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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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まぁ典型的な姐さんタイプだよねー

 

「はふぅ〜すっごい満腹ですの〜。見てくださいまし。こんなにおなかポンポコリーでしてよ〜」


「ホントにイイ食べっぷりだったねぇ。でもストックほとんどなくなっちゃったや。また暇を見て保存食作っておかないと」


「ひっひっふぅー……どのみち森の中なら何でもたくさん採れましてよ。ココは食にだけは困りませんもの」


「誰かさんが好き嫌いしなきゃ、もっと楽できると思うんだけどなぁ〜?」


「うぅっ。正直耳が痛いですの」


 綺麗に丸くなったお腹を撫でながらも、微かに眉間にシワを寄せさせていただきます。


 別に食べられないモノがあるわけではないのです。


 例えばのお話、どんなにお魚料理が好きだったとしても、ずーっとお刺身が続いてしまえばいずれは飽きてしまいますでしょう?


 それとほとんど同じだと思っておりますの。


 ただでさえ聖職者の私は戒律的に菜食を推奨されておりますゆえに、味気のないモノばかりを食べていると、人一倍に飽きが来てしまうのもお早いようで。


 おまけに補足として言わせていただけるのであれば、後味に渋みが残るモノやクセの強いモノなんかも避けさせていただきたいんですのよね。


 口に入れるたびに、ううっ……というマイナス面な記憶が色濃く残ってしまうのでございます。



「けれどもスピカさんだって好き嫌いのお一つやお二つ」


「私はしないよ? だいたい全部好きだもん」


「わ、私だって基本はそうですの! 甘いモノが一緒にくっ付いてきたら尚更しっかり食べますの!」


 私は聖職者の身分ですが、それ以前に育ち盛りな乙女でもありますゆえに甘いモノなら何でも好きですし、こっそりと脂の滴るお肉などを出された日には両手を上げて尻尾をブンブンと振って喜んでしまうと思いますの。


 実を言うとゲテモノ系も好きですゆえに、見た目はエグいモノでも美味しいのであれば、基本的には何でも食卓に並べていただいておっけーの精神ですの。


 もちろん見た目に則してマズいモノなら即ぺっぺっしちゃいますけれどもッ!


 ……ふぅむ。確かに言われてみれば。

 私も相応にワガママなほうかもしれませんわねぇ。


 改善するかどうかも時の運次第ですけれどもっ。



「こっほん。それはさておき、ですの」


「あ、さては逃げたな?」


「ななな何とでもおっしゃいましっ」


 私の好き嫌いなどはテントの隅っこにでも放り捨て置けばおけばよろしいのです。


 大事なのは魔力も気力もだいぶ回復できた、今この状況のほうなんですもの。



「察するに、私が魔力切れで気を失ってから、まだそこまでの時間は経っておりませんのよね?」


「そんな感じだね。日が落ちてからチョイ経ちってなところかな。ちなみにミントさんは散歩に出かけてるよ。この辺が安全かどうか一応確かめてくるってさ」


「あらあらまぁまぁそれはありがたいことですの」


 身動きの取れない私は完全に足手まといですものね。


 となりますと、さしずめスピカさんは拠点の防衛役と言ったところでしょうか。


 肩書きがカッコいいですの。クールですの。



「……態度に似合わず、あの人も意外に献身的な方ですわよね。相変わらず口は冷たいんですけれども」


「まぁ典型的な(あね)さんタイプだよねー」


 初めこそツンケンした素振りを見せるだけだったのですが、最近はふとしたときに私たちに隙を晒してくださるようになったのでございます。


 寝顔もほとんど隠さなくなられましたし。

 食卓も毎日一緒に囲んでくださいますし。


 何だか、態度の節々から余計なトゲが取れたと言いますか、ヤられる前にヤる的な警戒の色が薄れたと言いますか、そんな感じですの。


 よくミントさんは私たちのことを〝重度のお人好し〟などと揶揄なさいますが、ある意味では彼女も同類なのかもしれません。


 私たちのやる気が感染ってしまったのか。

 それとも元来からそんな性格だったのか。


 一時的とは言え、同じ釜の飯を食べ、同じ屋根の下で眠るパーティメンバーなのですし……。


 もっともっと仲良くなっておきたいとは思うんですけれども……っ。



「そういえば私たち、ミントさんのことってほとんど何も知りませんわよね」


「あんまり自分語りするタイプじゃないからねー」


 対する私は好きあらばすぐにでも、ですのに。


 とは言え修道院に拾われる前までの話は、さすがの私でもあまり人に打ち明けたことはありませんけれども。


 別に黒歴史というわけではございませんの。


 単に話したところで変にビックリされてしまうだけでしょうし、そもそも信じてもらえるかさえも分かりませんし。


 語る機会も必要もないだけなのでございます。


 それに、麗しく慎ましく華々しい聖女様の天真爛漫な野生児時代のお話なんて、どこの誰が聞きたいと思いまして?


 正直なお話、キチンと公的に尋ねられるまでは、静かに胸の内に留めておきたいと思っているのも真実なんですのよね。


 ふぅむ、と。

 こっそりと納得の息を漏らしましたところ。



「あー、でもさでもさ、たまーに、それこそミントさんの言葉の節々に育ちの良さ(・・・・・)を感じることがあるんだよね」


「育ちの良さ? とおっしゃいますと?」


「ほら、ミントさんって意外なくらい行儀作法とかちゃんとしてるじゃん? 寝巻きは自分でキチンと畳むし、食べた食器も自分で片付けてくれるし!」


「……もしや私への当てつけ(・・・・)ですの?」


「あっはは。そうとも言うー」


 むむ、別に誰にも迷惑かけていないからよろしいじゃありませんのっ。


 どのみちパジャマもお皿も、修道服に着替える際や鞄の中に収納する際に、その都度適切な浄化魔法をかけ直しているのでございます。


 毎回サクッと綺麗にしておりますゆえに、普段は目先の見栄えを度外視しているだけなんですの。


 自分なりの効率化を計った結果ですの!


 決して物事の直前まで何もしたくない怠惰心だとか、面倒くさがりの横着心からの行動ではありませんでしてよ。


 まったくもうっ。断じてもう!


 それにしても、育ちの良さ、ですか。

 それこそ貴女が一番ではありませんの。

  

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