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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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アナタを真正面からブッ倒して


 今までの私たちでしたら平和的な解決として再三に話し合いを試みたり、あえて嘘の敗走を演出することで不必要な戦闘を避けていたかもしれません。


 今回ばかりはそれでは何も解決しませんの。


 思想の相容れない者同士として、キチンと雌雄を決しておく必要があるのです……!



「ふぅむ。お逃げになるならどうぞご勝手に。けれども私たちには二度と手を出さないことを、今ここで誓ってからにしてくださいまし」


 アコナさんに森の中での生き方を教わったこと、私は忘れませんの。


 別にご恩を仇で返したいわけではありません。

 それはそれ、これはこれですものね。


 私の聖女の立場として、アコナさんの蛮行を許すわけにはいかないのです。


 私もスピカさんも大森林の中で揉まれてとっても強くなりました。


 アナタがいなくなってからも、新たにミントさんという師匠を得て、私は私の中に眠る魔族のチカラをある程度までは使いこなせるようになりましたの。


 もうお荷物ではありません。


 私たちに安易に手を出したりしたら、痛いメに合ってしまいますわよ、と。


 今日ここでその身に刻み込んでからお帰りくださいましッ!



「ご自分で立ち去らないというのなら、私たちが無理矢理にでも退けてさしあげますの。アナタを真正面からブッ倒して、胸を張って自分の使命を果たさせていただく所存です」


「へぇ? しばらく見ないうちに言うようになりましたね〜? 治癒にしか能のない、あのお荷物聖女のリリアーナさんが」


「ええ。私には頼れるお仲間さんがいてくださいますゆえに。こんな中途半端なところで旅を終えるつもりはありませんの」


 勝てるかどうかではないのです。

 絶対に勝たなければいけないのです。


 会話を続けながらも必死に策を巡らせます。

 一矢報いる程度のモノでも構いません。


 ついアコナさんが警戒して逃げ去ってくださるなら儲け物ですし、本当に効果があるならソレがベストな作戦ですの。


 そしてまた、厄介なのがアコナさんの後ろに控えている白修道服の謎の人ですわね。


 フードのせいでお顔が見えませんし、態度のほうにも表れる気配がありません。


 まるで人形か置き物かというように、ヒトの気配そのものを感じさせないのでございます……!


 正直、不気味の一言ですの。



 けれども、不安がっていてはそれこそお相手の思うツボになってしまいますわよね。


 ビビりながらも私はひたすらに胸に手を当てて、いつでも女神様にお祈りを届けられるように準備しておきます。


 そしてまた、私に合わせるかのように、スピカさんも静かに小剣を構え直して継戦に控え始めてくださいましたの。


 ミントさんのほうは言わずもがな、ですわね。


 いつでも空に飛び上がって蹴りを放てるように、準備運動がてらにジャンプをし始めなさいましたの。


 それぞれ三者三様の戦い方にはなりますが、いつでも万全の臨戦体制ってことですのッ!


 ふっふん。さすがのアコナさんも黙ってみていられるだけの余裕はございませんでしょう?



「……チッ。いくらヨワヨワの聖女サマとはいえ、こちらがやや不利な状況なのは間違いなさそうですね〜。……術がバレてしまっては、この子も満足には動けないでしょうし」


 たはーっと、アコナさんはまるで出来損ないの子供に対して心底ガッカリする毒親のように、それはそれは大きな溜め息をお吐きになりなさいました。


 途中で視線をチラリと後ろ側に向けたようなのですが、その目は別に誰かを心配するようなモノではなく、あくまで道具の一つを失った程度の、ひどく心のこもっていない視線に感じられてしまいましたの。


 ……もしかしなくとも、今のがアコナさんの本心であり、本性なのでしょうか。


 優しいお声と柔らかな口調の向こう側に秘めた、どこまでも冷徹な素顔……っ……!?



「……仕方ない。ナマイキちゃんたちを懲らしめるためにも、そろそろ本気を出してさしあげましょうかねぇ〜?」


 並々ならないお声が耳に届いて、思わず全身の毛がブワッと逆立ってしまいましたの。


 よく見てみればその糸目がほんの少しだけ開かれておりました。


 その向こう側には、吸い込まれてしまいそうな、どこまでもどすあ黒い瞳が……ッ……!


 彼女のギアが一段上がったといいますか、第二ラウンドの幕が今開けられようとしているといいますか。


 ……さすがに挑発しすぎたかもしれません。



「ほら、アンタってばどうせまた真っ先に狙われるんだから、先に下がっときなさいよ」


「リリアちゃんはあっちのよく分からない人を監視してて。アコナさんのほうは私たちが何とかしてみせるから」


「うぅっ。りょ、了解ですのー……」


 そ、そうですわよね。


 足手まといの私がわざわざ出しゃばるタイミングでもないですもんね。


 実際問題、アコナさんから本気の殺意を向けられてしまって、思わず膝がプルプルと笑い始めていたところでしたの。


 お二人にお声がけいただけなければ一歩も動けなくなっていたかもしれません。


 お言葉に甘えて二、三歩ほど下がらせていただきます。



 そして、改めて私が今しなければいけないことを再確認いたしますの。


 お二人を治癒魔法でサポートし続けること、そして、つい先ほどまでアコナさんのフリをしていた謎の白修道服の人を観察することです。


 どこかにヒントが隠されているはずですの。

 

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