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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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いかに未発育でロリロリで愛らしいかを

  

 人とゴブリンとの交流に際して、何よりも大きな障害となるのが言葉の壁でしたの。


 両者共々その点に疑念があったようで、どちらからともなくイの一番に議題に挙がったのでございます。


 早速ながら状況を整理させていただきましたの。


 ゴブリンさん方は私たち人間の言語を理解してくださっているようですが、その逆、私たち人間にはゴブリンの言葉を聞き分けることができません。


 おそらく私以外の方々には全部キーキーという鳴き声にしか聞こえていないはずです。


 こちら、解消できる術は二つほどございます。


 耳がダメなら〝目〟を使えばよろしいのです。


 つまりはボディランゲージを用いた是否の応答と、それを補足する絵や文字を用いた応答、いずれも〝視覚〟に重きを置いたコミニュケーションを行えば、大抵の意思の疎通は可能になるのでございます。


 そしてまた、基本的にお声掛けをするのは人間側で構いません。


 その要求に対してゴブリンさん方は、真っ先にマルかバツかで簡潔にお答えくださいまし。


 回答を絞ることによってやりとりの簡略化を図りますの。

 余計な考察の余地を含める必要もありませんの。


 その後にもしサンカクな内容があれば、その際に初めて補足として絵や文字を用いてご説明くださいまし。


 さすがに種族間の差はあっても、お互いのお顔を見れば何となくの喜怒哀楽くらいは分かりますでしょう?


 モノは試しですの。

 ほらほら早速チャレンジしてみてくださいまし、と。


 初めは半信半疑な皆さまではございましたが、言われてみればとご納得いただけた方、実際にやってみて有用性に気付かれた方。わりかし大勢いらっしゃったようです。


 もちろん補足の絵描きのほうも見ていただきましたの。


 この辺はラッキーでしたわね。


 職人ゴブリンさんの描く絵が意外なほどに鮮明かつ正確で分かりやすかったことから、人間側もわりとすんなりとご理解いただけたのでございます。


 建築関係の職人さんなら図面が書けますものね。

 簡単な絵ならもっと素早くイケるかと思われます。



 というわけで最初の難題、クリアーいたしましたの。



 続きまして、話題は文化のちがいについてに移りました。


 種族的に絶対に譲れない信仰があったり、ヒトとは異なる嗜好があったりするか、などなどですの。


 この部分に関しては私も知らないことが沢山ありましたのゆえ、通訳の私を介して多くの質問をし合いましたの。


 途中、結構ナイーブな話題にも触れたのですけれども。


 ゴブリンの生殖本能についてを村の女衆が気にされておりましたわね。確かに村の治安を守る為には必要不可欠な情報だとも思いますの。


 それにっ。私も個人的に興味がありましたしっ。


 確かにか弱い村娘が彼らに組み倒されてしまっては、たとえ体格差があっても太刀打ちできませんものね。


 守る側と襲う側の差ですの。

 どこの世界だって攻める方が圧倒的に有利なのです。



 ……ぅおっほん。



 しかしながら、結論から先に言えば全て杞憂に終わりましたの。


 ゴブリンさん方曰く、人間の娘は基本的に彼らの守備範囲外(・・・・・)とのことらしいのです。


 一応、交配も可能と言えば可能だそうですが、そもそも私たちの身体は彼らの好みとは真反対の位置にあるらしく。


 と言いますのも、人間は身長が高すぎる、かつ、同種と比べて発育が良すぎるのだそうですの。


 試しに私がうっふんと誘惑をしてみましたが「オ前ノヨウナ巨女ナド論外ダ」と即座に拒否されてしまいました。


 うぅぅっ。正直とても悲しかったですの。

 こんなところでお預けを食らってしまうだなんてぇ……。



 ……はっ!?


 そ、そうであるならばスピカさんでは……ッ!?


 と横目に視線でアピールしてみたところ、どうやらあの超絶スレンダー体型さんでも普通にアウトなのだそうですの。


 それでも納得がいきませんでしたので、スピカさんの身体がいかに未発育でロリロリで愛らしいかを口から火が出るほどに熱弁してさしあげようと試みたのですけれども。


 いざ口を開こうとした瞬間に、顔のすぐ横を草刈り用の鎌が通り抜けていきましたの。


 私自慢の白金髪が数本宙を舞い散ったのが見てとれました。

 み、身の毛もよだつほどの恐怖も感じてしまいましたの。


 まさか足元の農具をノーモーションで拾い上げては、目にも止まらぬ早さで私目掛けて投げ付けなさったんでして……?


 スピカさん……お、恐ろしい子……っ!


 彼女の凍り付いた微笑みがとても怖かったです。

 ええ、ええ。とっても、とっても怖かったですの。


 

 こっほん。というわけで軽くまとめますと、ゴブリンさん方にとっては同種のメスが一番お好みなのだそうです。


 そしてまた、このゴブリンさんの集団にはメスのゴブリンさんがそこそこにいらっしゃいます。


 つまり現状は全くと言っていいほど色恋(・・)には困っていないらしいのでございます。


 更にもう一言付け加えさせていただければ、ゴブリンさんにも人間の子供と大人の違いくらいは分かるようで、能力(・・)が未発達な状態の者に手を出すこともあり得ないのだそうです。


 いやはや紳士な皆さんで安心いたしましたの。

 そして真っ直ぐさにおみそれいたしましたの。


 ……また、少しだけ勿体なくも思ってしまいましたの。


 もしやソッチの行為に刺激を求めているのは私たち人間だけなのでしょうか……。


 独りこっそり、そしてちょっぴり寂しくなってしまいます。


 いやはや私の運命の殿方はどちらで見つかるのでしょうね。


 実際問題、別に人間だけにこだわっているわけでもございませんし、いつかは最高にピッタリな方が現れてくださればよろしいんですけれども。



 ……さて、私の話は今は別にいいのです。


 今の流れのような感じに、お互いの不明瞭な点があれば一つ一つ綺麗に潰していく形で、議論は終始前向きな方向へと進んでいきました。


 そのうちに重要な話題に入りましたの。

 ゴブリンさんの具体的なお仕事や役割についてです。


 彼らには何ができるのか。

 どこまでご担当なさるのか。

 そもそも村の中に立ち入るのかどうか。


 結論、それらはこれからの数日間で実作業を通して見極めていこうというお話にまとまりましたの。


 つまりは〝研修期間〟を用意するというわけです。


 まずは普段のお仕事のお手伝いをしていくところから始めるといった段取りをいたしまして。


 早速明日から諸々作業をお願いしてみるとのことです。


 さすがに立ち会いのみの私たちも「さぁてこれで仲良くなれましたわねー。それじゃ後はよろしくですのー」なんて無責任なことはできませんし。


 もし私たちが村から立ち去った後に事件や問題が発生してしまっては元も子もありませんし。


 今後も両者が無事に仲良くできそうかどうか、第三者の視点からも見極める必要があるみたいなのです。



 ……くっ。


 本当は言いたくありませんでしたけれども。

 もちろんのことコレはボランティアなんですの。


 決して誰かからお給料をいただくために通訳役や監督業をかって出ているわけではないのです。


 村に滞在すると決めてから今日に至るまで、全て勇者と聖女の名を浸透させるための慈善活動として、ほぼ身銭を切って行動しているも同然です。


 ということはつまり、両者の関係の良化を見届ければ見届けるほど、言い換えればこの村に滞在すればするほど、私たちの宿泊費用がかさんでしまうのでございます……っ!



「…………はぁ。ほんわか温まっていく心とは裏腹に、お財布周りはじわじわと冷たく寂しくなっていきますわね」


「まぁまぁ。それでも初っ端の活動としては上々なんじゃない? だって誰も傷付いてないんだしっ! この調子でドンドンとイイことを重ねていこうよっ!」


「はぁぁあーっ……スピカさんは楽観的で羨ましいですのーっ。さすが元気っ子野生児さんはつよつよメンタルですことぉ」


 スピカさんって、食べるモノも買えなくなったら、それこそ辺りの道草をむしり取って平気で齧りついちゃいそうな、そんなワイルドさも持ち合わせていらっしゃいますわよね。


 ぬくぬく温室育ちの私には到底無理ですの。

 もっとガッツリ美味しいお肉を食べたいですの。


 修道院の中にいては食べられませんでしたし。

 むしろ旅に出るまでずっとお肉を我慢してまいりましたし。


 ふぅむ? 生臭聖女? まったく失礼な。


 私は常にフローラルな良い香りがいたしましてよ。

 まったくもって臭くなんてないですのっ。

 


 というわけでこのアルバンヌの村にはもうしばらくだけ滞在をいたします。


 さすがに雑貨屋さんにお肉は売ってないみたいですので、代わりに特産品のパンをいただこうと思っておりますの。もぐもぐもぐ。

 

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