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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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もちろん全く無いとは言わないわよ


 グッと決意のガッツポーズを構えた後に、あえて抜き足差し足でお二人に忍び寄ってさしあげます。


 肩をトントンとして、振り向きざまにほっぺに指ブスーをしてさしあげたかったのですけれども。


 さすがはスピカさんでしたの。


 私の接近にいち早く気が付かれたのか、数歩も前のタイミングで素早く身を翻しなさったのです。


 小剣の柄に手を当てて警戒なさっていたようですが、人影が私のものだとすぐに気が付かれたのか、にっこりと笑顔を見せてくださいましたの。



「なんだリリアちゃんか。えっと、大丈夫? ちょっとは休めた感じ?」


「それはもうおかげさまで」


「ならよかった。今ちょうどリリアちゃんの話をしてたところなんだ」


 ええ、そうでしょうね。

 だからこそ近寄らせていただきましたの。


 なーんてことは無粋ですから言いませんけれども。


 お二人にもう一度同じ内容をご説明をしていただくのもお手間でしょうし、ここは一つ、私から切り出させていただければと思いますの。



「こっほん。聖女である私が……いえ、勇者パーティである私たちが、どうやったらあのキノコ亀を退治できるのか。その話題についてでしたわよね」


「そうそう。もしかしてだいたい聞いてた?」


「ふっふんっ。てへぺろり、ですのっ!」


 舌をちろりと出して茶目っ気を示しておきます。


 私は別に家政婦でも何でもありませんが、盗み聞きは常に女の必須スキルだと思うのでございます!


 意気揚々とそのまま続けさせていただきます。



「詰まるところ、あの亀がもしかしたらズルを行っているかもしれないってことですわよね」


「いやズルってわけじゃないと思うけど」


「いやいやだってだって、吸引元が足の裏かお腹かは分かりませんが、洞窟中のキノコの胞子をググイッと吸い上げているから、無尽蔵よろしく身体にまとい続けていられてるという!?

そんなのやっぱりズルではありませんこと!? 私がヘロヘロになってしまうのも仕方ないですの!」


「……そっか。悔しかったんだね」


 ええ、そうですの!

 分かっていただけまして!?


 地団駄を踏んで全身で感情を露わにしてさしあげたいところでしたけれども。


 無駄にキノコの胞子を撒き散らしてしまうだけですのでやめておきますの。


 私が空気を汚す原因となってしまうのは本意ではありません。


 ということでジッとしておいてさしあげます。


 静かにむーっと唇を結んでおりますと、やれやれ顔のミントさんが静かにお口をお開きなさいましたの。



「アレもアイツなりの立派な生存戦略でしょうね。このキノコ洞窟が生育に最適な場所だから活き活きとしていられるのか、それとも自ら過ごしやすい環境に整えたのか。おそらくは後者でしょうね」


「ふぅむぅ……自ら……」


「正直、ヤツがこの洞窟内で地に足をつけている限り、ほぼ無敵と言っても過言ではないかもしれないわ」


 自らの過ごしやすい環境を、自らの手で整えた結果、ですか……。


 ある意味ではこの大森林の根底と、真逆の位置にある行為だと思っちゃいましたの。


 この自然豊かな森を維持し続けようとするエルフ族(彼ら)に対して、ある種の侵略行為に等しいモノなのではないか、と……。


 他所者(よそもの)の私たちには何も言えませんけれども。


 それでも、この森の中の文化に多々触れてこられたからこそ、この森は未来も変わらず、そのままでい続けてほしいと思いつつありますの。


 今の私たちは町から町へと移動を続ける旅ガラス的な存在でしかありません。


 立つ鳥後を濁さず、とはよく言ったものですの。


 対してあの亀はキノコの胞子の中で生きることを是としている魔物で、自ら空気中に胞子を循環させることで、この空間をより良い住処に作り替え続けていらっしゃるのかもしれません。


 猛毒の眠りキノコの胞子は武器であり、盾であり、そして鎧でもあるという、なんとも厄介かつ理に適った生態ですこと……っ。


 

「ま、エルフ族の連中がこの洞窟を放棄せざるを得なくなったのにも頷けるわね。アイツを倒すのは相当骨が折れるはず……」


「ふぅむ。実際問題、打つ手はあるんですの?」


 あの亀はほぼ無敵なのでございましょう?


 瞬く間に胞子を身にまとわれてしまってはこちらとしてはもう打つ手がありませんもの。



 私の問いかけに、最初にスピカさんが目をお逸らしなさいましたの。


 彼女もまた悔しそうにお腰の剣柄を握りしめていらっしゃるようでした。


 私以上に無力感を感じてしまっているのかもしれません。


 今の私の浄化魔法ではこれ以上おチカラになれそうにありませんゆえ、優しいお声をかけてさしあげられないのがまた悔しいのでございます。



 ……しかしながら、でしたの。



「もちろん全く無いとは言わないわよ」


「はえっ!?」


「そうなのっ!?」


「つってもこの三人のうち、誰か一人でもミスったら即アウトの方法なんだけど。何度も言うけど、アタシはあんな魔物は放っとくことをオススメするわね」


 さ、さすがはミントさんですの。


 ただ漠然と私の奮闘する姿を眺めていたわけではなかったようです。


 しっかりと頭の中で作戦を構築してくださっていらっしゃいましたの!


 放っておくのがオススメですって!?

 はんっ。ハナから選択肢にありませんのっ。


 このままおめおめと横を通り過ぎて背中を見せて逃げ出すだけでは聖女の名が廃れてしまいますからね。


 ナメられたら終わりなのです。

 舐め舐めするのは私からだけで充分ですのっ。


 あの亀に、せめて一矢報いてみせたく思うのです……!


 バッチリと頷きを返しつつ、決意に満ち溢れた目で真摯にお伝えさせていただきます。



「どんな方法でも構いませんの。教えてくださいまし。元より聞くことだけならタダなんですわよね!?」


「私も私もっ! 私にできることなら何でもするよ! 見てるだけって悔しかったしっ!」


 ふふふ。スピカさんも乗り気なようでありがたい限りですの。


 三人で協力して、目の前の困難を退けてさしあげましょうよ。


 私たちならヤってヤれないことはないと思いますの!



「……ハァ。アンタらもホント物好きよね。分かったわよ」


 私たちの意欲に押されたのか、ミントさんは溜め息混じりにそうお呟きなさいますと、そのまま静かにしゃがみ込みなさいましたの。


 どうやら地面に文字と絵を描いて教えてくださるようです。


 ……あら、意外に丸っこい字を書かれるんですのね。可愛らしい一面もあるようでっ。



「それじゃあいいかしら? まずはアタシの考察から展開させてもらうわね。それを踏まえないと作戦を理解できないと思うから――」




――――――

――――


――


 

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