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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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さぁさぁ元気になってくださいましっ♡

 


 それからまた半刻ほどが経ちましたでしょうか。


 私の胃もだいぶ落ち着いてきたかという頃合いに、ガキンジャキンと騒がしかった剣闘の音も少しずつ聞こえてこなくなり、このお庭もようやく静寂さを取り戻したのでございます。


 ふと首を上げて辺りを確認いたしますと、傷だらけの木刀を手に握りしめたまま、スピカさんがスタタと私のほうに歩み寄ってきなさいましたの。



「えっと、満足なさいまして?」


「うんッ!!」


「ふふ。清々しいほどのお返事ですこと」


 きっといいストレス発散になったのでございましょう。咲き誇る花のような笑みを浮かべていらっしゃいます。


 ご機嫌なのは大変よろしいのですが、予想していたとおりお召し物の裾や袖口がビリビリに破れてしまっておりますし、お肌の至る所に、打撲痕や切り傷が残ってしまっておりましてよ。


 まったくもう。

 痛々しくて見ていられませんの。


 衣服ならほつれを縫えば元通りにできますが、貴女のキメ細やかなお肌はそうはいかないでしょう?


 跡が残ってしまったらどうするんですか。

 

 もうそろそろ私たちも齢二十歳を迎えるんですから、少しは淑女としての自覚を、ですわねぇ。


 ともかく、つい溜め息を吐きそうになってしまいましたが、今一度グッと呑み込んでスピカさんを近くにあったガーデンチェアに座らせます。



「ほら、少しばかりジッとしていてくださいまし」


 今、治癒魔法を掛けてさしあげますゆえに。



「えへへ。いつもありがと、リリアちゃん」


「これくらいは朝飯前でしてよ。ご朝食なら先ほどいただいたばかりですけれどもっ」


 傷だらけとはいえ、別に骨が折れていたりするほどの重症ではありませんゆえ、私にとってはこの程度お茶の子さいさいですの。


 事細かな詠唱も必要ないレベルですわね。

 完全完璧に治してさしあげましょうっ。


 というわけですので口の中で軽く祝詞を唱えてから、手のひらにササッと治癒の光を集めます。


 そのままの流れでスピカさんのお肌を優しく撫でてさしあげますと、ハイ、ご覧の通り。


 見る見るうちに傷口が塞がっていくのです!



「さっすがリリアちゃん。もう痛くも痒くも何ともないや」


 ついでに衣服の汚れも浄化いたしましたゆえ、すっかりキッカリ癒されたスピカさんの完成ですの。


 自分の手足や衣服を眺めては、にっこりとご満悦そうな笑みを見せてくださいます。


 ここが街中なら歓声が上がってましたわね。

 ふぅむ。観客がいなくて残念ですこと。



「もう少しくらいスピカさんもご自身のお身体を労ったほうがいいと思いますの。美しさを維持しようと心掛けることだって、乙女の大事な嗜みなんですからね」


「私、その辺はホント疎いからなぁ」


「せっかくの美人さんですのに、もったいないことこの上なく……」


 強いだけでなく見目も麗しい美少女勇者だなんて、トンデモなく素敵な肩書きではございませんか。



 とりあえずスピカさんにはその場でくるりと回っていただきまして、目視でも安全を確認させていただきました。


 我ながらイイ仕事をしましたの。



「シロンくんにもお願いできるかな。結構キツゥい一撃を何発か当てちゃった気がするからさ……」


 彼女の振り向いたその先には、汗に濡れる素敵なイケ殿方が立っていらっしゃいました。


 花畑のそばに立つ姿が絵になっておりますの。



「はは。姉さん。あんなのをイチイチ気にしてたら稽古なんて成り立ちませんよ」


「強がりはイイからね。ほら脱いだ脱いだっ」


「子供扱いされると困るんだけどなぁ……」


 照れ笑うまではいきませんでしたが、渋々といったご様子で衣服のボタンに手を掛けなさるシロンさんでしたけれども。



「古傷の跡は男の勲章だなんて聞いたことがありますけれども――うっひゃあ、コレはスッゴいですわねぇ……っ♡」



 思わず舐め回したくなるほどの肉体美を私にご披露してくださったのでございます。


 綺麗に割れた腹筋が超絶セクシーでしてぇ……っ!


 逞しく引き締まった殿方のお筋肉が、ああ、スッと手を伸ばせば届く距離にありますのぉ……!


 いやむしろ今から好きなだけ撫で回させていただけるのです。止めろと言われても治療と称して拒否させませんの。


 うぇひひっ、うひひひひ、でぇすのぉっ。


 首元の鎖骨から手足の指先までレロレロ〜っと舌を這わせてみたい気持ちを必死に抑えつつ、あくまで私は敬虔な聖女として、彼のお肌に治癒の光を照射してさしあげました。



「ごくり。それでは、治癒を始めますの」


 真剣な微笑みの裏側に。


 さぁさぁ元気になってくださいましっ♡

 私の愛情を受け取ってくださいましっ♡


 そんなヨコシマな感情を抱きながら。


 手に集めた緑色の光を一際強く輝かせます。


 ぬりぬり、ぺたぺた、さわさわさわ。

 しばらく堪能させていただきましたの。


 もちろん治癒の効果は出ておりますとも。



「いやぁ、実際に体験してみると凄いですね。こんなにも効力の高い治癒魔法を、しかも無詠唱で扱えるだなんて……」


「ふ、ふっふんっ。治癒魔法は十八番(オハコ)中の十八番(オハコ)なんですのっ。もはや寝ながらだって発動できちゃうくらいでしてよっ」


 実際、寝ぼけて発動したこともあるのです。


 あれは忘れもしないこの旅の最中の出来事でしたっけ……。


 大森林でのとある日を脳裏に思い出します。

 

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