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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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道は繋がっているからこそ道なのです

 

 環境改変の元凶がいなくなった今、いずれはあの洞窟も元の姿を取り戻していくことでしょう。


 けれどもそれは、長い長い年月をかけてようやく実現されるお話だと思われますの。


 長命種であるエルフ族であればさほど気にならないかもしれませんが、私たちのようなヒト族からしたら、長い年月というのは文字通りの死活問題なのでございます。


 スピカさんのお祖父様、つまりは先代の勇者御一行がこの森を訪れて、エルフ族とヒト族との間に小さな交友関係を結んでくださいました。


 その後継者たる私たちもまた、各集落をめぐり歩いていくことで、少しずつ交流の輪を広げていっているのでございます。


 あの洞窟が普通の旅人でも通れる道として使えるようになれば、この先一年後か十年後、はたまた五十年後に、私たちの後輩たちが新たな交友関係を築いてくださるかもしれませんの。


 道は繋がっているからこそ道なのです。



「別に彼らに恩を売っておきたいとか、そういう短絡的な意味で言っているのではありません。エルフ族と他種族、双方の未来を考えたときに、選べる未来は少しでも多いほうがよろしいかと思いますの。死の洞窟のせいでせっかくの交流が途絶えてしまうのは……惜しいですもの」


「まだ会ってもないエルフ族の集落相手に、よくもまぁそんなに善意100%でいられるわよね。もしかしてアンタって相当な世間知らず?」


「ええ、残念ながら。それも大層な箱入りでしてよ。暗くて肩身の狭い場所に押し込まれた結果、こんな夢見がちな乙女が形成されちゃったんですのっ」


 修道院を悪く言うつもりはありません。


 聖女に抜擢されるまでほとんど敷地の最奥にひた隠しにされてきたとはいえ、幼少からこの歳まで血混じりの(親の顔を知らぬ)私を育ててくださったというご恩があるのです。


 それにイジワルな先輩修道女さん方とは金輪際会って話すことはないでしょうからね。


 全部水に流してさしあげますの。


 せいぜい凱旋して超出世した私の噂を耳にして、聖職者らしからなく嫉妬に駆られてしまえばよろしいのですっ。


 こんなことを思っているとまた女神様から戒めの雷を落とされてしまうかもしれませんけれども……。


 今回の私の行動は、ミントさんのおっしゃる通り、善意から生まれ出でた選択ですの。


 聖女としての責務(正義感)とも言えましょう。



「ちなみにキチンと浄化を終わらせる形ですと、もうしばらくこの辺りに滞在することになってしまいますけれども……お二人とも、お許しいただけまして?」


 少しばかりの申し訳なさを込めてペコリと頭を下げさせていただきましたの。


 特にミントさんとしては神聖都市セイクリットに急ぎたい気持ちが満々なのでしょうが、私としては目先の懸念を放っておきたくないのでございます。



「ん。アタシは別に構わないわよ? アンタの好きにすりゃあイイんじゃない。面倒くさがりのアンタにしちゃあ珍しくやる気なようだし、適当に泳がせといてあげるわ」


「まままマジですのっ!?」


「マジよ。今更嘘ついて何になるのよ」


 少しは渋られるかと思ってましたの。


 はぁ、と溜め息まじりに諦めたようなご表情になっていらっしゃいますが、それ以上は特に悪態を吐くご様子もないようです。


 私の意志を、尊重してくださっているのでしょうか。



「私も大丈夫だよ。元々あの洞窟は踏破だけが目的じゃなかったもんね。それに後ろの安全確保ってのも戦いの基本だからっ! 洞窟が気軽に通れないって状況、きっと不便極まりないだろうしっ!」


「お二人とも……! ありがとうございますの!」


 むっふふ。

 そうと決まれば俄然やる気が出てまいりました。

 口先だけの女で終わるつもりはございません。


 デキる聖女として腕が鳴りましてよ!

 それはもうグヮランガランと!


 森の中では基本的に後方から見守っていることしかできず、鬱憤を溜める日々を過ごしておりましたけれども。


 こうして洞窟の中でようやく活躍することなできて、更にはまだまだ華麗な姿をお見せできる機会をいただけるとは、滅多にないチャンスだと思うのです!


 今こそ汚名返上のときですの。


 お飾りの無能なザコ聖女、という不名誉なレッテルを真正面から突き返してさしあげましょう。


 世の中とは常に働かざるモノ食うべからずなんですものねッ!


 働けば私の評価も上がりますわよね!?


 正義感を抱いているのと同じように、私は危機感も覚え始めているのでございます……!


 スピカさんもミントさんも、お二人ともとても優秀な方々なんですもの……ッ!



「やる気に満ち溢れてるところにゴメンだけど。昨日の今日でリリアちゃんもまだ万全じゃないと思うからさ。浄化作業は明日からよろしく頼むね」


「了解ですの!」


「あ、そうなると私やミントさんはしばらくはお留守番になるのかな……。コレといって浄化の手助けができるわけじゃないし」


「一応、片方は護衛として付いてってあげるって感じでいいんじゃない? あの面倒な亀モグラは倒したわけだけど、まだなんかいたら厄介だし。そうなるとこのザコ聖女は戦えないし」


「あ、そうだね。そうしておこっか」


 お二人とも私のことを心配してくださっているのか、思いの外すんなりと決まりました。


 あの洞窟を浄化しきるのに何日かかるか分かりませんが……自らの発言には責任を持ちたいと思います。


 よって! 明日から早速!


 洞窟内胞子掃討作戦を開始いたしますの!




――――――

――――


――


 

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