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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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魔力の有無は生まれながらのモノですゆえ、こればっかりは何も言えませんけれども

 

 この神聖都市セイクリットはヒト族至上主義の街だと、わりと何度も話題には上がったかと思いますけれども。


 スピカさんやシロンさんから伺った様子では、どうやら過度な蔑視は魔族だけに限った話ではないらしいんですの。


 ヒト族と比較的交流のあるエルフ族やドワーフ族もまた、この神聖都市の中では等しく差別的な扱いを受けてしまうレベルとのことなのでございます。


 かなりの高待遇でも来客扱いで、永住権はおろか、寝泊まりするお宿も簡単には見つかりませんし、酷い場合には各地の関所を通過するだけでも身分証やら紹介状やら沢山の書類が必要になってくるらしく……。



「ミントさん……独りで大丈夫なのでしょうか」


「早いとこ連絡手段を手に入れておきたいね」


 ぼそりと呟いた私の独り言を拾ってくださったのか、スピカさんが優しく耳打ちをして答えてくださいましたの。


 せめて無事を知らせる魔導具があれば、お互いに安心できると思いますし。


 早急に対処しておきたく思いますの。



 魔族には生きにくい街、神聖都市……。


 さすがの私も〝真夜の日〟はジッとしておいたほうがよさそうですわよね。


 下手に出歩いて警備兵に拘束されてもイヤですし。


 そう考えますと、私たちが最初に立ち寄ったアルバンヌの村のほうがよっぽど自由でのびのびとしておりましたの。


 今も村人さんとゴブリンさんたちは仲良くできておりますでしょうか。


 美味しいパンが作られていることを祈っております。


 この綺麗な街並みを見ているとついつい息が詰まってしまいそうになりますが、こうした温かい思い出が私の心を強く保たせてくださるのでございます。


 ……ええ、そうですの。


 凹んでいてもよろしくありませんわよね。



「こっほん。シロンさん。お一つお尋ね申し上げますの。この都市の住人さんはどちらで日用品を購入されておりまして? 私たちも今のうちから旅の準備を進めておきたいのです」


 ちょっとした雑貨屋でもあれば、きっと便利な品物も見つかると思うのです。


 くるりと縁を描くように振り返っては、殿方の誰もが見惚れる営業スマイルを彼に向けてさしあげましたの。


 我ながら、えへへとはにかむ姿はまさに女神様の生き写しと言えましょう。



「なるほど日用品ですか。それなら――」


 ……けれども、ふぅむ。


 少しくらいドギマギ慌ててくださってもよろしいかと思いますのに。


 好青年かつ紳士的すぎるというのも悩みものですわね。


 まーったくと言っていいほど微笑みを剥がせませんの。むしろ彼の手のひらの上で転がされている気さえしてしまいます。


 何と言いますか、こう……一人の魔性の女としては負けた気がするのですぅ。


 これがモテ男特有の余裕なのでしょうか。


 彼が優男様々なご様子で続けます。



「――それなら、この通りの先にちょっとした商店が立ち並んでいますね。オシャレなブランド品というよりは、旅の便利グッズとか、わりとそういうモノを取り扱っていたかと」


「ほほうっ」

 

「さっすがシロンくんっ。最高の道案内役! 欲しいところをピンポイントで撃ち抜ける! よっ! (いろ)従兄弟(いとこ)!」


「いや、まるで私みたいなヨイショをなさいますわね、スピカさん……」


 人のフリ見て我がフリ何とやら、という言葉が世の中にはございますが、今まさにそれを体感したような気がいたします。


 というより持ち上げ方が下手くそですの。

 アレでは逆に冷めてしまいましてよ。



 ともかく、シロンさんにご案内いただいた場所に向かってみると、軒先に幌を出した店々がずらーっと立ち並んでおりましたの。


 まるでお祭りの屋台通りのようですわね。

 王都の祝事でも度々見かけたことがございます。


 基本的にはこの街で暮らす方々向けのお店が多かったのですが、中には確かに、流離(さすら)う旅人向けの商品を並べているところもありましたの。


 なめし革でできた丈夫な給水袋に、衝撃を与えると強烈な閃光を放つ水晶石、はたまた朝に植えたら夜には収穫できるようになるという超即育の葉野菜の種まで……非常にバラエティに富んでおりますわね。


 見ているだけでもとっても楽しいですの。


 スピカさんも気になる小物があったのか、店先でちょこんとしゃがみ込んで、実際に手に取って見比べていらっしゃいましたの。


 見た感じでは指輪なのでしょうか。

 上部に赤い宝石が埋め込まれているようです。


 商品名を見てぱぁっと目を輝かせておりましたが、すぐ近くにあった説明書きを一瞥なさると、今度はしゅんと口を結んでは渋々といったご様子で元あった場所に商品をお戻しなさいましたの。



「どうかなさいまして?」


「火球を放てる魔法の指輪だって書いてあったんだけどさ。発動するには魔力を込めなきゃいけないんだって。それじゃあダメじゃん、私には扱えないじゃんって」


「あらまぁ。それは残念ですこと」


 なるほど、スピカさんは魔法的なところはからっきしでしたものね。


 小柄で健気でとても可愛らしい方なのですが、その実は全てを腕っぷしで解決する脳筋系勇者様なのでございます。



「魔力の有無は生まれながらのモノですゆえ、こればっかりは何も言えませんけれども。ちなみにシロンさんのほうは?」


「ははは。残念ながら僕もさっぱりなんだ。祖父も同じくだったらしいから、多分そういう家系なんだろうね」


「ふぅむ。俗にいう遺伝ってヤツでしょうか……?」


 とはいえ魔力がなくともお二人は異常なまでの身体能力をお持ちですゆえ、才能には満ち溢れていらっしゃると思いますの。


 魔力を持つヒト族もせいぜい四人に一人くらいかという通説ですし、まったく魔力がないからといって重要職に就けないわけでもない世の中なのです。


 せいぜいあったら便利という程度に収まっているのが現状なのでございます。

 

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