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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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私がプラチナブロンドの性を……名乗るきっかけに


 それからというもの。


 私たちは亀モグラを丁重に弔ってから、更に洞窟の先を急がせていただきました。


 広場を超えてからはずっと曲がりくねった道が続いておりましたが、ほぼほぼ一本道だったおかげで迷うことはありませんでしたの。


 既に足腰に限界が近付きつつありましたゆえ、途中途中で何度も休憩を挟みながらも、特に大きな障害に直面することもなく、わりとグイグイと進んでいけたのでございます。


 そうして、ついに私たちは……ッ!



「ふゎああっ……おおよそ数刻ぶりの自然光……! 心も身体もみるみる浄化されていきますの。今にもトロトロに蕩けて無くなっちゃいそうですのぉ……っ!」


「って言っても相変わらずの木漏れ日レベルの淡い光なんだけどね。それでも眩しく感じるくらいには、外に出れたって実感湧くよね」


「何にせよ狭くてカビくさい穴倉よりは全然マシよ。……はー、マジで疲れたわ」


 あのドライなミントさんでさえも!

 私たちと同じく伸びをしていらっしゃいますの!!


 ええ、そうですの!


 無事に眠り毒キノコに侵された死の洞窟を踏破できたのでございますッ!


 結局、洞窟内には亀モグラ以外の生物は見当たりませんでしたの。


 胞子を撒き散らす元凶がいなくなったとはいえ、今はまだエルフ族が何の準備もなく行き来できるような環境ではないのです。


 近日中にあの洞窟の中に戻って、全面的に浄化の光を照射して洗浄を施しておかねばなりませんわよね。


 はぁー。

 やるべきことがいっぱいで大変ですの。


 やり甲斐があって楽しいですけれども。


 これも聖女の(さが)であり、定命(さだめ)ということなのでございましょう。


 今更文句を垂れるつもりはありません。

 甘んじて全力対応してさしあげましてよ。


 一度きりの人生なんですものっ!



「さすがの魔力タンク(ザコ聖女)も限界スレッスレでしょ。今日はもう休んでもいいと思うわ」


「了解ですの〜……おっしゃるとおり、少しでも気を抜いたら即座にブッ倒れてしまいそうなくらいにはヘロヘロでしてよ〜……」


 何もしなくてもふにゃふにゃと身体が揺れてしまうくらいには強烈な睡魔に襲われてしまっているのです。


 かと言って、身体に毒キノコの胞子を付着させたまま眠るわけにもまいりませんの。


 最後のチカラを振り絞って、私はもちろん、スピカさんにもミントさんにも浄化の魔法をかけてさしあげました。


 やはり、それが限界でしたの。


 まずは足から力が抜けて、それから身体がひたすらに重くなり、とてもではありませんが瞼を開けていられなくなってしまいます。



「リリアちゃんっ!?」


「だい……じょ……ぶ……ですの……。ちょーっと……眠たい……だけ……で……してよぉ……」


 どうやらスピカさんが支えてくださったようですの。


 静かに私を地面に寝かせてくださいました。



「テントのほうはアタシで立てておいてあげるわ。今回だけの特別だからね」


「…………ふぁ……ぃ……」


 既に頭の中がフワフワとし始めておりますの。


 ああ、この魔力切れの感覚は……本当に久しぶりですわねぇ……。


 段々と思考にもモヤが掛かって、まるで深い深い水の底に沈んでいくような、あの冷たい感覚を……。


 今も忘れはしませんの……。


 アレはまだ、私が修道院に拾われる前の……白金の世界(・・・・・)で……暮らしていた……頃……。


 私がプラチナブロンドの性を……名乗るきっかけにもなっ……た……あの……。




――――――

――――


――




「…………ふぅ……むん……?」


 目が覚めたとき。

 そこはよく見知っている天井でしたの。


 いわゆるテントの張り天井ってヤツですわね。

 頭上に吊られたランプが地味に眩しいのです。


 なるほど、そういうことですか……。

 どうやら私はまた気を失ってしまったようで。


 何だかとても懐かしい夢を見ていたような気もいたしますが、泡沫夢幻という言葉がこの世に存在しているように、目が覚めた途端に、何を見ていたのか忘れてしまいましたの。


 起きて早々に全身が鉛のように重たいですが、〝重さの異能〟の発動限界を迎えたときのような、あの息苦しさまではありません。


 むしろ眠る前の安心感と達成感を思い出せて、かえって気持ちがいいくらいなのでございます。


 別にドMというわけではありませんの。

 そのケがないわけでもありませんけれども。


 とりあえずテントから這い出してみます。


 どうやら外はもう真っ暗のようで、近くに設けられた焚き火の明かりによって、辺りがぼんやりと分かるようになっているくらいでしたの。


 パチパチという薪の弾ける音と共に何やら香ばしい匂いが漂っておりますの……!



「ああ、おはよリリアちゃん。ざっくり半日ぶりだね。よく眠れた?」


「ええ、おかげさまで」


「起きて早々アレなんだけど、ご飯食べる? って言っても残念ながら、いつもの乾燥キノコの素焼きくらいしか用意できてないんだけどさ」


「ふふふっ。いただきますの。あれだけもうキノコにはこりごりと思っておりましたのに、その匂いを嗅いだら即座にお腹がグーでしてよ。まったく素直で単純な食欲ですことっ」


 毒がなければもう何でもヨシですの。


 安心して口に入れられるモノというだけで、それだけで100点満点をさしあげたくなりますわよね。


 串に刺さったホクホクの炙りキノコを受け取ります。


 はぁぁーん……俄然、食欲湧きますの……っ!


 やはり私はあれだけキノコは懲り懲りと思い知らされても、それでも太くて逞しい猛々キノコには目がないみたいですわねぇ……っ!


 これも乙女の悲しき定命というものでしてよ。

 さすがに過言ですけれども。

 

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