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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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この私が女神様に会わせてさしあげますのッ!

 

 そのお姿からは確かな切なさと寂しさを感じ取れてしまいました。


 きっと、女神様への憧れによるモノですの。


 栄えある聖女として、キツくて険しい道のりのお勤めを立派に果たされたからこそ、お力を貸してくださった女神様への想いも人一倍に強くなっているのかもしれません。


 そしてまた女神様も、アナスタシア様が私と違って優秀で手のかからない(・・・・・・・)聖女様であったからこそ、彼女の前には姿を見せなかったのかもしれませんの……。


 私もまた、ぼんやりと窓の外を眺めさせていただきました。


 辺りには灯りのついている家がないせいか、星が綺麗に見えましたの。



「ふふ。先代様にもお可愛らしいところがあるんですのね。女神様への憧れ、とっても素敵な夢だと思いますの」


「……どうでしょうね。今ではもう私も老い先の短い老修道女でしかありませんから。

ただ、天国へと旅立つその日までに、今生での土産話の一つや二つ、用意しておきたいとは思ったりするんですよ。

懐かしい昔話だけでは、一足お先に待っていてくださっている勇者様も飽きてしまうでしょうから」


 変わらぬ遠い目をしながらも、くすりと自虐的な微笑みもこぼされていらっしゃいました。


 なるほど、先代様の想い人は女神様お一人だけではないんですのね。


 こういうお顔はよく存じ上げているつもりです。

 明言せずとも分かってしまいますの。


 完全に恋する乙女(・・・・・・)のソレなんですもの。


 女神様には信徒としての尊敬と感謝の念を。

 そして旅仲間の勇者様には、淡い恋心を。


 聖職者の身でありながら罪な女性ですこと。

 私の言えた話ではございませんけれども。



「はっはーん。先代聖女様ったら、さては先代勇者様にホの字だったんですの? 少しでもイイ顔をしたいから土産話が欲しい、と? 別に誰にも言いふらしませんゆえ、私にこっそりとエピソードをお教えくださいましぃーっ」


 お可愛らしいことお可愛らしいこと。

 ついついニヤニヤとしてしまいます。


 しかしながら、ですの。



「はいはい馬鹿をおっしゃいなさい。まったく聖職者の風上にも置けない方ですね。貴女もよくご存知のとおり、聖女は生涯をかけて操を守り抜くのが使命なのですから、この私が恋などに」


「それこそもーちろんよーく存じておりますのぉー。聖女に色恋沙汰はご法度なんですのよねぇ。つーまんないでーすのー不自由ですのー」


 聖女の存在がもっと自由であれば、枷や制限なども課せられるわけがありませんものね。


 私の下腹部に刻み込まれたこの忌々しい光の貞操帯だって、外していただけるはずなのです。


 でも……どうして聖女は清い身でなければいけないのでしょうか……?


 勇者様は別にその血を遺してもよいのです。

 むしろウハウハハーレムを推奨されている節さえございますの。


 何よやり良血を望まれておりますし、現にスピカさんが次の世代の勇者としてその才能を受け継いでいらっしゃいますものね。


 けれども聖女だって充分に世襲にメリットがあると思いますの。


 もしも私に娘や息子ができるとすれば、この豊富な魔力が遺伝するかもしれませんし、孫も同様にチャンスがあるかと思いますの。


 ただ、さすがに魔族の血までもを受け継いで、その子もまた月イチに先祖返りしてしまって、周りから差別的な目を向けられてしまうのは可哀想ですけれども……!



 ふぅむ。先祖返りの日……ですか……。



 あ、そうですの。

 私イイことを思い付きましたの。


 先祖返りの日。

 つまりは〝真夜の日〟であれば。


 女神様はこの地上に降臨してくださる可能性が大いに高くなりますよね。


 この私を自由にさせておくわけがありませんもの。


 そこを逆手(・・)にとってしまいませんこと?



「ふっふんっ。おっけですの。分かりましたの。今日のご恩をお返しするべく、この私が女神様に会わせてさしあげますのッ! さぁさぁ、どうぞ大船に乗ったつもりでドーンと喜んでくださいまし」


「……は、はぁ……?」


 私の屈託のない笑みに対して困惑なさっていらっしゃるようですが、今に理由も分かりましてよ。


 その呆れ顔がビックリ仰天顔に変わる日を、私は楽しみにしておりますわね。


 直近でも、もうあと数日夜と朝を繰り返せば真夜の日になるのでございます。


 あ、でも。今回は大森林を後にするまでに行った特訓のフィードバックがドッと押し寄せてきてしまいますゆえ、おそらくはかなりの高熱が出て動けなくなってしまうことでしょう。


 症状が軽そうならば決行に移りますが、次の次辺りに回しておいたほうが確実性も増すかと思われます。


 ミントさんが自由に動けない今、このセイクリットの街中で〝重さの異能〟の特訓は行えませんでしょうしっ。


 異能さえみだりに発動をしなければ、真夜の日の症状も少し気怠い程度まで抑えることができるのです。


 もちろん次のそのまた次の真夜の日を迎えるまで、この街に長期滞在するかどうかは不明ですけれども。


 ミントさんの調べ物とやらが数日単位で終わるとも思えませんの。


 地味に実現できそうな気がしておりますのっ!



「ふっふんっ。私も滞在中の目的ができて嬉しいですの。今日は先代様にお会いできて本当によかったですのっ」


 迷子になれたおかげかもしれませんわね。

 

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