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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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どうにもやっぱり胡散くさいのよ

 


 その後、私たちは足早にお宿へと戻りましたの。


 ちなみに寝泊まり用として設けられた奥のほうにはキチンと清潔そうな茣蓙(ゴザ)が敷いてありましたゆえ、着ている衣服を汚さずに済むようです。


 ふぅむ。杞憂で終わってよかったですわね。


 決して小綺麗な空間ではありませんゆえ、油断はできませんけれども。



 それはそうと、そんなことよりも、ですの。



 お宿に戻って早々、私たち三人は円を描くように腰を下ろしておりました。


 私は正座、スピカさんは斜めに足を崩した女の子座り、ミントさんに至っては恥じらうそぶりもなく堂々と胡座(あぐら)をかいていらっしゃいます。


 ポン、と平手を打ってからミントさんがお話を始めなさいます。


「さて、と。早速だけど次の目的地に向けて作戦を立てるわよ。へっぽこ勇者はさっきの地図を出してちょうだい。そんでザコ聖女。アンタは一応、入り口あたりに結界魔法張っといてくれる?」


「ふぅむ? もう張ってありますけれども」


「ならばよろしい。仕事が早いじゃない」


 それくらい乙女の嗜みとして当然ですもの。


 見方を変えれば、今はか弱き乙女三人が鍵のかからぬ暖簾の向こう側で、ただただ雑魚寝しているだけとも言えますからね。


 誰から見ても危なさMAXの極みなんですの。


 わりと夜這いウェルカムな私はともかく、今代の勇者様であるスピカさんの貞操だけは、共に横に立つこの私が責任を持って護ってさしあげねばなりません。


 ゆえに不埒な殿方は門前払いしちゃいましてよ。



「それじゃあ本題に移らせてもらうわ」


 地図を受け取りなさったミントさんは、バサっと勢いよくソレを床にお広げなさいました。


 せいぜい枕くらいの大きさしかない地図ですが、小柄なお二人と比較してしまいますと相対的に大きく見えてしまいます。


 書かれている内容自体は細かいみたいですの。

 読んでもほとんど理解できませんけれども。



「いいかしら? 今アタシたちがいるのはココ」


 ミントさんが紙のちょうどド真ん中を指差しなさいます。



「そんでアタシたちの目的地である神聖都市セイクリットはだいたいこの辺から森を出れば近いはずよ」


 そこから指をツツーっと動かして、かなり左上のほうまで移動させなさいました。


 中央から左上まで、実際にはどのくらいの距離があるのかは分かりませんが、この地図の縮尺から察するに、下方にはもっともっと森が広がっているはずですの。


 大森林の踏破率としてはちょうど半分くらいか、六合目くらいには辿り着けているのではございませんでしょうか……!?


 まっすぐに魔王城に向かうのではあればキチンと十合目まで進まねばなりませんが、幸いにも神聖都市セイクリットとやらはもう少しだけ左側――つまりは北東寄りでしたっけ?――の位置で栄えていると以前に伺っております。


 もうそう遠くない場所に来れていると言っても過言ではないかもしれません!


 

「さっき、次の経由地を決めるとおっしゃいましたわよね。ともなりますと、現在地よりやや上方にある……この辺りの集落が狙い目でして?」


 私たちの今いるド真ん中から、そこそこ上に指を動かしたところに、家のマークがいくつか集まって描かれている地域がありましたの。


 現在地からその集落までの距離と、集落から森の境界線までの長さがだいたい同じくらいに見えております。


 森脱出の最後の準備を整えるのであれば、ちょうどよい感じかと思ったのですけれども。



 しかしながらミントさんは静かに首を横に振りましたの。



「いや、どこにも寄り道しないで、最短距離をひたすらにまっすぐに向かうことにするわ」


「はぇっ!? で、でもっ。先ほどは確かに経由すると」


「言ったでしょ。罠の可能性があるって。この地図に描かれてる内容自体にウソはなさそうだけど、どうにもやっぱり胡散くさいのよ。

大勢の人に宣伝して回ったわけでもないのに、こんなに都合よく周辺地図をゲットできるはずがないじゃない。タイミングよすぎよ」


「それは確かに、そうですけれども」


「正直、いかにもこの先の中継地点(・・・・・・・・)に来てくださいなって書いてあるようなモノよね。飛んで火に入る何とやらってヤツ。

別に森の出口に直接行けないって距離でもないわ。ちょーっとばかり野宿と現地調達が多くなるだけ。今までだってやってきたことでしょ?」


 ふぅむぅ。

 でも何だか逆に騙されてしまった気分ですの。


 確かにあの場には、私たち以外の男性エルフ族様もいらっしゃいましたし、覗き穴や盗聴魔法の有無を確認してあったわけでもありませんゆえ、機密性の高いお話をするべきでなかったと理解も反省もできますけれども。


 けれどもそれでもっ。

 疑念が消し去れるわけではございませんの。



「納得してないって顔ね。いいわ。アタシの読みを特別に話してあげる」


「よろしくお願いいたしますの」


 珍しくもったいぶらずにお話しくださるようです。


 であれば素直に傾聴させていただきましてよ。



「……正直、アタシは今でもキノコ洞窟の亀モグラは女神教の過激派が仕向けたモノだと思ってるわ。第一の目的は……そうね。この集落の連中を、他の集落の連中と分断させるためじゃないかしら」


「分断、ですの?」


「ええ。集落へのアクセス手段が減って他の集落との関係性が薄まれば、その分、最寄りの集落のと繋がりが太くなるはずだもの。物資の滞りも起きるわけだから、必然的に依存度も高くなるでしょうね」


 ミントさんが神妙な面持ちでお続けなさいます。

 

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