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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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基本的に大真面目で甘ちゃんでイイ子ちゃんでヤらせていただいておりますゆえに

 

「例えばの話をさせてもらうけど」


「ふぅむふむ」


「この広い森の中に女神教の護符が偶然落ちていて、おまけにあの引きこもり亀のお腹に偶然ペタリとくっ付いちゃったって現実。そっちのほうが圧倒的に異常だと思わない?

断然、アタシは人為的な路線を推すわね。明らかにおかしいもの」


 ほうほう、なるほどですの。

 確かに一理も二理もある気がいたします。


 ましてココは言わばヒト族の文明からは大きく離れた土地ですの。


 エルフ族の皆さま方にとっては女神信仰よりも精霊信仰のほうが圧倒的に主流でしょうし、ただの聖職者がこの大森林を無事に踏破できるとも思えませんし。


 ともなりますと、あの洞窟を通れなくすること自体に意味があったのか、はたまたその先に住むエルフ族の方々への嫌がらせか。


 何者かの意図をがあるようにも思えてきましたの。


 考えたところで答えに辿り着けるわけがありませんけれども。



「ふぅむぅ……色々と考察はできたとしても、すぐに確かめる術がないことが残念でなりませんわね」


「でしょうね。ただし、幸か不幸かアタシたちの目的地は神聖都市セイクリット(女神教の総本山)よ。そこにどんな過激な一派があったっておかしくはないと思うわ。

おつむがお花畑な聖女サマには、ニワカに信じがたいお話かもしれないけど」


「た、確かに聖女になってからは、ようやく不自由のない日々を過ごせるようになっておりましたけれども……っ!」


 実の親の顔を知らない孤児であり、おまけに先祖返りの特異体質を有していた私にとって、修道院時代はかなり肩身の狭い思いをする期間でもありましたの。


 そんな状況下で聖女に抜擢されたのは、人生の一大転機とも言える出来事なのでございます。


 見える景色が全てバラ色になりましてよ。


 私と接してきた人々も、皆さま手のひらを返したように態度を変えてきたことを覚えております。


 羨望の眼差しというよりは、疑念や懐疑の眼差しもたくさん向けられてしまいましたけれども……。


 そりゃあもちろん、無意味な嫉妬に狂って、より当たりのキツいご態度を取るようになった先輩修道女の方々も、少なからずはいらっしゃいましたけれども……!


 そうですの。

 それでも、ですの。


 私に才と美貌の両方があると認められて、結果的に女神様に救われたというのは、紛れもない事実なのでございます。


 多少なりともお花畑になってしまうのも仕方がないと思いましてよ。


 キノコ畑よりはずっと華やかで清々しいですの。



「それにしても、女神教の信徒が、人々を死に至らしめる眠りキノコの存在を是としていたかもしれない事実、ですか……」


「っていう可能性もあるってだけの話よ」


 ええ、もちろん分かっておりますの。

 私自身としては肯定はでき兼ねておりす。


 人々の平和と安寧を願うために存在しているはずの女神教が、逆に人々の生命活動を危ぶむ行為を陰で行っているとは想像もできないのです。


 もし本当にそんな過激派がいたとしても、きっと邪道で小規模な流派にちがいありませんの。


 女神教の第一理念を汚し、私利私欲のために護符を利用するような不届者なんて、絶対に成敗してやらねば気が済まないのです……ッ!


 ほら、お空の上にいらっしゃる女神様もそう思いますわよね!?


 今なら肯定の意を込めた雷を落として教えてくださっても、笑顔で許してさしあげましてよ!?


 なんなら次の真夜の日にでも、是非とも直接ご見解をお聞かせくださいましっ!



「なんだか複雑な話になってきたよね。言ってしまえば私たちの任務って、魔王城に行って帰ってくるだけの長い長いおつかい(・・・・)みたいなモノだったとはずなんけどさ。

休戦協定を阻止したい連中がいたり、今もなお、種族差別が残ってるのを耳にしちゃったり……」


「しゃーないですわよ。そういう役回りですもの」


「だよねぇ」


 重苦しい空気に早速疲れ果てたのか、スピカさんがトホホと溜め息をお吐きになりましたの。


 彼女は決して面倒くさがりの性格の方ではありませんゆえ、今のは世間知らずで楽観的だった自らを戒めるためのモノだったのではありませんでしょうか。


 正直、私もほとんど同じ気持ちですの。


 なるべく安全かつ早急に旅を終えて、何一つ不自由のない隠居生活に勤しみたく思っておりましたが、こうして様々な問題に直面してしまいますと、気苦労で頭と肩が重たくなってきてしまうと言いますか……。


 決して自分が敬虔かつ見本的な女神信徒ではないとは自覚しておりますの。


 もっと我関せずのスタンスを貫けたら楽だったのででしょうけれども。


 それでも私は、基本的に大真面目で甘ちゃんでイイ子ちゃんでヤらせていただいておりますゆえに。


 今代の聖女としての誇りは胸に宿しておりますし。

 


「ま、全部の真相は闇の中だとは言え、少なくもこの洞窟内の厄介事は片付けられたと思うわ。最低限の後片付けをしたら、とっとと出口を目指すことにしましょ」


「りょ、了解ですのっ。おっしゃる通り、ずっと同じ場所に留まっていても健康にもメンタルにもよろしくないですのっ! 早く新鮮な空気を目一杯に吸い込みたい気分ですのっ!」


「そうだねぇ。今私たちがクヨクヨちっちゃく悩んでたところで、世界も時代も全然良くはならないんだもんね。……そっか……勇者、かぁ……」


「聖女かぁ……ですの……」


 二、三回ほど屈伸をした後、年甲斐もなくよっこらせと呟きながら重い腰を上げさせていただきましたの。


 自分でも思っている以上に身体にガタがきているらしく、膝やら腰やら至るところからバキボキという鈍い関節音が聞こえてまいりました。


 魔力不足による身体疲労は、ただの治癒魔法では治せませんからね……。

 こればっかりは休むほかに回復する手立てはありません。


 ここら辺でお一つリフレッシュも兼ねて、天然の温泉でも見つけて湯浴びをしておきたいところですの。


 胞子に塗れてガサガサになってしまったお肌と薄金髪に、再び年相応の潤いを与え直しておかないとマズい気がするのでございます……ッ!



 正直、世界の平和よりもずっと死活問題ですわよね。

 無論、極めて個人的に、ですけれども。

 

 ミントさんの呆れ顔が地味に目に痛いですの。


 でも、仕方ないではありませんか。


 私は世界の聖女である前に。

 一人のうら若き乙女なんですからっ。




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――――


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