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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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それが噂に聞く魔性の処女技ってヤツなの?

 


 ぺろり。ぱくり。そして、その都度うっとり。


 うぁっとと。結構注意しておりましたのに、お尻のほうからトローっと垂れてしまっていたことに今更ながら気が付いてしまいましたの。


 少々はしたないですが、じゅるりと啜るようにして食べてさしあげます。


 うっふふふぅ。むふ、むふふふふぅ。


 口に含むたびにおもわず頬が緩んでしまいます。


 最初に挟む量がちょっぴり多かったのでしょうか。


 啜る唇からも糸を引くように零してしまいましたが、こちらも手で受け止めては、ペロリと綺麗に舌で舐め取ってさしあげました。



「はぁぁん……んっまぁ……いくら食べても食べ足りませんのぉ……ここ最近、ずーっと味気ないとお野菜ばかりでしたからねぇ……っ。この脂感がたまりませんのぉ」


 いやはや、濃厚なトロトロが舌に絡み付いて全然飲み込めません……っ。


 さっきから口の中がずーっと熱くて、この世のどんなモノよりも濃ゆぅい気がして、そして常に鼻から抜けるイイ匂いが私の五感を更に刺激してしまってぇ……っ。



「……ごっくん。トロけるチーズこそが最強の旨味成分製造器だと思いますの。で、ホントに何のお話をしておりましたっけ?」


 ほんのり塩味のある指先をチロリと舐め取りながら、眼前のスピカさんに向けて小首を傾げつつ質問を投げかけてさしあげます。


 すみませんわね。話の腰を折ってしまって。

 パンのあまりの美味しさに我を忘れておりましたの。


 もしも叶うのならば今すぐにおかわりを所望してしまいたいくらいなのでございます。グッと我慢いたしますけれども。


 私に残る最後の自制心がソレを是といたしません。


 袋の中身は旅の貴重な食糧なのですし、一回の食事で食べられる量はお一つまでと村出立の際に話し合いで決めたばかりなのです。


 今回の分はこうしてキチンと平らげてしまいましたゆえに、後はもう文字通りに指を咥えてゆらゆらと揺らめく火を眺めていることしかできません。


 はぁぁー……恋しいですの……指しゃぶりしかできませんの……。



 そんな現在状況はさておき、スピカさんったら本当にどうなさいましたの?


 私のほうを見てはポカンと大きくお口を開けて、唖然としていらっしゃるようですけれども。


 まさか一口も差し上げなかったことに怒っていらっしゃいますの?


 だったら貴女も私と同じようにチーズを多めにして食べてしまえばよろしいではございませんか。


 私は絶対に止めませんし。

 欲求には素直になるべきと胸に誓っているのです。


 スピカさんが恐る恐るお口をお開きなさいます。



「……結構前から気になってたんだけどさ、リリアちゃんのその仕草って意図的なヤツ? それが噂に聞く魔性の処女技(オトメワザ)ってヤツなの?」


「ふっふっふっ。よくぞお聞きなさいましたわね。ご明察ですの。今のこそが私ご自慢の必殺悩殺テクのお一つと言えましょう。

どんなにお堅い殿方であっても私の舌の魅力にあてられてしまっては、即座にビクンビクンと果ててしまうこと間違いなしっ!

……実際に人前で試したことはありませんけれども」


「へ、へぇ……そうなんだ……。あんまりやらない方がいいかもね……」


 むむ。それってどっちの意味で仰ってますの?


 もしや見た目の刺激が強すぎるからですの?

 そ、それともまさかのドン引きのほうでして?


 まったく失礼しちゃいますの。

 技術に感心してくださっているようですから文句までは申しませんけれども。


 もしくは一見ではお子ちゃま的なスピカさんも、大人の扇情的テクニックには一応のご興味があるのでございましょうか。


 ふっふんっ。貴女さえよろしければテクを伝授してさしあげてもよろしくてよ。


 こうして舌をれーっと惜しみなく出して、全力で受け止める気概をお見せするのがコツですの。


 まずは視覚的な部分からお相手の想像心を刺激してみせるのです。


 とりあえずお手本とばかりに舌先をちろちろれろれろと左右に動かしてさしあげます。


 ビンゴですの。見る見るうちにスピカさんのお顔が真っ赤になっていきましたの。


 ……ふふっ。まだまだおピュアさんですわね。


 でも大人の世界はこのずっと先にありましてよ?

 早いところ私の域にまで到達してくださいまし。


 ドヤドヤと大人の女の余裕を見せ付けてさしあげます。



 で、本当の本当にお話の本題は何だったでしょうか。


 うーんと、あーっと、えーっと確か……。


 あ、そうですの今思い出しましたの。


 スピカさんのお生まれが由緒正しき勇者輩出の名家であることに対して、私はどこの馬の骨とも分からぬポッと出の運だけ聖女……みたいな感じでしたわよね。


 気分がノっておりますので最後までお話しいたしましょう。



「私、どうやら常人よりもちょっとだけ(・・・・・・)魔力の総量が多かったらしく。それで血筋も御家柄も関係なく、本当にただそれだけの理由で今代の聖女に抜擢されてしまったみたいなんですの」


「人よりも、魔力量が?」


「ええ。自覚こそございませんけれども、私にとっては当たり前のことですし。そもそも人と比べようにもどうしたらよいか分かりませんし。(ひけ)らかすようなコトでもございませんの」


 もちろん選出の条件はそれだけではなく、女神様の存在を心から信じているかどうかとか、容姿が似ているかどうかだとか。


 更には聖魔法に適性があるか否かや性格思想なども判断材料に含まれていたらしいのですが、いずれにせよ全て一応はセーフでしたの。


 何か特段の努力をしたわけでもなく、最初から何となく出来ていたことが再評価されてしまっただけ……。


 特に〝存在を信じているかどうか〟なんてのはマジめのガチめに笑止千万な内容でしたわね。


 実際にソコにいらっしゃるものをどうして疑うことなど出来ましょうか。


 信じる信じない以前の問題だったのですし。



 そうは言っても、なんですけれども。



 私はまだ聖女という肩書きを本当に自分のモノとして受け入れてもよろしいのか、決めかねているのも事実ですの。


 きっとこの世の中には聖女という存在に憧れを抱いている人も少なくないと思われます。


 常に人々を正の方向に導き、安心と癒しを与える無垢なる存在なんて……まさに善の象徴たるお人と言えましょう。


 私なんかが継承してしまってよかったモノなのかどうか、実は今もちょっとだけ気が引けているのでございます。


 ……私、ただの孤児だったはずですのに。


 まして生みの親の顔も存在も知らなければ、育ての親とも子供の頃に死別してしまっただけの、とにかく寂しい独り身女なだけですのに。


 これは女神様からのご褒美か、それとも私に課せられた罰の首輪か、はたまた罪の足枷か……。



「それでも、任されてしまった以上は全うしなければなりませんわよね。けれども大丈夫ですの。これでも人並みの責任感は持ち合わせているつもりですの」


「う、うん……? よく分かってないけど、リリアちゃんがいいんなら、いいんじゃないかな?」


 ええ。せいぜいご安心なさいまし。

 そのうち聖女っぽい姿も見せてさしあげますゆえに。


 でも、せめて二人っきりのときくらいは自由奔放に振る舞わせていただけますと助かりますの。


 ずっと窮屈なままでは疲れてしまいますからね。


 余計な我慢は心の身体の毒になり得るのでございます。


 

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