表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/68

第4話 目指せ最強の、

「…え、えっと…そのー…」


「……………」


「…だ、大丈夫ですよ、なんとかなります!」


「いや無理だろ」


「ちょっと先輩!!」


 訓練所から更に三日後。

 俺たちは訓練所での最終レッスンを終え、近くのレストランで昼食を摂っていた。

 基礎知識は一通り教え終わり、あとは実践経験を積んで慣れていくだけだ。

 干渉力順応力共に高く、優秀なスキルを持ち社交的なチヅルならば問題なくすぐに活躍する……はず、なのだが。


「まさか、攻撃がクソザコとはな…」


「そんな言い方しちゃだめですってば!」


「…どうも、クソザコです」


「チヅルちゃん自信持って!」



 この三日間、俺とリリィはチヅルに力の扱い方、攻撃の仕方やスキルの使い方なんかを教えていた。

 

 夢の世界において、最も重要なのは想像力。

 銃ならば引き金を引く感触や弾が出る衝撃、撃った弾が対象を撃ち抜く威力。

 剣ならばその重さや斬れ味…肉を斬る感触、鋭さ。

 それが現実的に正しいものかは別として、自分がそれを扱い、対象を破壊するイメージをしっかりと鮮明に行う必要がある。


 魔法はより複雑で難しい。

 魔法が放たれるまでのエネルギーはどこに集まるのか。指先か、手のひらか、それとも魔法陣が現れるのか。


 炎ならば敵を焼く熱さ。

 氷ならば敵を凍てつかせる冷たさを。


 もしも魔法を生み出し、放つイメージまでは出来たとしても、それが対象にダメージを与えるものだというイメージが持てなければ、見かけだけ派手なダメージゼロの、とても攻撃とは呼べないものになってしまう。

 

 チヅルの攻撃はまさにそれなのだ。


 銃を持てば弾は飛ばせる。

 剣を持てば軽々と扱い、斬撃だって放てる。

 杖や魔法書を持てば巨大な炎の球や氷の柱を生み出せる。


 しかし、それでも練習用の的に擦り傷一つ付けられないのだ。

 よほどお人好しなのか、それとも臆病なのか。チヅルは何かを破壊したり、傷付けるイメージを全く持つことができない人間…というのが、この三日間での結論だった。


「干渉力SSなら、訓練所を半壊…なんて事例もあるくらいの破壊力を出せるもんだ。

 どれだけイメージが下手でも、訓練所にある初心者用の武器シリーズなら、的くらいは壊せる」


「確かに…こんなにダメージを出せない人は干渉力DやEレベルでも滅多にいません、というか…見たことないですね」


「うぐ…っ、…努力はしてるんですけど…」


 そう言ってシュン…と縮こまるチヅルを見ると若干心が痛む。

 確かに、本人は真面目に取り組んでいたし、この三日間はなんとか攻撃を成功させようと必死に努力をしていた。

 だがどうしても駄目なのだ。

 ダメージを与える以外は全て完璧…炎の熱さや氷の冷たさも感じたし、放つまでの時間も殆ど掛かっていないというのに。


「……まあ、こればっかりは元々の性格、精神性もあるから仕方ねえよ」


「そうですよ、チヅルちゃんがそれだけ優しい人ってことなんですから!」


 リリィの言う通り、きっとチヅルは物凄く優しい性格なのだろう。

 攻撃は全く駄目だが、回復やバフ系の魔法は全て高威力、広範囲の高水準で完璧に扱えていた。


「…ま、攻撃ができなくてもお前は回復や支援ができるんだ、ならサポーターとして活躍すりゃいい」


「サポーター…ですか?」


「お前は干渉力SS、順応力90%以上…つまりステータスは最高クラスだ。アタッカーにはなれなくても、サポーターとして極めりゃ十分活躍できるし、重宝される」


「順応力が高いサポーターって貴重なんですよ?順応力が高い人達は危険な区域に挑みますから、サポーターは絶対必要になりますし」


 実際リリィも順応力の高いサポーターの一人だ。

 攻撃だけが全てじゃないのだから、落ち込む必要はあまりないだろう。まあ流石にここまで攻撃が苦手な奴はいないと思うが。


 とにかく、ただでさえ知らない世界で不安な事が多いのだから。

 ここで元気を無くされては困る…というか、どうせなら明るく前向きでいてほしいという親心のようなものから、俺はらしくもなく励ましの言葉をかける。


「…なるほど、……うん、…最強のサポーターになって、皆に私を巡って争ってもらうのも悪くないですね」


 はっはっはっ、やっぱお前暫くしおらしく落ち込んでろ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ