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第3話 俺のスキルだって負けてねえから!!

この世界の名前は夢想郷レヴァリス。

 夢と現実の狭間の世界であり、夢と現実の均衡を保ち、管理する者達…つまり我々クレセントの本拠地である。

 半分夢の世界であるレヴァリスでは、現実以上に様々な娯楽が楽しめる。

 

 見たこともない食べ物や、幻想的な街並み。

 現実では体験できないアトラクションやゲームを楽しんだり。

 どこまでも広く長い廊下が続く、巨大なショッピングモールで一日中ショッピングを楽しんだり。


「まあ、食事や遊び…この世界で暮らしていくにはお金が必要になります。

だから、お金を稼いで遊ぶために、我々クレセント隊員は任務や依頼をこなしてるんですよ!」


「…なるほど、いくら夢の世界だとしても半分は現実。

 夢が見たいなら金を払え、汗水流して稼げやコラ、…ってわけですか」


 出会った日から二日後。

 噴水広場のベンチにて。

 

 えっへん、と得意げな顔でレヴァリスについての知識を教えるリリィ。

 チヅルは頷きながら、買ってもらった星空のようにキラキラ輝く星色フラペチーノを、マスクの下にストローを突っ込み飲んでいる。

 ちなみに金は何故か俺が払わされた、納得がいかない。


「お金がある限り、この世界はまさに理想郷です!可愛いお洋服を買ったり、美味しい食べ物を食べたり、お洒落なインテリアを揃えたり…あ、でも武器や回復アイテム用のお金は残しておいたほうが良いですよ!」


 そう、あくまで俺たちの役目は任務をこなすこと。しかし遊びに金を使い過ぎてしまい、回復アイテムを買う金すら残せない奴も案外いるのだ。


「けどチヅルはお前みたいに無駄遣いしないだろ」


「ぐうたら寝てばかりで折角の生活を楽しまない先輩には言われたくないですーっ!」


「うるせえな!歳取ると遊ぶのにも気力がいるんだよ!!」


「…新人挟んで夫婦喧嘩しないでください」


「夫婦じゃねえよ!!」


 2日間ですっかり話せるくらいには口元の傷が回復したチヅルは、話してみると案外気さくで接しやすい性格だった。

 最初こそ遠慮がちではあったが、今ではリリィと共に、俺に飯やらスイーツやらを奢れとせがんでくるくらいにはやかましくなった。

 それなりに気を許してくれているのが分かるその様子にリリィはとても喜んでおり、大層可愛がっているのだが…、そのせいで俺に対しては当たりが強くなっている気がする。

 まあ、それがなくてもリリィは常に生意気な後輩だが。


「とりあえず、それ飲んだら訓練所に行くぞ。今日からはクレセント隊員としての最低限の知識を教えてやる」


 この二日間でチヅルの服やインテリア、日常品を買い込んだり、街を案内したりして、この世界で生活するのに困らない程度の知識は与えた。

 だから今日からは、隊員として活動していくために必要な知識を教えていくつもりだ。


「終わったら一緒に美味しいランチ食べて、お買い物行きましょうね!」


「ありがとうございます、リリィ先輩。頑張ります」


「…まさかそれ俺も一緒か?」


「当たり前じゃないですか!誰がお金出すと思ってるんですか〜?」


「ごちになりまーす」


 こ、こいつら…。




_____________________________________




「という訳で、ここが訓練所です!ここでは新人達が基礎知識を学べる他、色々な武器の練習をしたり、シミュレーターを使って様々なシチュエーションでの特訓ができますよ!」


 訓練所の受付で指定された番号の部屋に入ると、ドームのような広い空間に繋がる。

 その広さに驚いたようで、チヅルは目を丸くして辺りを見回している。


「わあ…凄く広いですね、サッカーとか野球のスタジアムみたい」


「広いだろ、レヴァリスは半分夢の世界だからな、一見狭そうな部屋でも入ってみりゃとんでもなく広い…なんてのはよくある事だ」


「ここにあるタブレットで好きな空間にできますよ!例えば明るさを変えたり、障害物を置いたり…あとは森の中とか海にすることも出来るので、どんなシチュエーションでも対応可能です!」


「夢の世界ってのは数えきれないほど存在してるからな、どんな状況でも対応できるように練習したほうが良い」


「なんだか夢の世界というより、近未来って感じのシステムですね…分かりました、覚えておきます」


 とはいえ今日は戦闘訓練をするために来たわけではないのだが。


「詳しい説明はまた明日するが、とりあえず今日はお前のステータスとスキルを調べるぞ」


「…ステータス?スキル?…なんだかまるでゲームみたいな…」


「ああ、お前ゲームは好きか?大雑把なシステムはよくあるゲームシステムと変わらないんだが」



 まず、ゲームにおけるステータスといえば、例えば攻撃力や防御力、素早さやら…まあ大体そういうのが一般的だ。

 対して、この世界におけるステータスは2つだけ。


 夢の世界にどれだけ干渉出来るかのステータス、"干渉力"

 夢の世界にどれだけ順応出来るかのステータス、"順応力"


 干渉力ってのは、簡単に言えば攻撃力や魔力のようなもの。

 どれだけ夢の中のものに影響を与えられるかを表している。

夢の中の建物を壊したり、夢の中の住人である怪物メアを倒したり。

 そういう、自分以外の周囲のものに何かしら影響を与える、干渉する力。

 これが高いやつほど強力な攻撃を放てるし、攻撃の射程範囲も広くなる。


 

 そして順応力。

 これは夢の中でどれだけちゃんと動けるか、どれくらいの深さまでいけるかを表すステータスだ。

 夢には海みたいに深さって概念がある。夢境域っていうんだが。

 0%〜100%まであって、深くなればなるほど強力なメアに遭遇しやすくなる上に、俺たち隊員は身体を動かしにくくなる。

 よく、全力で走っているのに水の中にいるみたいに全然進めない夢なんかを経験する奴がいるが、あれなんかが分かりやすい例だ。自分の順応力より深いところでは、自分が思うように動けなくなる。

 干渉力がどんなに高くて強い奴でも、自分の順応力以上の深さでは途端に戦えなくなっちまう。

 だから干渉力の数値は、自分がどの深さまでなら不自由なく動けるかを表しているのだ。



「…なるほど、少し難しいですけどなんとなく分かりました」


「まあ、その辺は実際に任務に出れば分かってくるから、今は何となく分かっておけば良い」


「深い場所での任務ほど高い報酬をもらえるんですよ!もちろん危険度も高いですけど」


「んで、最後にスキルの話だな」


 

 スキルは干渉力、順応力とは関係なく、誰しも1つは持っている能力だ。

 まあこれはゲームとかと全く同じだから特に説明はいらなそうだが…。

 

 夢の中での攻撃は、自分の想像力、空想などを具現化して行うものだ。先程言ったように火力や範囲は"干渉力"依存。


 だが、スキルは効果の強さが干渉力で決まらない。

 もちろん干渉力が高いと効果を増すものもあるが、大抵は干渉力は関係なく効果を発揮してくれる。

 スキルとして多いのが肉体強化など、身体能力を上げる効果のものだが、珍しいスキルも沢山あるため、自分独自の強みにできる。


「ちなみに、私のスキルは回復系魔法の強化です!」


「で、俺のスキルは鑑定だ。

人の強さを見たり、メアや世界そのもののステータスも見れる。だから俺は夢の世界の下見をして、強い個体がいるかを調査する任務を任されることが多いな」


「鑑定スキルはすっごく希少なんですよ!研究所での検査以上に正確で…現地調査でも、危険度を数値として見ることで危機を回避したり、安全なルートを把握することができます。

だから新人さんの教育はムトさんが担当することが多いんです!」


「へえ…鑑定スキル…、意外に貴重な人材ですね、ムトさん」


 なんでリリィは鑑定スキル持ってる俺本人より得意げなんだよ。

 そして意外とはなんだチヅル。


「まあそういう事だ。というわけで、今からお前のステータスを見させてもらうぞ」


「いやん、変なもの見ないでください破廉恥な」


 こいつ割と腹立つ性格してんな…。

 軽くデコピンを喰らわせてやれば、ぐあっ、と額を抑え大袈裟に痛がるフリをしやがる。

 うわあ暴力最低です、なんてリリィの声が聞こえてくるが、どちらも無視しておこう。


「そんじゃ、ステータスを…っと」


 意識を集中させ、チヅルの全身から出ている力の気配を一箇所に集めるイメージを。

 そうすればいつも通り、自分の目の前にステータスが表示された。


 名前:チヅル

 性別:女

 年齢:21


 ほう、21歳。リリィより一つ歳下だが、ちゃんと成人してるんだな、なら大学生か。


 身長:155cm

 体重:おっとこれは見ないでおこう

 ステータス異常:無し

 干渉力:SS

 順応力:94

スキル:透過

 


 干渉力SS…順応力94…

 おいおい、最高クラスじゃねえか…。

 んで、スキルも…。


「透過…って、なんです?先輩」


いつの間にか隣でステータスを覗き込んでいるリリィが首を傾げる。

 俺はスキルの詳細ボタンに触れ、表示された文章を読み上げる。


 【透過スキル】

 透明になれる。

 壁などもすり抜けられる。

 透過中は攻撃などは一切受けない。

 スキル発動範囲は干渉力依存。


 ……いや、説明文からして強スキルじゃねえか。

 ステータスといいスキルといい、チートかこいつ?俺TUEEEなのか?

 鑑定スキルでドヤ顔してたの恥ずかしくなってきたんだが大丈夫か?

 どうしようチヅルが、俺なんかやっちゃいました?とか言い出したら…うわでもコイツめちゃくちゃ腹立つドヤ顔で言ってそう…。

 もしやハーレム築くのか??いやチヅル女だし、逆ハーレムってやつか…。

 いや待てよ?最初に面倒見てくれて、強さに気付いてくれた頼れる歳上イケメン(自称)とか…もしや俺、攻略対象なのでは?


「……ヒェ…、だ、抱かれる…」


「何で急に人の顔見て距離取るんですか抱きませんよおじさんなんて」


 誰がおじさんだおい。

 

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