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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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私たちの探していた大本命ではございませんこと?

 

 幸いにも私は生まれながらに魔力を有しておりましたし、こうして治癒魔法の才にも恵まれましたけれども。


 言ってしまえばただそれだけのこと、でしかありませんの。


 魔法を扱える代わりに私はスピカさんとちがって剣を振ったり、素早く動けたりするわけではございません。


 おまけに地図は読めませんし方向音痴ですし運動音痴ですし、出来ないことほうが多いことも自覚しているのです。


 魔力の有無とは個性の一つですの。


 無いモノねだりをしたところで始まりませんし、そんなことにウジウジしているくらいなら、今有るモノを最大限に活かせるように努力したほうが、ずっと実りある人生を送れますわよね。


 そうした観点から言えば、火を放てる指輪に関しては、別に必需品ではないと思いますの。


 扱えないことにガッカリされる必要もございません。



「単に火を起こすだけなら手持ちの魔道具で事足りておりますし。火なんて使わずとも、スピカさんは華麗に戦場を駆け巡りなさいますでしょう?」


「ちぇーっ。植物系の魔物になら効くかなぁって思ったんだけどなぁ」


「燃やしてしまえば素材を回収できなくなっちゃいますの。ゆえに今回は見送らせてくださいま――ふぅむっ?」


「うん? どしたの?」


 諭し文句の途中でしたが、とても興味深いモノを見つけてしまったせいでお口が止まってしまいましたの。


 スピカさんが物色なさっていた指輪コーナーには、火だけでなく他の属性魔法の込められた指輪などもあったのですけれども。


 無造作に入れられた箱の奥底のほうに、一つだけ売れ残ったかのように、とある指輪が眠っていたのでございます。


 正確には一対の(・・・)指輪でしょうか。


 摘み上げてスピカさんにお見せいたします。



「ほらこれ。見てくださいまし。恋人同士が用いる魔法のペアリングですの」


 それは銀色に光るシンプルな一対の指輪でございました。


 一見すると太めの指輪に切り込みが入っているだけなのですが、パキリと真っ二つに分割できるようになっているみたいなのです。



「さてはリリアちゃーん。またそういう方向性のヤツ?」


「ち、ちがいますのっ。今の私はスペシャルお真面目モードですものっ」


 別に憧れとか所有欲求とか、そういう乙女的な観点からペアリングが欲しくなったのではありませんでしてよっ。


 と言いますのも、近くに興味深い説明書きが添えてあったのでございます。


 この魔力を込めたときの挙動という項目をよく読んでみてくださいましっ。


 ほらっ。ほらほらっですのっ!



「えーっとなになに? 遠く離れた恋人相手に会いたい(・・・・)の信号を送り合うことのできる、素敵なペアリングです……?」


「片方が魔力を込めると、もう片方のリングが光ってお知らせしてくださるそうですの。おまけに大雑把な方角まで示してくださるとか」


「へぇー、ロマンじゃん」


「ふふ。スピカさんもそう思われまして?」


 これが本物ならかなりのロマンですわよね。


 たとえ遠距離恋愛で寂しく過ごしていようとも、このペアリングを装着してさえいれば、光という形で繋がりを認識できるのでございます。


 手元のリングに思いという名の魔力を込めれば、相手方のリングがソレを受け取って、光という形でお知らせしてくださるという……!


 手元で輝くリングを眺めてはニヤニヤとできること請け合いでしてよ。



「って関心するところはそこじゃありませんの」


「あっはは大丈夫だよ。分かってるって」


 私も同じくですの。興味を抱いたのはこの遠距離のロマンに感動したからではございません。


 この魔力を込めれば光る、という機能についてなのです。



「ふっふんっ。この機能ってまさに私たちの探していた大本命ではございませんこと?」


「確かにそれはそうだと思ったよ。でも、コレって本物なのかなぁ。お値段的には安くもなく、かといって高いわけでもなく……」


 おっしゃる懸念もごもっともだと思いますの。


 安物買いの銭失いという言葉もあるくらいですし。無駄に浪費することだけは避けませんとね。


 それでも、以前スピカさんが愛用しているナイフを新調するか否か、悩んだ時期があったと思いますけれども、そのときにくらべたら全然マシで手が出せる金額内ではありますの。


 むしろせいぜいお高級なお土産程度の値段しかありませんし、何なら腰から下げている魔法の収納鞄のほうがよっぽどお高いシロモノなのですし。


 私が十回ほど甘味のおやつを我慢すれば手が出せるアイテム、と言い表させていただきましょうか。


 全然無理な範囲じゃないですの。


 それにほら、こんなにも無造作にポイッと売り出されているのです。


 まして商品に触ってはいけない等の貼り紙があるわけでもありません。



「実際に試してみたらいいではありませんかっ」


 せっかくですから図々しくいきましょっ。

 ペアリングの片方をスピカさんの指に嵌めてさしあげます。


 図らずもまるで婚姻の儀のワンシーンみたいになってしまいましたが、残念ながら逆のほうの、更には中指を選択させていただきましたの。


 一応、コレは私なりの配慮なんでしてよっ。

 

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