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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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あら? 地味に詰んでおりませんこと……?

 

 アナスタシア・ブルーベル様……もとい先代聖女様がクスクスと微笑みなさいます。


 彼女は先ほどの初対面のときと同じように、私のつま先から頭のテッペンまでをサッと一瞥なさると、こほんとわざとらしく咳払いをしてから、改めて続きを話してくださいましたの。



「まぁリリアーナさんがご存知ないのも無理はありませんでしょうね。ここ数年は私も式典に出席していませんでしたから。少しばかり目と足のほうを悪くしてしまいましてね」


 話しながら、彼女は少しだけ視線を落とされました。どうやら自らの足元を見ていらっしゃるようです。


 つられて私も下のほうを見てみますと、彼女の修道服のスカートの隙間から、包帯の巻かれた御々足がチラリと見えてしまいましたの。


 この部屋にご案内いただいた際の歩き方としては別に普通だったのですが、その実は今も痛みに耐えていらっしゃるのかもしれません。


 正直、かなり忍びなく思えてしまいましたの。



「えっと、もしよろしければ私の治癒魔法で――」


「ご心配なく。どんな優れた治癒魔法も歳には勝てないのです」


 最後まで言わせていただけませんでした。

 やはり圧のある笑みをこちらに向けなさいます。



「それともリリアーナさんは〝元〟聖女の私が何も試していないとでも?」


「はぇっ。たたた確かにそれもそうですわよねっ。差し出がましい真似、失礼いたしましたのっ」


「善意をもって行動に移れるその身軽さは、素晴らしいことだと思いますよ。今はそのお心遣いだけありがたく頂戴しておきましょうか」


 もう一度ニコりと笑いなさいます。


 先ほどからずっとにこやかでいらっしゃるはずですのに、どうしてかそのお顔を見るたびに緊張してしまうのです。


 きっと彼女が発している圧のせいですの……!


 うぅっ。でも困りましたわね。

 やっぱりこの人、掴みどころがないのです。


 亀の甲より歳の功という言葉が世の中にはございますが、さすが聖女の先代様なだけあって、言動や態度にも相応の余裕さがあるのでございます。


 身体聖女に毛が生えた程度の若輩者の私など、今にも手のひらの上で簡単にコロコロと転がされてしまいそうな、そんな予感しかできないくらいなのです。


 むしろ人の戸惑う姿を見て楽しんでいらっしゃるような、そんな美魔女のオーラさえ感じ取れてしまうのは、私がいつも以上にビビってしまっているからなのでしょうか……!?



「ふふふ。何か?」


「い、いえっ。何でもありませんの」


 〝元〟聖女様を魔女扱いするとは、大変失礼極まりない表現かもしれませんけれどもっ!


 確実に一枚も二枚も上手な方なのですから、私も下手に取り繕わず、あえて自然体で接しておいたほうが逆に安全なのかもしれません。


 格上相手にしょっぱい見栄を張るほど、私はお子ちゃまではございませんもの……ッ!



「さて、リリアーナさん」


「は、はいっ! 何でございましょうっ!?」


 ロッキングチェアに揺られながらも、キリッとした目で私のことを見つめておられます。


 余計な問答などせず、早くも本題に入りたいような意図を感じられましたの。


 私も特にボケを交えることもなく、素直さ100%にお返事をさせていただきます。


 私に分かることであればなんなりとお答えますゆえにっ。


 先代様が静かにお尋ねなさいます。



「現役聖女のアナタがこの街を訪れているということは、その旅仲間である現役勇者様も、お近くまで来ていらっしゃるのですよね?」


「おっしゃる通りですの。日中に(はぐ)れて散り散りになっちゃいましたゆえに。明日にはまた合流できると安心なんですけれども……」


 心優しいスピカさんのことです。


 今頃は街中で目撃情報の聞き込み調査でもしてくださっているのではありませんでしょうか。


 もしくは早々に呆れて諦めて、既にシロンさんのお家に戻られましたでしょうか……。


 ついシュンとしてしまいます。



「ちなみにお泊まりの拠点はどちらに? 道に迷ったとおっしゃっていたかと思いますが」


「えっと、セレブ街の……」


「セレブ街?」


「あっ。い、いえっ」


 おっと。私としたことが。

 つい造語的なほうの呼び方をしてしまいました。


 すぐさまに訂正させていただきます。



「ただいまはタリアスター家の邸宅にお邪魔させていただいておりますの。タリアスター家をご存知ではありませんでして?」


「それはもちろん。勇者様のご血族のお家ですものね。よく存じておりますよ」


「ふぅむっ!?」


「この神聖都市は言わば私のホームタウンと言っても過言ではありません。名家のご自宅ともなれば尚更です。こうして郊外に隠居した今でも、多少の交流はありますし」


 ほほーう、これはイイことを聞きましたの。

 願ってもないチャンスが到来した予感です。


 私、わりと簡単に帰れるかもしれません。


 もう遅いですから本日中の合流は諦めるとしても、明日の朝になったら是非とも道案内をしていただきましょ――あ、やっぱりダメですの。


 アナスタシア様は足を悪くされていらっしゃるんでしたわよね。ここに来るまでにかなりの距離があったかと思いますし。


 とはいえ地図を描いていただいたとしても、超絶方向音痴の私には解読不能ですし、ふぅむ……。



 あら? 地味に詰んでおりませんこと……?


 

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