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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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修道院時代に読み漁った図鑑知識が今ここで火を吹きましてよっ

 

 ど、どどどうして白修道服の方から〝助けて〟などという心の声が聞こえてくるのでございましょう!?


 むしろ助けてほしいのはこちらのほうなんですのにっ!


 ……とまではさすがに言いませんけれども。

 何やら様子がおかしいのです。


 私の認識とは異なる事情が起きている気がいたしますの。


 とりあえず私の脳内には幼い女の子の声で聞こえてまいりましたから白修道服さんのことは仮で彼女と呼称させていただきますわね。


 さてさて、整理させてくださいまし。


 私の頭の中に声が聞こえてきたということは、彼女はヒト族ではない別の何かだということになるはずですの。


 私の特技はあくまで〝生物や魔物と心を通じて会話ができる能力〟なのでございます。


 間違えて覚えてほしくはないのですが、決して読心術に長けているわけではありませんの。


 私のこの能力は、あくまで彼らの言葉を第六感的な感覚で変換できているだけのモノなのです。


 最初から言葉の通じるヒト族やエルフ族、はたまたミントさんのような魔族の方とは、普通に言葉を交わすしかコミュニケーションを図れません。


 ふぅむ。便利なのか、中途半端なのか。

 自分でも判断に欠ける特技なんですのよね。


 だ、だって仕方がありませんでしょう!?


 孤児時代はヒト族の言葉を用いて会話をしていたわけではないんですもの!


 もっと野生児的に、それこそ全身で肌感覚に頼りながら生きていたんですもの!!!



 こっほん。脇道に逸れてしまいました。

 話を戻させていただきましょうか。


 白修道服の彼女が〝助けて〟と言っているということは、彼女が自ら戦いたがっているわけではないとも言えるはずですの。


 そうなりますと、何かの理由で戦わざるを得ないのか、はたまた戦うことを何者に〝強制〟されているのか。


 どちらかの可能性が高くなってくるのです。



 ふぅむ。情報が足りませんの……!

 今よりも更に心の耳を澄ませてみます……!


 もっと小さな声を聞き分けられるように、周囲の感覚を全てシャットアウトして、彼女の意思だけに神経を集中させますの……!



 さぁ、お願いですの。


 アナタのお声をもっと聞かせてくださいまし……!


 ギュッと目を瞑りながら、彼女に訴えかけてさしあげます……!



 雑音にまみれた声が少しずつクリアになってまいります。



『…………お札……剥がして……助けて……』



 ふぅむ? お(ふだ)、ですって……?


 つい最近、ソレを見かけたかと思いますの。

 むしろ忘れられるわけがありませんわよね。


 あの眠りキノコの洞窟で倒した亀モグラのお腹に、女神教の護符が貼ってありましたの。


 とはいえあちらはとにかく簡素な造りで、せいぜいちょっとした聖なるチカラをもたらす程度のモノでしたけれども。


 質につきましては本当にピンからキリなのです。


 緻密に書き刻まれた護符には様々な祈りを付与することができるとも聞き伺っておりますの。


 それこそ厳重な結界を展開したり、高度の治癒魔法を付与したり、中には生物や魔物を使い魔として使役させる術を封じ込めたモノも過去には存在したらしいのです。


 しかしながら、より高い効果を望めば望むほど、普通よりもずっと複雑な魔法を長時間にわたって刻み込まねばならないとも聞いたことがございます。


 費用対効果的な観点から、いつしか強力な護符を作ることはほとんどなくなったとも聞いておりましてよ。


 ある意味では忘れ去られた(いにしえ)の技術とも呼べるかもしれません……!


 とにかく、お札とやらを剥がしてさしあげれば、彼女の苦悶の声も少しは和らげてさしあげられるかなと思った次第でございますの。



「あの、私にできることなら協力してあげたく思いますけれども。差し支えなければ、まずはアナタのご正体を教えていただいても?」


 私自慢の真実化魔法を受けているというのに、それでもヒト族の修道員の姿を保っていられることも疑問の一つなのでございますっ。


 心の声が聞こえたということは、おそらく彼女は魔物の類いかと思われますの。


 ともなれば、私の〝重さの異能〟やミントさんの〝転移の異能〟のような、種族固有の能力による変化を行っていらっしゃるのでしょう。


 下手な魔法による偽装であればすぐに解除してしまうほどの強力な魔法なのです。


 解明しなければ先に進めそうにありません。


 ど、どうしても私の知識欲を刺激してくるのでございますぅ!



「も、もちろんアナタがナイショにしたいのであれば、私は構いませんでしてよっ。で、でもっ。それでも聞きたいのは、ほ、ほらっ。お互いの自己紹介も兼ねて、ということでっ」


 取り繕うがあまり、カッコ悪くワタワタと慌ててしまいましたがきっと大丈夫でしょう。


 私と彼女の身体の距離はずっと離れておりますが、心と心はだいぶ近くにまで寄り添え始めている気がいたしますゆえに。


 私の素直な言葉が届いて、彼女も少しだけ警戒心を解いてくださったのでしょうか。


 今度は聞き返さずともはっきりと聞き取ることができましたの。



『…………擬態生物(ミミクリー)……』


「なるほど擬態生物! ふぅむそれで……!」


 彼女の回答に、私としてもかなり合点がいきましたの。


 擬態生物(ミミクリー)はあらゆる生物の姿になれる魔物として名が知られております。


 修道院時代に読み漁った図鑑知識が今ここで火を吹きましてよっ。


 とくとご披露させていただきましょうかっ。

 

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