンビヨンと左右に揺れておりますゆえ、まず間違いはないと思われます。



「些細はことはさておき。そろそろ聖堂に着きますよ。寝癖くらいは直しておいたほうがよろしいのではありませんか?」


「こ、これは私のチャームポイントですのっ」


 話を晒しなさいましたわね。いいですけれども。


 私のは結構厄介な癖っ毛なのです。

 治癒魔法でも治せませんでしてよっ。


 とはいえ今から別の修道女様にお会いするのですし、おっしゃるとおり、最低限は身なりに気を付けておいたほうがよいかもしれません。


 せめてもと頭のベールをクイッとしっかり定位置に直しておきます。


 ……よーし、おっけーですの。

 いつもの美女リリアちゃん爆誕ですのっ。

 

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