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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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究極の肉体言語が扱えるってコトですのッ!

 

 今はまだ、お互いに視線で牽制し合うばかりで大きな動きはございません。


 後方で武器を構えているゴブリンたちも、私たちの出方を伺っているのか接近まではしてきませんの。


 外敵の近くに守るべき対象がいるからでしょうか。


 まずは彼らの警戒心を和らげなければ事も上手く運べませんわよね。


 私たち人間の言葉が通じるかは分かりませんが、今は彼らの知能を信じさせてくださいまし。



「……こっほん。勝手にお家に入り込んだことは謝りますの。この通りですの」


 ぺこりと頭を下げさせていただきます。


 果たしてこの行為が謝罪の意と見做していただけるかは正直分かりませんが、無防備な姿をお見せすれば少しは警戒心を解いてくださるかもしれませんし。


 そのまま続けさせていただきます。



「私たちはアナタ方と争いたいわけではございませんの。この中に族長様か、もしくは私の言葉が分かる方はいらっしゃいませんでして? 少しお話をさせていただければと思ってますの!」


 キョロキョロと見渡して差し上げますと、何だか周囲のゴブリンたちがザワザワと声を上げ始めました。


 前方からも後方からも絶え間なくキーキーという鳴き声が聞こえてきてはおりますが、明確に言語と分かるモノはございません。


 ……ふぅむ。


 やっぱり意思疎通までは難しいのでしょうか。


 多少の知能があるとは言っても生きていく上で必要な分だけであって、多種族と交流したり文化を築ける度合いには至っていないのでしょうか。



 と、ほんの少しだけ気分が沈んでしまった、ちょうどそのときでございました。



 武器を構えたオスゴブリンのうちの一匹が集団の前に出てきてくださったのでございます。


 容姿自体は他のゴブリンと何も違いはありませんが、強いていうならば腕の筋肉が少しだけ付いてそうな感じですの。


 屈強な戦士さんか、あるいはこの巣の中では別の役割を持っていらっしゃる方なのか。


 私の素敵殿方センサーがほんの少しだけピクリと反応いたしましたが、振り切れるほどではございません。



「……カンタンナ言葉ナラ、分カル」


「ああっ、それはよかった。通じる方もいらっしゃいましたのね。とりあえず一安心いたしましたの」


 キーキー聞こえる鳴き声の中に、確かに言語と分かる音節がありましたの。


 ここがうるさい環境であれば到底聞き取れなかったでしょうが、集中していれば何とかなりそうです。


 ふっふん。お一つだけ自慢をよろしくて?


 私のような類い稀なるスーパー聖女様ともなれば、一聴では鳴き声にしか聞こえないようなモノであっても、そのご表情や身振り素振りなどから数多の情報を得て、気持ちや言葉を理解することができるのでございますッ!


 つまりは目を見て話せば大抵は通じちゃいますの。


 究極の肉体言語が扱えるってコトですのッ!


 ……本当のことを言えば聖女特有のスキルなんかではなく、物心付いた頃には既に身に付いていた特技みたいなモノなんですけれども。


 実際、子供のときには野生の動物さんと楽しくお喋りしておりましたし。


 私が通じていると思えたらそれでおっけーなのでございます。今まで困ったことは起こっておりませんし。


 強い思い込みは世界を変えるんですのっ。



「リリアちゃん。もしかしてそのゴブリンの言ってること分かるの? さっきからキーキーギーギーしか言ってないと思うんだけど」


「ええ、分かりましてよ。あくまで何となくですけれどね。足りない部分は気合いで何とかいたしますの!」


 終始ぽへーっと感心されたようなお顔をなさっていらっしゃいましたが、私の熱弁に納得してくださったのか、スピカさんはそれ以上は何も仰いませんでした。


 まぁまぁここはお一つお任せくださいまし。


 何かマズい流れと思われたときは、貴女の独断で実力を行使して助けてくださいまし。


 私はそうならないように一心に頑張るだけですの。



 すっくとしゃがみ込んで、前に出てきてくださったゴブリンさんの目線の高さを合わせて差し上げます。


 あくまで対等に、けれども言葉尻優しめに、分かりやすくゆっくりと話しかけておきます。


 まずは当たり障りの無い世間話からですわよね。

 本題に入るのはその後にいたしますの。



「この巣穴、とっても素敵な造りですわよね。壁の塗りもとってもご丁寧でしたし、床も歩き心地がよろしいですの。職人味を感じましてよ」


「……ソノムカシ、どわーふ族に師事シテイタコトガアル。コレハソノ時ノ技術ヲ応用シタモノダ。オレノ一族ダケデ完成サセルノニ、カナリ時間ガ掛カッタガ」


「はぇー。なるほど。それでこんなにも綺麗に」


 そうと聞けば納得の造りだと思いますの。


 土妖精であるドワーフは元来から建築業を生業にされていらっしゃいますものね。王都の土台整備にも携わっていたと耳にしたことがございます。


 彼らは人間と昔から交流のある異種族さんですが、まさかゴブリンさん方ともご交流があったとは。


 いやはや世界は広いようで狭いみたいですの。



「して、こんなにも地下深くにまで巣穴を広げられたのは、やはりご家族の安全のために?」


「……アア。オ前ラノヨウナ奴ラニ見ツカラナイタメニナ。オレタチハ身体ガ小サイ。チカラモ弱イ。イツモ怯エテ暮ラシテイル」


「ううっ。だから勝手に入り込んだのは謝りますって言ってますのー。別に用がなければ忍び込んだりもしませんのーっ」


 目の前の職人ゴブリンさんはこころなしかシュンと意気を消沈させなさっていらっしゃいます。


 けれどもすぐにギッと鋭い目で睨んできましたの。


 対する私は再三に申し訳なさを込めて眉を下げさせていただきます。

 

 気苦労なほどお察しいたしますの。


 こんなにも沢山のご家族がいらっしゃるんですものね。


 育ち盛り食べ盛りなお子さまもいらっしゃれば、杖をつかなければ歩けなそうなご老体だっていらっしゃるのです。


 身の回りの安全を確保しつつ、全員を養っていくのはさぞかし大変なことでしょう。


 ここにいる大黒柱の皆さまには頭が上がりませんの。


 裏表の無い心で、まっすぐにお話を続けさせていただきます。

 

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