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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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カッコ良さというのは

 


「あら。これは……っ」


「結構な大家族みたいだね」


 曲がり角の先には瓢箪(ひょうたん)のような形をしたお部屋が広がっておりました。


 その部屋の隅のほうには、怯えた表情の子供ゴブリンやメスのゴブリンたちや、中には年老いたゴブリンなどが見えておりますの。


 少しでも私たちの視界に映らないように、皆矮小な身体をギリギリまで縮こまらせていたのでございます。



 ……ふぅむ。何でしょう。


 まだ何にもしておりませんのに、これではまるで私たちが生粋の極悪人のようではありませんか。


 いえ、確かに見方を変えてみれば私たちは招かざる客ですの。


 彼らの住居に不法侵入しているとも言えましょう。


 まして稀代の勇者サマが直々に足を運んでいるのです。

 か弱い魔物さんから見たらスピカさんは恐怖の権化だと思いますの。


 少しでも知能のある者が無謀にも立ち向かおうと考えるほど、彼らもお馬鹿さんではないということですか。



 そうなりますと、ふぅむ。


 ちょっと困った状況になっちゃいますの。



「えっと、どうしましょう。もっとこう闇雲に襲い掛かってきてくだされば、私たちだって何も考えずに対処できるのでしょうけれども」


「そうだね……。こうやって真正面から怯えられちゃうとさ。片っ端から討伐してくってのも気が引けちゃうというか」


 ふぅ、と。

 二人して溜め息を吐いてしまいます。


 お相手が魔物だとはいえ、無抵抗の存在を一方的に蹂躙できるような残虐性など私たちは持ち合わせていないつもりです。


 一応、お国の代表として、人として胸を張って生きていきたいと思っているのです。



「悩んでる間にさ。後ろ、追い付かれちゃったみたいだよ」


「あら……つまりは旦那様方のご登場ってことですわね」


 今、私の視界にも入りましたの。 


 振り返って見てみれば、そこそこに筋肉質で、その手には棍棒やら石斧やらを握っていて、深緑色の身体をした小人形の魔物たちが……っ


 図鑑で見た通りの容姿をしていらっしゃいます。

 紛うことなきゴブリンさんたちですわね。


 どうやら目の前のメスゴブリンたちよりも少しだけ大きいようです。


 この地下の最奥部屋にか弱き者たちが集められているということは、私たちの背後から追ってきたのは、それを守ろうとするオスゴブリンたちってことになりますわよね?


 皆一様に威嚇するような険しい表情をなさっておりますが、その瞳の奥にはどこか苦難の色が見え隠れしております。


 対峙しているのが勇者と聖女(わたくしたち)だからでございましょう。



 それでも。たとえ魔物さんであっても。


 残虐非道な人間から、嫁や娘息子を守ろうとするとは、素晴らしい殿方たちではございませんか。


 私は昔から〝カッコいい男〟に弱いのでございます。

 何もカッコ良さというのは容姿だけのお話ではございません。


 それぞれの生き様にこそ惚れの真髄があると思うのです。



 もしもこの状況が全て彼らの作戦であったのなら、私たちは今まさにドツボにハマっている真っ最中だと思われます。


 きっと油断した一瞬の隙を突かれて一気に組み付かれて拘束されて、その後はもう彼らのいいように扱われてしまっていたかもしれません。


 しかしながらそうなるビジョンが少しも見えないのは、お隣のスピカさんの放つ圧倒的なオーラのおかげでしょうか。


 私ならこんな怖いお相手、まともに対峙したくないのでございます。


 きっと彼らも同じようなコトを思っていらっしゃいますでしょう。



「さて。前方には怯えたゴブリンたち。後方には武器を構えたゴブリンたち。きっと全滅させること自体は造作もないと思いますけれども……。本当にどうしましょうね、スピカさん」


「そうだね。リリアちゃんならどうする?

コレってイッチバン最初の分岐点だと思うんだ。

私たちの長旅が、魔王城への道のりが、これからどのようなモノになっていくのか」


「……そう、ですわね。仰る通りだと思いますの」



 今はまだ見習いの身とはいえ、私は一人でも多くの民を幸せに導くために存在する聖女です。


 誰に対してであっても慈愛と博愛の精神をもって生きていきたい所存ですの。


 それに私、別に〝ヒトの世至上主義〟というわけでもございません。


 この世に生きる誰しもが平等に生きる権利を有しているはずです。


 また同じく、皆が共に生きる隣人と思って気持ちよく接していきたい本気でと思っているのでございますっ。


 相手が何々だから討伐しなきゃとか、誰々だから悪者だとか、そういうのは二の次に考えたいんですの。



 私は、私の善性と可能性を信じたいのです……ッ!



「叶うのならば〝共存〟への道を」


 討伐はあくまで最後の手段にいたしましょう。



「おっけ分かった。私はリリアちゃんの意見を尊重するよ」


 

 彼女は優しげな表情のまま腰の小刀から手をお離しなさいました。


 そのまま静かに目を閉じて腕を組んで、私の次の言葉を待っていてくださっているようです。



 ええ、分かっておりますの。


 現状維持ではいけないのでございます。

 何か行動を起こさなければなりません。


 あの村に害が及んでいること自体は事実ですゆえに、どうにかしてゴブリンたちの今後と村の今後、双方のためになるトッテオキの策を思い付かねばならないんでしょうけれども……っ。


 私の知恵と腕と口の魅せどころですわよね。


 なんとかしますの。だって私は聖女ですもの。


 

 

 

 僕はこの物語を温かくて優しいモノにしたいです。


 

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