持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクですわね
ジリジリという鈍い頭痛に唸される私を他所に、ミントさんがキッと女神様を睨み付けて牽制なさいます。
「この際だから単刀直入に尋ねさせてもらうけど」
「この私に答える義理があるとお思いで?」
対して即座に女神様が然とした態度で言い退けなさいましたの。
けれどもミントさんも一歩も引く様子は見せません。
あぐらをかいて、堂々と腕を組みながら。
「知らないとは言わせないわよ。〝反・魔王派〟の思想を広めてる女神教徒のこと、アンタが知らないわけがないもの。誤魔化したって無駄。そこのザコ聖女から聞いたもの。
信者共の祈りを聞き届けるのがアンタのお仕事なんだってねぇ?」
「リリアーナさん……余計なことを……」
「はぇっ!?」
聞かれたら答えるに決まっているではございませんか。
別に秘密としておく必要もないことなんですものっ。
私はこの特異な体質ゆえに、こうして監視という名目で女神様と直接会話ができておりますが、他の信者の方々も同じというわけではございません。
むしろそのお姿を拝むなんてことは生涯絶対にあり得ないわけで、聖典の中に書かれた内容から容姿を推察するくらいしかできていないはずなのです。
私を始めとして、その近くにいるミントさんやスピカさんだけが超絶レアなイレギュラーな存在ってことになりますの。
それはそうといたしまして、と。
それでは、何故ミントさんが〝女神様が全てを知っている〟との結論に至ったのか。
それは女神様のチカラのあり方にこそ答えがございますの。
私も含めた全ての教徒は、お空の上にいらっしゃる女神様に対して祈りを捧げることで、女神様のお力を分けていただいていると考えられております。
例えば治癒の奇跡を祈れば治癒の力を、浄化を祈れば浄化の力を、といった具合ですわね。
女神様自らが私たちの願いを聞き受けた結果が、イコール魔法の発動許可となっているらしいのです。
誰が何を考えて、何を願っているかなんてのは女神様にとっては全てお見通しのはずですの。
それゆえの全知全能なのですからね。
そしてまた以前にご本人から、民々の信仰の度合いと量こそがそのまま女神様のおチカラに変換されるとも伺ったことがございます。
持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクですわね。
もしも実際には私たちの声が届いていないのであれば、それはつまり経典にも嘘が書かれているということになってしまいますゆえ……その……わりと大問題になるかと思いますの。
さすがに嘘だとは思えませんけれども……。
「で、どうなの? 知ってるの知らないの。こんな問いかけも全部無駄なくらい、誰が何を願っているのか、アンタには全部筒抜けなんでしょ」
「たとえ筒抜けであったとしても、やはり答える義理はありません。女神である私が世の出来事に直接介入するわけにはまいりませんので」
「〝反・魔王派〟の連中には〝反・女神派〟と関わってるヤツらも多いわ。それでも我関せずを貫き通すつもり?」
「ええ。それでも、です」
きっぱりと言い放ちなさいます。
女神様としても下界との境界線は引き終えていらっしゃるようで、一歩も妥協なさる気はないようです。
一触即発とまではいきませんが、毎度のバチバチという空気が辺り一帯を支配しております。
……体調悪いんですから、あんまりドンチャカ騒がないでくださいまし。まったくもう。
しゃーないですわねぇ。
いつもどおり私がおちゃらけた的外れな発言をして、この場を和ませてさしあげましょうか――と思ったのですけれども。
先に動いたのは……!?
なんと、今まさに空気を張り詰めさせているミントさんでございましたの!
「はーっ。どいつもこいつもアッタマ固いわねぇ! ほら、このアタシが頭下げてんだから素直に頷いてくれりゃあイイのよ。……ホントに、この通りよ」
「「ミントさんっ!?」」
あの高飛車なミントさんがしっかりと頭を垂らしていらっしゃいましたの!
下を向いたまま静かにお続けなさいます。
「この際だから一つ貸しにしてくれてもいいわ。ちょっとしたヒントをボロってくれるだけでも充分すぎって思ってるくらいよ。
……アタシもね、敵がいることだけは分かってるのに、けれども敵の詳細は全然掴めてない。その不気味さが怖くて怖くて仕方がないの」
正直に申し上げまして、これは天地がひっくり返るくらいの超ド級衝撃事件なのでございます。
普段からある意味では女神様を目の敵にしていると言っても過言ではないくらいの傲慢な態度を取っていらっしゃいますのに、今日の彼女はやけにしおらしいのです。
……こんなミントさんは初めてですの。
ゆえに私も加担をさせていただきますっ。
重い半身を無理矢理に起こして、女神様に対してペコリと一礼してさしあげます。
「わ、私からもお願いいたしますのっ。正直、私は試練とか使命とかは二の次ですけれどもっ! 伴侶探しのほうが百倍大事ですけれどもッ! それでも、旅の最中に女神様を悪く言う方々にだけは負けたくないんですのっ!」
「いえ、使命はキチンと果たしてください」
「だったら尚更教えてくださいましっ!」
「くっ……」
どうしてわざわざハードモードで進まなければならないんですの!?
女神様が警戒すべき敵のお名前を教えてくださるだけで、ずっと楽な旅にできるとは思えませんでして!?
試練とかそんなの笑止千万ですの!
女神様が世界平和をお望みとのことであれば、私たちを直接サポートしてくださったほうが間違いなく円滑に旅を進められると思うのですけれどもッ!!!
ま、まさかそれとも、私たちが敵を知ってしまうと、何か不都合なコトが起こり得るんでして……!?
いつも「いいね」を押して
応援してくださる読者さんはどなたですの……!?
感想欄に匿名で現れ出てきてくださっても
よろしいんでしてよ……!?
(いつも応援ありがとうございますッ!
本当に本当に励みになっておりますッ!)
もう一個か二個ほどイベント起こしたら
第二章が終わりそうです!!!
とっても長かったね! 大森林編!←