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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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善性を振り撒いてこその聖女人生ですの

 

 その後、私たちは店の奥側にいらした店主様に購入の意をお伝えしまして、無事に『通称:恋人たちのペアリング』を手に入れることができましたの。


 何やらスピカさんが交渉をなさったのか、掲示されていた額よりも少しだけ安く買うことができたようです。


 戻ってくるや否や、とっても嬉しそうなホクホク顔をしていらっしゃいましたもの。



「どんな手をお使いなさいまして?」


「えっへへ。別に大したことは言ってないよ。アレって売れ残りの商品なんでしょって。旅する美人二人に少しくらいサービスしてくれても、女神様は怒らないんじゃないのっ? ってな感じにさ」


「あらまぁ」


 己の見た目を武器に使うとは、スピカさんも不敵なレディになられたようで。


 私のようなナイスバディな麗し美女ではないのですが、単に方向性が異なるだけなのです。


 彼女の小柄でスレンダーでどこかあどけなくて、見ているこちらまで笑顔になれるような快活さは、元気っ子系美女さんの代表だと言えましょう。


 きっと世の殿方様の庇護欲を駆り立ててしまうにちがいありません。


 店主様もその魅力にやられてしまったのだと思われます。


 ふふ……スピカさん、恐ろしい子……っ!


 彼女は私の元に駆け寄ってくると、パッとその手を突き出しなさいましたの。



「はい。とりあえず片方渡しておくね。もう一個のほうは帰ったらミントさんに嵌めてもらおうか」


「了解ですのっ」


 ペアリングの片割れを受け取りまして、先ほどと同じ左手の人差し指に嵌めさせていただきましたの。


 良縁を期待しておりましてよ。

 是非とも素敵な殿方現れてくださいまし。


 それこそ……そうですの。


 スピカさんの従兄弟であるシロンさんのような、スーパー優男の代表格みたいな方をお待ちしているのでございます。



「スピカ姉さん。お目当てのモノは買えたかい?」


「うん、おかげさまでっ」


 ほら、こうしてタイミングを見計らってから話しかけにきてくださるでしょう?


 こういう紳士的なご配慮ができるからモテ男さんなのでしょうね。


 お返事とほぼ同じタイミングで、スピカさんが片割れの指輪を大事そうに鞄にしまいました。


 そのままニコニコ顔でお続けなさいます。



「あのさ、もう少し見てってもいいかな? こういう繁華街ってホントに久しぶりなんだ」


「ああ。気の済むまで見ていくといいよ。セイクリットは広いからね」


「うんっありがとっ」


 女性陣のウィンドウショッピングは男性よりもはるかに長引く傾向にありますの。


 私たちはわりとドライなタイプだとは思いますが、それでも久しぶりの街を楽しんでおきたい気持ちはあるのです。


 私、何よりこの街の甘味が食べたいんですのっ!

 すぐに帰るだなんてイヤですのっ!


 最初にシロンさんの邸宅に向かうときに、道中たくさんのお店をスルーいたしましたものっ!


 さすがに全てを食すことは叶いませんでしょうが、名物の一つや二つくらい楽しんでもバチは当たらないと思うのでございますぅー!



「あ、そうだシロンくん。ここでずっと待ってるのも大変だろうからさ。帰り道は覚えてるから心配しなくても大丈夫だよ。ここまでの道案内ありがとね」


「へぇ。姉さんって記憶力いいんだね」


「えっへんっ。伊達に勇者やってないからねっ」


 珍しくドヤるスピカさんが見れましたの。


 おっしゃっている理論ですと地図の読めない私は聖女失格のような気もいたしますが、スピカさんが身の回りのことを自然とこなしてくださっているからこそ、私も快適な旅が送れているのでございます。


 それに、最近はミントさんも姉御肌を発揮してくださいますし。


 手厚い保護を受けている気がいたしますの。


 一番身長の高い私が一番手のかかる妹キャラというのも()せませんが、残念ながら全て本当のことですゆえに。


 とにかく私も精一杯の感謝の意を込めてシロンさんにぺこりといたしますと、彼も私たちの意図を汲んでくださったのか、微笑みながら答えてくださいましたの。



「分かったよ。ただ、あんまり遅くなると母さんも心配するだろうから、なるべく早くに帰ってきてほしいってのはあるかな」


「おっけー。お母様には頭が上がらないなぁ。お世話になりっぱなしだよ。私たちも何かお返しできないかな」


 そうおっしゃるスピカさんが私の顔を見上げて、それから小さく首を傾げなさいます。


 ふぅむ。そうですわねぇ。


 この街で手に入るようなモノはプレゼントとしては弱いですし、かといって大森林で仕込んだ漢方薬をお渡ししたところで、使い道に困ってしまいますでしょうし。


 やはり聖女としてできることを、彼女にしてさしあげるのが一番手っ取り早いとは思いましたわね。



「つかぬことをお伺いいたしますけれども。シロンさんのお母様は何か持病を抱えていたりはしませんでして? 私の治癒魔法を駆使すれば、大抵のモノは改善してさしあげるかと思うのですけれども……」


「そうか、なるほど……そうだね。だったら、例えば酷い腰痛持ちだったりしたら、どうかな」


「大丈夫ですの。もちろん守備範囲ですもの。毎日少しずつ治癒魔法を施させていただければ、十日もあればほとんど完治レベルにまで回復してさしあげられましてよ」


 王都にいた頃も街のお爺様お婆様方にたくさん治癒魔法を施してきましたからね。


 痛みへの対処は慣れっこなのでございます。


 今ならサービスでツボ押しのマッサージも付けられちゃいましてよっ。



「そっか。イイことを聞いたよありがとう。是非母さんに伝えておくよ。でもまぁかなりの見栄っ張りだからなぁ」


「もちろん初回のお試しだけという手もできますゆえ、どうか気兼ねなくとお伝えくださいまし。聖女の奇跡を味わえるまたとないチャンスですの」


 善性を振り撒いてこその聖女人生ですの。


 私一人だけが幸せな気持ちになるのって、少しだけもったいない気がいたしますものね。


 私は最大多数の幸福を望むのでございます。

 

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