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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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……でも、いいなぁ。魔法使えるって

 

 てくてくポクポクと砂利道を歩いていくうちに、ようやく元の大通りへと戻ってこられました。


 行きのときに読んだ村の方角を示す看板が、今日も変わらずナナメに傾いて刺さっておりますの。


 ふっふん。これも何かの縁ですの。聖女たるもの、機嫌の良し悪しに関わらず善行を積んでおくべきですわよね。


 せっかくですからキチンとまっすぐに刺し直させていただきました。


 相変わらず看板に書かれた文字はボヤけたままですが、これだけでも少しはマトモに見えるはずです。


 私たちが長旅から帰ってきたときには、もっとずっと観光名所的な農村として発展していることを期待しておりましてよ。


 ゴブリンさん方と協力して順調に畑を広げていけば、いずれはこの大通りからも黄金色の麦畑が見えるようになると思いますの。


 そうすれば行商人の方も気に掛けるようになって馬車の往来も増えて、この地域の交通の便自体が整えられていって、お国に住むすべての皆さまがWin-Winになっていくのです。


 今はまだほんの一夜の夢物語かもしれませんが、夢を見るだけなら、タダですからね。


 未来の景色を瞼の裏に思い浮かべつつ、ふっと微笑みをこぼさせていただきました。


 

「さて、と。ここいらでお昼休憩にしよっか。リリアちゃんお腹すいたでしょ? 貰ったパン、試しにちょっと炙ってみようよ。チーズとか乗っけてさ」


 大通りに合流して、ちょっとだけ進んだ道の外れ、少しばかり開けた草原の上にスピカさんがストンと腰を下ろしなさいました。


 芝生に寝っ転がってみたらとっても気持ちよさそうですの。


 着ているコレが修道服でなければ即座に試していたことでしょう。


 そんなことより、えっと、何ですって?



「むむっ。炙りチーズ乗せパンですと!? スピカさんったら、なんと罪深きご提案を……っ」


「ってことはリリアちゃんはやれないの?」


「やるに決まってますのッ! 一応の体裁的に修道女っぽい発言を挟んでみただけですのーッ!」


 私も急いで腰を下ろさせていただいてパン炙りの準備をいたします。


 火の魔法が扱えたら早かったのですが、おあいにく、私たちのどちらにも適正はありません。


 というより魔法を扱えるのは私だけですし、それでも基本的には聖なる光を主軸としておりまして、決して数多の属性を満遍なく扱えるような汎用タイプではございませんの。

 

 意外に脳筋パーティなんですのよね。


 適材適所と言えば聞こえがよろしいのでしょうが、私たち個々人には出来ないことのほうがよっぽど多いのでございます。


 今のところ、不器用なことに困っておりませんので、気にしておりませんけれども。


 ふっと自嘲のような微笑みと共に楕円状のパンに切り込みを入れさせていただきまして、中に棒状に裂いたチーズを嵌め込みます。


 それから比較的小綺麗そうな長枝棒に突き刺しておきますの。


 

「そいじゃリリアちゃん、よろしく」


「ほいですの」


 鞄から取り出された棒状の道具(・・・・・)を受け取ります。


 手のひらサイズながら全体的に流線形の紋様が刻み込まれておりまして、先細り型のちょっとした筒状になっておりますの。


 こちら、村の雑貨屋さんで二人して一目惚れした〝魔力を込めると火が出る魔導具〟なのでございます。


 コレ一つあれば乾いた着火剤は一切不要!


 魔力の込め方次第で火力も変えられるというスペシャル画期的な便利グッズなのでございます。


 ……いや、他の必需品と比べると少々お高めではありましたが、今後の手間暇のことを考えれば購入するしかございませんでしたの。


 私たちは火の魔法は扱えませんが、魔力を込めることくらいならお茶の子サイサイですものね。


 今後火の憂いをする必要が無くなると思えば間違いなく良い買い物なのです。



 というわけで手に握る魔道具に向けて祈りを込め始めさせていただきます。


 数秒も満たないうちに、私の手のひらごと淡くゆっくりと光り始めましたの。


 ゴブリンさんの巣穴の中で光球を生成したときみたいですわね。


 手に持つ部分からだんだんと熱を感じ始めましたの。


 しばらくそのまま待っておりますと。



「いやはや確かにやっぱり画期的ですわよね。どのような仕組みなのでしょう。ホントに魔導具サマサマですのっ」


 ボフッという鈍い音と共に、筒の先から炎が噴き出てきたのでございますっ。


 急いで適当に拾い集めていた小枝に火を移しまして、拳大の石で取り囲んだ突貫の焚き火場を作り上げます。


 串刺しのパンを少し離れた地面に突き刺してはじっくりと熱し始めましたの。


 この後ほんのりと焦げ目がついたら食べ頃ですわね。


 早くも辺り漂いつつある香ばしい匂いにうっとりとしてしまいます。



「……でも、いいなぁ。魔法使えるって」


 ゆらゆらと揺らめく火を眺めながら、膝を抱えたスピカさんがボソリとお呟きなさいます。



「私は逆にアナタの無尽蔵な体力のほうがよっぽど羨ましく思いますの。どんな動いても疲れなくて、いつでも身軽で機敏で華やかさがあって」


「えぇー。こんなの修行と鍛練を繰り返したら誰でも出来るようになるよ?」


「ホントにそうなら世の中は稀代の勇者で溢れ返っておりましてよ」


 由緒正しきパールスター家のご令嬢様が何を仰いましょうか。


 アナタの実のお祖父様こそが先代の勇者様でいらっしゃいますのに。


 数年前に天に召されたと聞いておりますけれども……?

 

 

そろそろキャラと世界観にフォーカスしていきますのっ。

 

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