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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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今回ばかりはお金に糸目はつけませんでしてよッ!

 


 翌日。



 昨日定めましたとおり、今日が出発の予定日です。

 まずは集落の長老様の元にお伺いいたしましたの。


 どなたかをお雇いするにあたって、最低限の言質とご許可をいただいておきませんとね。


 私、長老様には初めてお会いいたしましたが、見た感じではヨボヨボのお爺ちゃんエルフ族さんでしたの。


 長くて真っ白いお髭がとっても凛々しいお方でしたが、さすがの私でも彼は殿方ずっきゅんラインからは外れていらっしゃいます。


 御歳はおいくつなのでございましょう。


 長命種でこの見た目になるには途方もない年月が必要になるかと思いますの。


 ほら、亀の甲より歳の功、とも言いますでしょう?

 恋愛対象でなくとも尊敬はできましてよ。


 とりあえず恋するイチ乙女としてではなく、一国の代表(聖女)として改めてご挨拶申し上げてみたのでございます。


 手短に本日中にこの地を去る旨と、ツリーハウスをお借りしたお礼をお伝えしてみましたの。


 長老様も数日の間私を牢屋に閉じ込めてしまったことを申し訳なく思っていらしたのか、面と面を合わせるや否や、早々に頭を下げてくださいましたの。


 ふっふんっ。

 どうやら私を試されていらっしゃるようで。

 ここは寛大な心で許してさしあげましょう。


 その後軽くお話を伺った感じでは、旅人の身分確認に関してはここ数年に始めたのではなく、それこそウン十年ウン百年も前から代々行ってきているとのことでしたの。


 そういうしきたり(・・・・)なのであれば私だって特に文句は言いません。


 私は物分かりのよいオトナですもの。


 そしてまた、この大森林で道案内役を雇うのも私たちの好きにしてよいとのご許可もいただけましたゆえ、晴れて集落の中で好きにお声がけできるようになったのでございます。


 どうやら今は狩りや収穫の閑散シーズンらしく、

 まとまった時間のあるエルフ族が多いらしく。


 もちろん報酬次第にはなってしまいましょうが、中には私たちに協力してくださる方もいるだろうとのことでしたの。


 これはイイことを聞けましたわね。

 薄暗い大森林にも光が差し込み始めた気がいたします。



 ちなみに、去り際には長老様から新しい身分証明の品も頂戴できましたの。


 こちらは……ふぅむ。


 葉っぱの紋様が描かれた、木製の彫り飾りでしょうか。手のひらサイズの可愛らしい小物ですの。


 目を凝らして見てみれば、底面にはヒト語と異なる紐みたいな文字が刻まれておりました。


 おそらくはこの集落を示す証なのだと思われます。


 大森林の中での通行手形として使えたらありがたい限りですわねぇ。


 ただでさえ〝反・魔王派〟の影が忍び寄りつつあるのですし……!


 また理由もなく捕らえられてしまったらたまったものではありませんもの。



「よっしっ。それじゃあ早速、なんか暇してそうな人に声かけてみよっか」


「そんな適当加減でよろしいんですの?」


「あっはは冗談冗談。今回はこっちが雇用主になるわけだからね。しっかりと見定めておかないと。そう考えると、冒険者ギルドってやっぱり便利だったんだなぁって」


「……ふぅむ。それは確かに、ですの」


 面倒な手続きとか信頼関係とか、そういうのを一括で管理してくださっていたゆえに、利用者目線でも時間短縮のメリットになっていたわけですわよね。


 全て個人でこなすのには限界がありますの。

 無くして初めて分かる文明のありがたさ、ですの。


 なんだかんだ言っても私は文明社会から外れては生きていけない気がしております。


 自然の摂理に沿った暮らしも悪くはないと思いますけれども、美容液もシャンプーもリンスもない暮らしだなんて……今はもう考えられませんもの……。


 あ、でも。

 植物由来の身体に優しい製品は好きでしてよ。

 それとコレとは話がまったくの別モノですの。



 まぁ、とにもかくにも。


 私たち二人と相性のよさそうな、なおかつ素敵な道案内役エルフ族さんを見つけるべく、これよりお声掛けタイムをスタートさせていただきますのッ!


 是非ともお昼前には確定させておきたいですわねッ!


 今回ばかりはお金に糸目はつけませんでしてよッ!





――――――

――――


――


 




「……うそですの……お声掛け全滅ですの……?」


「いやー、さすがは排他的なエルフ族というべきか、私たちの目論見が甘かったというべきかぁ……」



 あのー。えっと。マジですの?

 お一つ困ったことになってしまいました。


 昼過ぎまで粘ってみましたが、誰も私たちのお話のさわり(・・・)さえ聞いてくださらなかったのでございます。


 まさか長老様は楽観的な嘘を仰いましたの?


 閑散期でも協力してくれる方なんていないじゃありませんのっ!


 別に私たちがケチったわけでもないのです。

 結構なお金をチラつかせても無理だったのですっ!


 まるで私たちを汚いモノでも見るかのように、とにかく首を横に振るばかりで、取り合ってもくださいませんでしたの……ッ!


 今日は早朝から集落の中を歩き回りましたゆえに、息も絶え絶え、足もガクガク、本日中の出発さえも怪しい気がしてきたくらいなんですのっ。


 集落の出入り口付近にてぐでーんとしてしまう私たちなのでございます。


 向こう側に見える森の木々がいつもよりも大きく高く見えてしまいます……。


 チラり横を見てスピカさんのお顔を見てみますと、コレは困ったなぁと言わんばかりの苦笑いを浮かべていらっしゃいましたの。


 彼女にとっても完全に想定外だったのでございましょう。



「……早くも足が棒のようですのー……」


「うーん。どうしよっか。ちょっとカッコ悪いかもだけど、もう一日だけ泊まらせてもらう?」


「そうですわねぇ。夕方から森の中を彷徨うのも危険ですし。正直背に腹は変えられないと思いま――」



 つい諦めの言葉を呟きかけてしまった、そのときでしたの!



「――お二方、どうやらお困りのようですね〜」



 何日か前に聞いたことのあるお声が、この耳に届いてきたのでございますッ!?

 

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