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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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今はずっと自由の身なのでしょう?

 



 ……翌朝、私が目を覚ましますと。


 そこには知らない天井が広がっておりましたの。


 ふふっ。嘘ですの。

 コレ、何回目でしょうかね。

 さすがに擦りすぎましたかしら。


 昨日の今日のことですから、さすがに覚えておりましてよ。


 ここは繁華街から外れた小道の、その更に裏路地の端の方にある寂れた教会の一室ですの。


 迷い込んだ先で保護していただいたのでございます。


 そこでまさか先代聖女様にお会いできるだなんて、思ってもおりませんでしたの。



「ふわぁぁ……ふぁ……ぁふ。うんぅー……っ」


 ひとまずベッドから身体を起こして、グググと伸びをいたします。


 決して良質な睡眠ではございませんでしたが、久しぶりに静かに眠ることができました。


 窓からは既に朝の日差しが差し込んでおりまして、眩しさについ目を細めてしまいます。


 昨晩は寝る直前に閉めた記憶がございますゆえ、おそらく、私よりも先に起きていらした先代様がカーテンを開けてくださったのかもしれません。


 お部屋が明るくなりますと、やはりこの教会の不憫(・・)さがイヤでも目に入ってしまいますわね。


 確かにお掃除が行き届いていて小綺麗ではあるのですが、建物の壁には地味ぃな亀裂が入っている箇所が複数あったり、そもそもの年季のせいで煤けていたりしますゆえ、少しもフレッシュさを感じることはできませんの。


 それこそ、先代様が使命の旅からご帰還される前からある教会なのではございませんでして……?



「目が覚めましたか?」


「あ、おはようございますの。ふわぁぁ」


 声の聞こえたほうに振り返ってみると、お部屋の入り口にアナスタシア様が立っていらっしゃいました。


 朝から元気そうで何よりですの。


 お歳を感じさせないスラリとした立ち姿は本当に気品に溢れていらっしゃいます。


 最近は足を悪くしたとおっしゃっておりましたが、少しもそうは見えません。



「コッホン。リリアーナさん」


「はいですの」


「欠伸をする際の手は?」


「……お口に宛てるのが、淑女のマナー?」


「そのとおり」


 さすが、先代様は厳しいですこと。


 修道女として抑えるべきところはキチンと抑えていらっしゃるご様子で。



「既に弟子が来ております。どうぞ聖堂のほうへ」


「分かりましたの」


「見たところ、貴女の旅仲間様もお探しのご様子ですからね」


「あらまぁっ」


 言われて気が付きました。今まさに手元の指輪が光っておりましたの。やはり明るい場所ですと分かりにくいですわね。


 きっとスピカさんやミントさんが心配してくださっているのでしょう。


 ここは生存報告も兼ねて先に返信をしておいたほうがよいかと思いましたの。



 朝起きて早々ですが、左手に魔力を集めます。


 そうしてふぬぬぬぬッ! と。


 ありったけの気合いを込めて指輪に純粋な魔力を送り込んでさしあげます……!



「……ふぅ……ふぅ。朝から疲れますこと」


 このくらいでよろしいでしょうか。

 きっとお二人に届いたかと思いますし。


 確か方角もザックリと分かるんですのよね?


 私がお屋敷に帰る最中にすれ違ってしまうかもしれませんが、その逆に街中でばったり合流できる可能性だってあるのです。


 とりあえずベッドから立ち上がりまして、昨日と同じように先代様の後ろを歩きます。


 ……ちなみに無言の間が地味に気まずいですの。



「あの。アナスタシア様。お一つお尋ねしてもよろしくて?」


「何でしょう?」


 立ち止まって、振り返ってくださいました。

 今しか聞くチャンスはないと思いますの。


 わざわざお弟子さんの前でお話しする話題でもありませんし。



「先代の聖女ともあらせられる貴女が、こんな寂れた教会をお一人で切り盛りしていらっしゃるのは何故でして?」


「別に理由などありませんよ。女神様に祈りを捧げられる場所であれば、どこであっても変わりませんからね。聖職者に貴賤の概念など必要ありませんし」


 ふぅむ。ツンと堂々とした態度でしたの。


 気にしていないとおっしゃるわりには、どこか疲れたような目をしていらっしゃるように見えました。


 さては、ここの門戸を叩く前に私が思っていた、あの政局戦争から離れるため……なのでしょうか。


 キチンと勤めを果たしたのですから、中央で裕福な余生だって過ごせたと思いますのに。


 でも、先代様はホントに聖職者の鑑みたいなお人ですの。


 私なんて彼女の足元にも及ばないどころか、欲深すぎて聖職者を名乗る資格さえも危ういくらいなんですのにぃ。



「先代様はそれでよかったんですの? 使命から解放されて、今はずっと自由の身なのでしょう?」


「それでは貴女は今、不自由なのですか?」


「……ふぅむ」



 そういえば、深く考えたことありませんでしたの。

 

 

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