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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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……さっきから、頭が高いんでしてよ……!


 畳みかけるなら今ですの。


 不戦勝は何よりも価値のある勝ちだと個人的に思っております。


 だってほら、こちらの身を肉を切らせてお相手の骨を断つくらいなら、肉にも骨にも一切触れずに、できる限り無傷のままでいられたほうがイイはずなのです!


 アコナさんにビシィッと言い放ってさしあげますの。



「実際問題、どうなさるおつもりでして? 今ココでこれ以上深追いはしないと誓ってくださるのなら、私たちも剣を納めてさしあげてもよろしいかと思いますけれども」


 体裁としては譲歩(・・)を選んでおきます。


 実際にはお互いに何の干渉もしなくなるだけで、私たちが傷付く可能性を少しでも減らしたいだけなのですが、アコナさんとしてもデメリットだけではないの思われますの。


 いくら彼女が強くて、麻痺毒も厄介なモノだとしても、私たち三人を一度にお相手できるほどの余裕はないはずです。


 彼女の動揺は遠目から見ても分かりました。


 表面上では余裕そうなお顔ぶりでも、その向こう側には確かな焦りが感じ取れるのでございます。


 押しどきを逃すわけにはまいりません!



「そもそも、アナタのテリトリーは大森林のはずです。こうして私たちの脱出が叶った今、これ以上私たちを追ったところでベストは尽くせないのでございましょう? この遅延行為に意味なんてありまして?」


「クッ……!」


「金輪際、私たちの旅の邪魔をしないでくださいまし。そして余計な茶々も入れてこないでくださいまし。背中を討つ趣味はありませんゆえ、どうか円満なお引き取りを願いますの」


 あえて深々と頭を下げさせていただきます。

 私にできる誠心誠意の意思伝達ですの。


 私の礼を合図に、何の目配せを交わさずともスピカさんとミントさんがバチッとファイティングポーズをとってくださいました。


 スピード特化の小剣使いと、瞬間移動をしてくる剛拳派と、どんなに傷付けても片っ端から傷を癒して戦場に復帰させてくるようなお相手と、まだ独りで戦うおつもりでして?


 ……勝ち筋は限りなく薄いと思いますの。


 擬態生物さんを解放されてしまったタイミングで、アナタの優勢さはなくなってしまったのです。



 最後のダメ押しが必要かもしれませんわね。



 頭を垂らしたまま、まずは横のお二人に向けて小声でお伝えいたします。



「……今から最大出力で発動(・・)をいたしますの。ですのでどうか、頑張って耐えていただけたらと」


「……何をおっ始めたいのかは知らないけど。イイわ。アンタの好きにしなさい。善処するわ」


「ありがとうございますの」


 横目にスピカさんの顔色のほうも確認いたしましたが、大丈夫そうでしたの。


 最初の一瞬だけ、ホントにやるの!? というお顔をなさっていらしたようですが、私の決意を信じてくださったのが、その後すぐに静かに頷いてくださいましたの。


 お二人の許可さえいただければ、後はもう大丈夫なのです。


 心置きなく全力でヤるだけですの。


 ゆっくりと頭を上げて、それからもう一度だけ、アコナさんを真剣に見つめます。



「仕方ありませんわね。できれば、解放したくはなかったのですけれども」


「なに、を……?」


「これは私からの最後の警告です。その身をもって覚えてくださいまし。

この世には――神にさえ作用する絶対的なチカラがあるのだと。そして、そのチカラに対して、アナタは歯向かおうとしているのだと」


 さすがに動揺し始めるアコナさんを気にせずに、私はこの頭を抑え込む修道服のフードをめくり取り、ぴょるんと伸びたプラチナブロンドのアホ毛を解放いたします。


 私のキュートなアホ毛はただのクセっ毛ですゆえ、フードを脱ぐ行為は別に大きな意味があるわけではないのですが、何も知らない相手には、何かあるのではないかと錯覚させるミスリード材料になるかと思いましたゆえ。


 それから胸に手のひらをかざして、静かに目を閉じて。



「……さっきから、頭が高いんでしてよ……!」


 ふーっと大きく息を吐いたのちに心臓を握り込むかのようにありったけの力で握り拳を形成いたしますッ!


 目をカッと見開いて、声高々に言い放ちますのッ!



「平伏しなさいましッ!!!」



 私の言葉に呼応するかのように、周囲の空気がギュゥゥンと重くなっていきます。


 ヒトの身状態の私にできる最大出力ですの。


 あまり長く発動し続けると気を失ってしまいますゆえ、ギリギリを見極める必要がございます。


 でも、大丈夫ですの。


 ミントさんと特訓したおかげで、私の限界値を把握できておりますもの!


 発動者の私自身、指先の一本も動かせませんが、それはアコナさんだっての同じはず。


 むしろ彼女のほうが負荷は大きく、あまりの圧に片膝をついて、やがては地面に倒れ込んでしまいます。


 ご自慢の白い編み込み髪もぺたりと地に這っておりますの。


 ……振り返ることはできませんが、スピカさんもミントさんも同じ状況なはずです。



 この場に立っているのは、私ただ一人だけ。

 優越感に浸れるほど余裕があるわけでもありません。


 ふっと肩の力を抜いて異能を解除いたします。



「これでまだ、勝てるとお思いでして?」



 息も絶え絶えなところを必死に耐えて、その逆に勝ち誇った顔を見せ付けて、精一杯の虚勢を張らせていただきました。


 地に伏せたアコナさんが悔しそうに私を見上げております。


 明確に格付けしてさしあげましたの。


 ……仮初めの、嘘っぱちの。

 あくまででっちあげ(・・・・・)の格付けですけれども。

 

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