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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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ふふっ。友好の証、ですか。

 

 ゴブリンさんが取り出したのは、えっと……ソレは何ですの?


 石製の、うーんと……えっと……。


 そのまま手渡されてしまいましたので素直に受け取ってさしあげます。


 指で摘み上げて、眼前でまじまじと観察させていただきましたの。


 おそらくはアクセサリーみたいなモノなのでしょうか。


 どうやら太さと大きさの異なる輪っかが三つ連なっているようでして、振ってみればカラカラと乾いた音が鳴り響きます。


 もちろんのこと石は金属と違って割れたらくっ付きませんから、元々は一本だった石塊を削ったり彫ったりして、こんな手の込んだ鎖状に仕立てられたのかと思われます。


 繊細かつ緻密な職人芸が成せるモノですの。


 ド素人の私にだって分かってしまうくらいに、大変な手作業だと思いますの。



「あの、もしや、私たちに?」


「アア。受ケ取ッテモラエルト嬉シイ。我ラ氏族カラノ友好ト感謝ノ印ダ」


「あら、どうもありがとうございますの。謹んで頂戴いたしますの」


 ぺこりと頭を下げて微笑んでさしあげますと、彼もまた優しげに微笑んでくださったように見えました。


 お隣のスピカさんが興味津々な瞳になっていらっしゃいましたので、ひょいと手渡してお見せいたします。


 本当に子供のようなキラキラとした目ですわね。

 まったく可愛らしい方ですの。



「ゴブリンさんが友好の証としてプレゼントしてくれるそうで」


「はぇーっ。すっごいねぇコレ。作るの結構大変だと思うよ!? こんな形ぃ!」


 ほほう。スピカさんも分かるクチなんですのね。

 私も何故だか無性にロマンを感じてしまいますもの。


 石製だからこそなお良しなのでございます。


 もちろんキラキラとした宝石やギラギラした金銀財宝類に憧れこそありますが、こういった手巧を凝らしたモノにも別の趣きがあると思うのです。


 素材特有の温かみと言いますか、素朴なお守り感と言いますか。


 ゴブリンさんらしい自然なアクセサリーだからこそ妙に納得できてしまったのです。



 彼が静かにお続けなさいます。



「……正直ニ言ッテ、オ前ラノ仲介ガ無ケレバ、我ラノ生活ニコンナ平穏ガ訪レルコトハ無カッタダロウ。

ホラ。皆ノ顔ヲ見テヤッテクレ。大人モ子供モ活キ活キトシテイル。コノ調子ナラ、今後モ上手イコトヤッテイケルダロウ」


「ええ。私たちもアナタ方のご活躍を楽しみにしておりますの。

もしも悪いコトをし始めなさいましたら、すぐに町のほうに連絡して討伐隊を要請いたしますからそのおつもりで。ご覚悟のほどはよろしくて?」


「ハハハ、勘弁シテクレ。セッカク夜モ安心シテ眠レルヨウニナッタンダ」


 言葉の分からない村長さんとスピカさんがキョトンとなさっていらっしゃいましたが、私の冗談から内容を察してくださったのか、同じくニコニコしていてくださいました。


 あとで会話の要約をお伝えさせていただきますの。


 この村から出発するときも、聖女は聖女らしくありがたぁい言葉を沢山残してから立ち去らせていただきましょう。



 種族を超えた交流……共に歩む平和……。



 ある意味では、この村の在り方はスピカさんと私が目指す理想の姿なのかもしれません。


 今はまだお互いに距離感を測っていらっしゃる最中かと思いますが、長く付き合っていけばいくほど、より気兼ねなく過ごしていけるような関係になれるかと思いますの。


 皆さまの働きぶりに関しては何の憂いもございません。


 むしろ次なる課題は町に出稼ぎに行っている殿方勢が戻ってきたときかもしれませんわね。


 全力で相互理解に努めてくださいまし。


 その頃にはもう私たちは村におりません。

 第三者によるフォローはできないのでございます。


 ゆえに陰ながら応援しておりましてよ。


 たまーにこの石輪のアクセサリーを眺めては、遠く離れた地から思いを馳せさせていただければと思います。




 ……それにしても。


 ゴブリンさんお手製のアクセサリーですか。

 まず間違いなくレアモノだと思われますの。


 きっと持っているのは世界でも私たちくらいのはずでしょう。

 


「……こっほん。ちなみにお一つ質問よろしくて? とっても下世話なお話なんですけれども」


「ナンダ?」


 こっそり耳打ちして確認させていただきます。



「こちら、もしかしなくともめちゃんこにお高いシロモノなのではございませんでして? 随分と手の込んだ仕上げが施されておりますし。一日やそこらで造れそうなモノでもないと思いますの。実際、おいくらくらいなんですの?」


「フッ。変ニ期待シテイルトコロ悪イガ、所詮ハ山ノ岩ヲ切リ出シテ磨イタダケノ粗末ナモノダ。森ノ薬草ノ方ガマダ価値ガ有ルダロウヨ」


「むっ。それは……残念でなりませんの。あ、いえ、深い意味はなく」


 職人ゴブリンさんは実に自嘲気味に、しかしながらどこか得意げにお笑いなさいました。


 まるで望みとあらば何個でも作ってやろうと言いたげなご表情です。本当に嘘偽りのない素直なお言葉だったのでしょう。


 きっとこれから、村人の皆さまにも同じモノをプレゼントしていくんでしょうね。


 互いの思いを繋ぐ意を込めた、輪っかのアクセサリーを。



 ……ふふっ。友好の証、ですか。


 私、こういうの、嫌いじゃないですの。



「でも安心いたしましてよ。高価でなければ質屋にも預けられない(・・・・・・)ってことですもんね。せいぜい責任を持って大切にさせていただきますの」


 スピカさんから受け取り直しまして、そっと懐にしまいます。


 あくまでお財布事情が究極的に厳しくなったときに最後の手段に使えるかもと一瞬脳裏を過ぎっただけですの。


 本気になさらないでくださいまし。


 と言いますか、他人様からご厚意でいただいたモノを平気で売り飛ばすだなんて、そんな非人道的な行為……。


 女神様も私も是とするわけがございません。


 これでも人並みの正義感は有しているつもりですっ。



「ゴブリンさん。そして村長さん。どうか末永く仲良くよろしくお願いいたしますの。またこの村に立ち寄れた際には今よりももっと美味しいパンをたくさんご馳走してくださいまし。それまで毎日お腹を減らしておきますゆえに」


 私の問いかけに、お二人ともこっくりと大きく頷いてくださいました。


 今はそれだけで充分なのでごさいます。

 私もまたにっこりと微笑みを返させていただきました。



 私たちの旅の第一イベント。

 平和的に終わって何よりでしたわね。


 今後ともこういうほっこりエピソードが続くことを女神様に祈っております。


 また面倒事に巻き込まれたときは、そのときはそのときに考えればいいだけですのっ。


 今はただ、閉じた目の奥に一面の黄金色の小麦畑を想像しつつ、ゆったりとした時の流れを楽しませていただくだけなのでございます――






――――――

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――

 

 


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