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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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でっへへへへへへへへへ、ですの


 単に光で貫くだけなら先ほどまでと変わりません。


 けれども今回ばかりはッ!

 私の浄化光線だけでは終わらせませんのッ!


 光の束が収まるか否かという絶妙なタイミングで、ミントさんが〝転移の異能〟を発動して、一瞬のうちに亀の身体に肉薄したのでございます!


 そしてすぐさまその身体に触れてッ!

 即座にもう一度異能を発動してッ!


 亀モグラを空中に浮かせた(・・・・)のでございますッ!


 まさに瞬く間の出来事でしたの。


 つい見惚れてしまった私でしたが、万が一に備えて次の行動に移っておかねばなりません。


 私も彼女の後を追うようにスタタと駆け出します!



 ミントさんの作戦とは、キノコ亀が地中から胞子を調達する前に、地面から離してしまおうという大胆不敵なモノだったのでございます!


 地中から追加の補充ができなければ、身に纏っている胞子の鎧も形成し続けられませんでしょうし。


 その一瞬の隙さえ生み出すことができれば、スピカさんだって攻撃を加えられるはずですの……!


 実際、あの亀モグラは空中では――




 と、安堵してしまったそのときでした。


 プスンッと。


 いつもよりはだいぶ規模が小さめだったのですが、亀モグラが背中から胞子を噴き出す音が、この耳に届いてしまったのでございます……っ!


 確かに不発に終わったような音ではありましたの。


 しかしながら、現に亀の周りの空気は明らかに白く澱んでしまっております。


 まさか、読みが外れてしまいまして……ッ!?


 最も近くにいらしたミントさんが、奉仕の爆発をまともに喰らってしまったようですの!



「「ミントさんッ!?」」


「アタシは大丈夫……ッ! 作戦完遂が先ッ! 続け、なさいッ!」


「りょ、了解ッ!」


 ただならぬ雰囲気に一瞬たじろぎなさったスピカさんでしたが、覚悟を決めたのかその足を止めることはございませんでした。


 私もまた、お返事をする代わりに、力無く落下してくるミントさんを全身で受け止めてさしあげましたの。


 どうやら噴出に合わせて咄嗟に両腕でガードなさったらしいのですが、それでも勢いは殺しきれずに、錐揉み回転をしながら降ってきたのでございます。


 私もカッコよくキャッチしてさしあげたかったのですが、当然ながら非力なこの細腕では彼女を支えきれるわけもございません。


 グラッとバランスを崩して地面に倒れ込んでしまいます。



「ふぉわっふっ!?」


 しかーしッ!

 ただでは起きないのが私ですのっ!


 ゴロゴロと地面を転がりながらも、その最中に浄化と治癒の魔法を展開して放射してさしあげます!


 とりあえず胞子を大きく吸い込んでいなければ大事には至らないはずです。


 くるりと体勢を整えてから改めて手のひらに聖なる光を集めて、彼女の身体を撫でるように、急いで治療を施してさしあげるのでございます……!


 手は絶えず上下左右に動かしつつ。

 目と首は周囲を観察しておきますの。


 今頃、亀のほうはどのようになって――




 ……いや、あらぁ……大丈夫そうですわね……。


 スピカさんの独壇場みたいですの……っ。



 あの亀の巨体をものともせず、まるでサーカス団のように定期的に空中に跳ね上げては、そのお腹に向けて小剣による連撃を繰り返していらっしゃるようなのです。


 スピカさんの細身なお身体のどこにそんなチカラが眠っているのかと半刻ほど問いただしてさしあげたいところでしたが、今はやめておきましょうか。


 勇者様のおチカラは計り知れませんからね。


 もしかしたらお相手の重さを利用した柔術的な戦闘方法なども身に付けていらっしゃるのかもしれません。


 ちなみに亀モグラのほうはと言いますと、どうやら胞子を噴出できたのは最初の一回だけのようで、今はもう何も抵抗できずに攻撃を受け続けているようです。


 遠目から見ても明らかにグッタリしておりますの。

 もうじきに決着に至ると思われます。



「……けほっ。ヤツに一発分残ってたのは誤算だったけど……アタシの読みも、だいたいは当たってたみたいね……」


「あの、まだ静かになさっていたほうが」


「大丈夫よコレくらい……前回のに比べたらずっとマシだもの……」


 今はまだゲホゴホと咳き込んでいらっしゃいますが、おっしゃるとおり、もう少し治癒の魔法を当て続けていれば楽になると思われます。


 ミントさんにばかり苦労をお掛けして申し訳ありませんわね。


 知恵においても、実行力においても。

 貴女は本当に頼りになる私のお師匠様ですのっ!



「こっほん。さすがと言わせてくださいまし。ミントさんがいなかったらアイツに一泡吹かせられませんでしてよ」


「それを言うなら……アンタらもいなきゃ、でしょ」


「でっへへへへへへへへへ、ですの」


「うわ。キモッ」


 んっなー!?

 直球すぎる暴言はさすがに傷付きましてよー!?


 褒められたら素直に喜ぶのが世の中の常なのではありませんことー!?



「……ん。もういいわありがと。残りの魔力はあの子の治療用にとっておきなさい。アタシなんかよりもずっと純度の濃い胞子を浴びちゃってるはずだから」


「ッ! は、はいですのっ!」


 ふと、ミントさんがチラリと中央のほうに視線を向けましたの。


 気付けば、だいぶ静けさを取り戻していたのです。


 そういえばつい先ほどにズドーンという重たい衝撃音が聞こえてきたかと思いましたけれども。


 ようやく戦闘も終わりを迎えたのでしょうか。


 スピカさんが下敷きになっていなければよろしいんですけれども……!



 まだほんのりフラフラ気味なミントさんに手をお貸して立ち上がらせてさしあげると共に、私もまた恐る恐るながら、この空間の中央のほうに足を進めてみましたの。


 すると、そこには……っ!

 一人の人影があったのでございます……っ!



「ふぅ。大丈夫、ちゃんと終わらせたよ。多分、死んだ……と思う。元々生きてるかどうか分かりにくい魔物ではあったけど、さ……っ」


「スピカさんっ!」


 髪も身体も、舞い散る胞子のせいで真っ白になってしまったスピカさんが、弱々しく佇んでいらっしゃっいましたの……ッ!


 ふらりとバランスを崩して倒れようとしていた彼女に肩をお貸しいたしまして、立ったままに治癒魔法を施してさしあげます。


 結界魔法で身を守っているとはいえ、体の内側に入り込んだ胞子がどんな悪影響を及ぼすか分かりませんもの。


 大事には至らぬよう、この私が最速スピードで完全完璧に胞子を浄化してさしあげますゆえに……ッ!


 さぁ、私が来たからにはもう大丈夫でしてよ。

 安心してゆっくりと息を整えてくださいまし。



 一旦端のほうに移動して様子を見ておきましょうか。

 中央に比べれば空気もそこまで濁りきってはおりませんでしょうからね。


 お二人の安全を第一に考えたく思いますの。


 今できる最善を尽くすだけなのでございますッ!

 

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