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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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千里の道も一歩から

 

 それから私たちは、女神様の見守る中で作戦会議を続けましたの。


 大森林を出てからの動き方や、神聖都市セイクリットへの道のり、そして街中への突入ルートに至るまで、それはもう念には念をモットーに叩き込まれましたの。


 さすがに私の頭でも覚えましたわよ。


 万が一に覚えていなかったとしても、私はただいま高熱に浮かされておりますゆえ、適当な理由付けができてしまうんですけれども〜。


 困ったら頼れるお二人に聞けばよろしいんですしっ。


 きっと私は幸せモノですの。


 このほわほわとした気持ちはきっと、高熱から来るものだけではないと思います。


 安心感とも信頼感とも異なるこちらは、いったい何の感情なのでしょうかね。



「ふぅむぅー。けれどももうそろそろ限界ですのー……座っているのもやっとな体力でしたゆえー……ちょーっとだけ横になってもよろしくてぇ……?」


「あっと、大丈夫? お水飲む?」


「あぇー……いただきますのー……」


 スピカさんから水筒を受け取りまして、くぴくぴと喉を潤してから、改めてくたりと横にならせていただきましたの。


 阿吽の呼吸でスピカさんがそのお膝をお貸しくださいます。


 普段であればスンと避けられてしまうのですが、真夜の日だけは何故かお優しいのです。


 代わりに私の頭の巻き角をこれでもかと言わんばかりに撫で回されてしまうのですけれども……。


 微妙にくすぐったいのですが、貴重な柔枕を失ってしまうよりはマシですの。


 我慢しつつ、私もまたスンと目を閉じさせていただきます。



「それにしても、よ。ここまで一応は何事もなく歩みを進められているわけだけど」


「ええ、思ったよりもスムーズでしたわね……。日々張っている結界魔法でも、特におかしな動きは感じ取れておりませんもの……」


「正直、不気味なくらいにね」


 森をいち早く抜けるために特に寄り道をしていないから、という理由もあるかもしれませんが、つい先日に土岩の集落を後にしてから、かなり良いペースで森を突き進めていると思いますの。


 このまま順調に行けば、次の真夜の日が訪れる前に森から出られるかもしれません。


 もちろん非力な私の体力が保てば、という前提ではありますけれども。



「ザコ勇者のアンタはどう思う?」


「どうって……。そりゃあ何事もなく旅を進められたらベストだとは思ってるよ。けど、イベント事が起きてこその旅だからねぇ。これまでもそうだったし」


「むしろ、そういう星の元に生まれてるのがアンタなんでしょうね。……となると、やはり警戒しておくに越したことはなさそうだわ」


「逆張りとはヒドいなぁっ」


 言葉には出せませんが、私もミントさんに賛成ですわね。


 もう長いことスピカさんと一緒に旅を続けておりますが、一筋縄では行かなかったことのほうが多いのですから。


 かといって今の今から対策を練ることも難しいでしょうから、やはり警戒を続けながら少しずつ森の出口を目指して進む他に、最善の策はないように思えますの。


 千里の道も一歩から。


 王都を出発したときも同じような気持ちになりましたわね。


 緩みがちな終盤こそが一番危ないとも言いますし、今一度気を引き締めてまいりましょうか。



「ふわぁふ……それでも……警戒するのは明日からにいたしましょうよぉ……今日は女神様が周囲を見張ってくださっているのですしぃ……キチンと休むのならば……今のうちです……のぉ……」


 もう、瞼がまったく開きませんの。

 思考も徐々に散漫になってまいりました。


 だんだんと息が深くなっていって、自分が今まさに眠ろうとしているのを、ある意味客観的に感じとれてしまいます。


 体重を完全にスピカさんに預けます。



「日暮れまではまだもう少し時間があるけど、リリアちゃんもこんな感じだし、とりあえず私たちも今日は英気を養っておこっか」


「下手に動き回って足手まといになられても困るか。しょうがない。アタシも休むとするわーッ」


 ばったーん、と。


 ミントさんが大の字になって、私のお腹の上に圧をかけてきましたの。


 うっぷとほんの少しリバースしそうになってしまいましたが、持ち前の気骨さで耐え抜いておきます。


 もはや抗議の意を唱えるだけのチカラどころか、瞼を開け続けるチカラさえも残ってはおりません。



「ふわぁ……ふぅむ……次に私が目を覚ますときは……真夜の日も終わりを迎えて……万全の状態にまでぇ……復活できているはずですの……」


「そうであってもらわなくちゃ困るわよ」


「あっはは。でもなんだかパジャマパーティみたいだね。こういう雑魚寝な感じ、私は好きだよ」


「ふわぁぁ……ふぇ……んむ…………」


 視界がだんだんと暗く揺らいでいきます。


 そうしてゆっくりと、まるで深い水に沈み込むかのように、私の意識は微睡(まどろ)みの向こう側へと落ちて消えていきましたの……。


 そうですの……いつもどおり、懐かしき幼少期の頃の、白銀世界の夢を思い出しながら……やがて私は……完全に意識を手放してしまったのでございます……っ。



――――――

――――


――


 

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