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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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観光がてらに探してみましょうか

 



 翌朝。


 ミントさんのお気遣いもあって、本当に久しぶりに、気持ちのよい目覚めを得ることができましたの。


 肩も腰も膝にも変な痛みはございません。

 快適の極みでしたわね。さすがはお高級そうな客間のソファでした、と言わせていただきましょうか。


 しかも目を擦りながら半身を起こすと、どこからともなく鼻腔をくすぐるよい香りが漂ってきておりましたの。



「ふぁぁあ……ぁふ……。とぉっても香ばしい匂いですの。パン、なのでしょうかぁ……?」


「おはよ。多分、朝ご飯じゃないかな」


 すかさずスピカさんがお答えくださいます。


 もしかしなくとも私たち用のモノですの?

 至れり尽くせりで申し訳なくなりますわね。


 もちろん遠慮せず存分にご厚意に甘えさせていただきますけれどもっ。



「ほら、寝坊助が起きたなら行ってきなさいよ。アタシはどっかで適当に済ませてくるから」


「何をおっしゃいますの。ミントさんも一緒に――」


「昨日も言ったでしょ。奴隷がアンタらと同じ態度をとるわけにはいかないの」


 最後まで言わせてくれませんでしたの。


 ミントさんは私たちより先に起きていらしたのか、既に身支度を整えて、身分隠しのための深いフードを被っていらっしゃいました。


 そのままの流れでお続けなさいます。



「心配しなくてもご主人からのお遣いがあるとか何とか、それっぽい理由をでっち上げて屋敷から出たことにするわよ。腹が減ったら適当に探すわ。どのみちアタシは別行動する予定なんだし構わないでしょ?」


「ふぅむぅ……」


 ぶっきらぼうというよりは、私たちに必要以上に気を遣わせたくないのでございましょう。


 見栄っ張りと言えばそれまでなのですが、ミントさんにもミントさんなりの意地があるものとお察しいたしましたの。


 確かに彼女のおっしゃる通り、安定した拠点を見つけられたら、日中は別々に行動をするとは事前に話し合いをして決めておりました。


 彼女の言い分にもしかと筋が通っていらっしゃるのです。



「それなら、どうかお気を付けてくださいまし。具体的な連絡手段が無いのが地味に痛いんですから……」


 ただでさえ私たちは大森林の中でも基本的に一緒に行動しておりましたゆえ、はぐれるという経験に乏しいのでございます。


 まして魔族のお身体では、この神聖都市では身動きがとりづらいでしょうからね。


 街中で不意を突かれて巡回中の警備兵に捕らえられてしまう可能性だって無いわけではありませんの。


 本当ならば私たちも付き添ってさしあげたいですけれども、勇者と聖女がそばにい続けては目立ってしまいますでしょうし……。


 何かいい方法はないかと唸っておりましたところ。


 向かいのソファにいらしたスピカさんが、私よりも先にポンと平手を打って何かを思い付かれたようでしたの。



「あ、そうだ。呼び鈴とかどうかな」


「呼び鈴、ですの? あの玄関の?」


「そそ。そーいうヤツ」


 玄関の呼び鈴ともなりますと、このお屋敷に設置されていた魔導具のことですわよね。


 それがどうかなさいまして?



「アレってさ。用事があったら鳴らしてお知らせできる機能なわけじゃん? どこまで距離を離せるかは分からないけど、もしかしたら声を直接届けられるヤツだってあるかもしれないなって」


「なるほど。一理ありますの。観光がてらに探してみましょうか」


 現にこのお屋敷には設置されているのですから、似たような機能の魔導具はあるはずですの。


 最悪鳴らすだけの機能でも、二回鳴らしたら帰宅の合図、三回鳴らしたら緊急事態の合図などなど、色々と暗号的にやりとりできるかもしれませんわね。


 魔力の込め具合によって距離や出力を変えられそうな気もしておりますし、魔力タンクと呼ばれた私の実力を発揮してさしあげられるまたとないチャンスですの。



「ま、その辺はアンタらのお好きにどうぞ。それじゃアタシはお先に失礼するわね。今日は単なる偵察にしとくから、夕方には戻れると思うわ」


「了解ですの。どうかお気を付けて」


「はいはい。アンタらもね。あんまり目立ったことすんじゃないわよ。動きづらくなるから」


 ヒラヒラと手をお振りなさると、彼女は次の瞬間にはパッと見えなくなってしまいましたの。


 おそらく〝転移の異能〟を発動なさったのでございましょう。


 慣れてしまった私自身に驚いてしまいます。


 近距離転移を扱えるミントさんにはドアも玄関も関係ありませんものね。


 便利な異能でホントに羨ましいですの。

 疲労に悩まされることもないみたいですし。



「じゃ、私たちも行こっか。シロンくんが待ってるかもだし」


「ですわね。久しぶりに温かくて文明的なご飯が食べられそうで何よりですの〜っ」


 呼び鈴に類するモノは後で繁華街で探すとして。

 今は朝ご飯がメインイベントなのでございます。


 神聖都市の名物って何なのでしょう?


 ここまで白を基調とした街ですゆえ、ミルク粥とかクリームパスタとかはたまたケーキとか……!?


 今にもお腹の虫が早くしてくださいましと準備運動を始めておりますの。


 むふふっ。まぁまぁ待ってくださいましっ。


 こんな寝起きのボサボサ乱れ髪では叔母様とシロンさんに笑われてしまいますゆえにっ。


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