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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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鈍感なアンタでもさすがに分かったようね

 



――――――

――――


――




「よかったね。泊めてもらえることになって」


「ホントホントですのーっ。見た目だけでなく心も紳士的だとは、スピカさんが羨ましい限りでしてよぉまったくもうっ」


 はてさて。


 結論から先に申し上げますと、スピカさんのお泊まり交渉は無事に成功いたしました。


 少なくとも数日は泊めていただけるご許可をいただけたのでございますっ!


 ただいまはタリアスター邸の中の客間にて、歩き疲れた足を労っている最中ですの。


 オシャレな椅子に腰掛けて優雅なティータイムを楽しませていただいているのです。


 どうやら無償で寝泊まりしてよいとのことで!


 いよっ! シロンさんったら太っ腹ですこと!


 普段はあまり使っていないからと通された客間には、フカフカな横長ソファが一対と、四人がけのテーブルが用意されておりましたの。


 自分の家のように寛いでくださいねとだけ残して、ササッと手際よく立ち去ってくださったのでございます。


 むっふっふっ。

 ご配慮ありがとうございますの。


 そうおっしゃるなら私、とんでもなく存分にくつろいじゃいますわよ?


 本当に我が家のように振る舞っちゃいましてよ?


 むしろこれはもう、私に対してお嫁にも来ていいと言ってくださったと判断しても問題ないレベルですわよね!?


 私も本気にしちゃってもよろしくてッ!?



「寝床用のソファがお一つ足りませんわよね。私、床で眠るくらいなら、今晩はシロンさんのお部屋へ忍び込んでみようかしら……」


「どういう経緯でその発言に至ったかまでは分からないけれど。迷惑かけちゃうからやめてね。ただでさえ私たちは招かれざる客なんだから」


「わ、分かってますのっ」


 どのみち忍び込めたところで、女神様の貞操帯があっては何もできないのですし。


 行くだけ悶々として悔しくなるだけですの。

 ふぅむぅ……便利で不便なこの身体ぁ……。


 とにかくテンションの浮き沈みが激しい私と、そんな姿を見てハァと溜め息を吐くスピカさんなのでございました。


 とはいえそのお顔には安堵の色がだいぶ戻ってきておりますゆえ、上手くお宿が確保できて本当によかったと思うのです。



「…………いや、まさか、ね」


 しかしながら、唯一ミントさんだけは頭のフードを深く被ったまま、何やら浮かないご表情をなさっていらっしゃいました。


 テーブルに頬杖をついて憂いているようです。



「……トントン拍子すぎて気持ち悪いのよ」


「ふぅむ? ミントさんは嬉しくありませんの? こんなにも安全で快適そうなお部屋をご提供いただけたんでしてよ? 棚からボタケーキ、濡れ手で小麦の大勝利ではございませんか」


「分かってるわよ。でもなーんか引っかかるのよ。アイツ(シロン)、アタシの姿を見てもビビりもしなかったじゃない。神聖都市の住人にあるまじき反応だわ」


「さすがに考えすぎではございませんこと?」


 身分を偽って泊めていただくわけにもまいりませんから、シロンさんにはミントさんの種族をやんわりとお伝えさせていただきましたの。


 当然ながら被っているフードの中の、魔族特有の巻き角もご覧になられたのですが、やはりシロンさんは紳士でしたわね。


 顔色一つ変えずに、そして深く詮索もせずに、快く迎え入れてくださったのです。


 むしろこちらが気にしているのをいち早くご察知なさったのか、慈悲深そうな微笑みと共に、またフードを被り直すように促してくださったくらいなのですっ!


 スマートな配慮のできる殿方はモテますの。

 思わず惚れ直してしまいましたわね。


 今日初めて会ったばかりだと言いますのに、今日何度目かも分からないときめきに胸を焼かれて熱が出てしまいそうなのです!



「世の中、偏見だけが全てではありませんでしてよ? 聖人君主という言葉が存在するように、一人くらいは超絶完璧な殿方がいてくださってもよろしいではありませんか。あのシロンさんみたいに」


「そういうデキた殿方のお母様(・・・)は、アンタらのことを快く思っていないみたいだったけどね」


「ふぅむぅ。それは確かに……」


 無論、完全に上手くいっているわけでもありませんの。


 唯一の懸念材料といたしますと、叔母様は私たちの滞在に対してあまり肯定的ではないようなのでございます。


 超絶イケメンのシロンさんにご案内いただいて、お屋敷の中に招き入れていただいたのはよろしかったのですが、中で待ち構えていた叔母様はまったくもって歓迎ムードではありませんでしたの。


 明らかに私たちを睨んでおりましたもの。


 あの目には、かつて私が修道院時代に向けられていたモノと同じ、蔑みの色がかなり濃いめに込められていたと思えてしまったのでございます。



「幸か不幸か、私も人から奇異の目で見られる経験が多かったですゆえに。今回もまたしっかりと認知できちゃいましたの」


「フン。鈍感なアンタでもさすがに分かったようね」


「ええ。正直、それはもうグサグサと」


 アレは並々ならぬ感じの私怨の念でしたの。


 例えるならばそう、憎悪と禍根をお鍋でじっくり煮詰めた先に残った炭塊のような。


 にわかには消しにくい暗い感情をヒシヒシと感じ取れてしまったのでございます……!

 

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