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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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お付き合いの基本は真っ裸なのです



 そうして迎えた面会、当日。


 当人たち以上にガチガチに緊張しまくっているスピカさんと共に、森の中のゴブリンさんご一行をお迎えに伺いました。


 どうやら彼らなりに身なりを整えられたようで、ボロ布の切れ端ながらキチンと衣服と分かるモノを纏っていらっしゃいましたの。とても文化的で素敵ですわね。


 いつも以上に挙動と態度に注意しながら移動して、村の入り口に構えられたテントの中へと入りましたの。


 中には村長さんを始め、各家の代表者様方が皆、鋭めの農具を持って静かに待っていらしたのでございます。


 入ってきたゴブリンたちの姿を見るや否や、一斉に手に持つ得物を握り締める力を強めたのが側から見ても分かりましたの。


 ほほぉう? なるほどなるほど。


 話の流れによっては出るとこ出す(・・・・・・)おつもりなんですのね?


 まったくもう、浅はかですこと。


 アナタ方一般人がその場凌ぎの武器を振るったところで、ほとんど意味を成しませんのに。


 というより農具は農業の為に扱うモノですの。

 誰かを傷付けるための武具ではありませんの。


 おそらくは護身のためのモノだと思われますが、そういう危険物を和議の場に持ち込んだりするから無駄に場がもつれたりするのです。


 恐れるお気持ちは分からないでもないですけれども。


 ただの農民でしかない者がいきなり魔物を目の前にしてしまったんですものね。


 それでも。たとえそうであっても。

 今日の目的は争い事ではありません。


 何度だって言わせていただきますの。

 お付き合いの基本は真っ裸なのです。


 何も持たずの精神でぶつかり合うからこそ、互いの思いや熱意を曝け出せるのでございます。



「こっほん、皆様方。聖女の私自らが立ち会うのです。争い事が起こるわけがございませんの。ですからお手元の得物はしまってくださいまし」


「う、ううむ。とは言ってもなぁ」


 複数人で顔を見合わせては、それぞれ渋めのご表情になられていらっしゃいます。


 確かに丸腰の人間と丸腰の魔物とでは身体能力の差がございますが、それは互いに敵意があればのお話ですの。


 必要以上にビビらないでくださいまし。


 このゴブリンさん方だって、私たちを恐れて渋々に従っているのではないのです。


 いずれ待っているであろう対立の事態や住みにくい未来が訪れないように、あくまで平和的な道を進もうと決心してくださっていらっしゃるのです。


 大の大人ご狼狽えるのはみっともないですわよ。

 そんなんだから村も段々と狭くなっちゃうんですの。


 田畑を広げたいなら心の扉を開きなさいまし。



「あ、あのっ。マズいかなって感じたら勇者の私が動きますから。だからね? ね? ここは一つリリアちゃん(聖女様)の顔を立てるって意味でも、どうか村民の皆さん、ご協力をお願いします」


 状況を見かねたのか、スピカさんがスッとフォローに入ってくださいましたの。私も彼女に合わせてぺっこりと頭を下げさせていただきます。


 スタートとしてはあまりよろしくない状況かもしれませんわね。予想はしておりましたけれども。


 頭を垂らしつつも、ちらりと横目で代表の職人ゴブリンさんの顔色を伺ってみます。


 ……あら、意外に平気そうな感じですの。


 目が合いましたので眉を下げて詫びの気持ちを示しておきます。


 私にしか聞き取れないほど小さなキーキー声で、こっそりとお言葉を返してくださいました。



「……コウイウ扱イニハ慣レテイル。どわーふ族ノ時モソウダッタカラナ」


「なるほど、アナタ方も色々と大変な人生――いえ、魔物生を過ごされていらっしゃるようで。改めて心中をお察しいたしますの」


「気にするな。……デハ、通訳ヲヨロシク頼ム」


「任せてくださいまし。合点承知のスケスケ聖女ですのっ!」


 修道服を脱いだらスゴいんでしてよっ。


 こっそりと軽快なサムズアップを返して差し上げたのち、顔を上げてもう一度村民の皆様一人一人のお顔を見渡します。


 そしてあくまで優しげな顔で微笑んで差し上げます。


 さぁ皆さま、私のことを信じてくださいまし。

 悪いようにはしませんから。


 私だって女神様には怒られたくありませんの。

 真面目かつ全力でやってるつもりですの。



 どうやら私とスピカさんの真摯な説得が聞いたのか、やはり渋々といったご様子ではありましたが、村民の皆さまが手に持った農具を床に置いていってくださいました。


 その様子を見届けてからふぅっと胸を撫で下ろします。


 そしてすぐに咳払いをお一つ挟みます。


 ついでに今日一番のキリッとした顔を見せ付けておいて差し上げますの。



 それでは、遅くなりましたが、改めまして。



「ぅおっほん。本日お集まりのアルバンヌの村の皆さま。そして近隣の森に住むゴブリンの皆さま。これより面会の儀、並びに和平の儀を執り行いたいと存じます。

和平締結の先んじて、まずは両者の胸に秘めた疑念を全て打ち払う必要がございましょう。

どんな些細な内容でも構いません。互いに対して質問がございましたら手を上げてからご発言を――」






――――――

――――


――






 朝早くに始まった和平の儀も、終わる頃には夕方に差し掛かってしまっておりましたの。


 もちろんのこと途中にはお昼休憩が挟まれました。


 私、そこで初めてパンを複数個食べられましたの。


 形も味も多種多様で、全てふわふわもっちりとした舌触りで、素材本来のコク深さが凝縮されていて、けれども外側の焼き目はこんがりと香ばしくてっ……!


 正直和平の儀の内容なんて全部どーでもよくなるくらいに美味しかったですわね。


 おかわりを三回も要求してしまいましたっ。


 村民の皆さまにもゴブリンの皆さまにも、どちらにも白い目で見られてしまったことはここだけのナイショにさせていただきましょうか。


 だって仕方がありませんでしょう。

 お風呂以来の大興奮だったんですもの。


 

 さてさて、余談はこのくらいにしておきまして。

 気を取り直して本日の結果確認とまいりましょうか。


 ご多分に漏れず要約させていただきますの。

 どうか気軽に構えていてくださいまし。

 

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