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展開は速い方がいい

よろしくお願いします。


 んあああ……展開速いって……

 俺たち救世の旅に出た直後だったろ。

 それがどうだ。騎士様は早速片足が吹き飛び?お姫様は爆発の衝撃で脳震盪気味?

 若干ハイになってるのも脳震盪のせいだろ畜生。


「……話聞けよ。のーたりんが…何が目的なんだよ?」


「のーたりんて、口悪くね?」


「ああ、安心しろよ。ほかの女神たちはスゲーぞ?無口クールにツインテツンデレにプリン頭の真面目少女。俺なんて目じゃないね」


「んで最後に緑髪俺ッ娘幼女と。すげーな女神。ああ、目的ね。えーっと俺たちは連邦。海の向こうにあるファウンズ連邦に召喚された…いわば勇者だ」


「ああ?勇者?…勇者???……まあお前らからしたら、さしずめ魔女狩りの騎士たちってとこかよ?」


「まあ、気分的には間違ってなかったんだけど。君たちの個性を聞く限りそうでもない気がしてきたな」


「じゃあ諦める手は?」


「各国の勇者が合同で任務を進めててね。無理だ」


「は?てめえら、あの子たちに手ぇだそうとしてんのか?」


「ああ、女神全員に殺害任務が出てね。もうすでに雷と水の女神は殺して【超常】は簒奪済みだ」








 ?

 もうすでにころ、してる?

 護衛は?いやこいつらプレイヤーは勝てる勝負しかしない奴らだ。

 死んだのか、死んだんだろうな。

 女神討伐ミッションか?ふざけんなよ。女神は討伐されていいような存在じゃない。

 第一こっちにも大切な役目が……ッ!!

 

 茫然としていると、ミルク=ポンチオが口を開く。


「なあ、不思議に思ったことないか?世界を構成している重要な要素を修理する重要なファクターが一国に集中するのは間違ってないか?」


「妙に思わなかったか?国土も広いし、そのうえ英雄異能?だっけかが集中すんのはおかしいって」


「なんで、周りの国が攻めてこないって思ったんだろうな」





 展開が速すぎる。

 世界を救う旅に出ようとしました。

 意味の分からん輩が襲ってきました。

 この世界はゲームでした。相手の様子を見るにMMOでしょう。滑らかに会話をしているところを見るとVRかもしれません。

 それで重要なクエストとして女神討伐が貼りだされたらしい。

 で、怠惰な俺が救世の旅に出たタイミングではすでに女神は二人殺されていたらしい。


 聖女院で話し合いをした後、あの子たちはすぐに旅立っていった。

 みんな重責に押しつぶされまいと気丈に、張り切ってみんなを救おうとしていた。

 そんな子たちを、こいつらはいとも簡単に踏みにじった。


「おめえらにとってはゲームでも、俺たちにとっては人生なんだよ。【直接起動ダイレクトコード石槍ストーンランス】」


「はッ、みんな!避けるんだ!」


 地面に手を置き、あらかじめ決めていた詠唱を唱える。

 するとベータテスターらの立っている場所の地中から鋭利な、槍のような形状をした石、いや岩が突き出してきた。


 ベータテスターたちは迅速に反応、武器を手に取り避ける体制に入る。


 突き出した石の槍に見えるソレは難なく避けられてしまう、が紙粘土のように容易に形を変え、避けられてもなお傲慢な輩を貫こうと追い続けた。

 枝分かれし、避けられ、枝分かれする。


「ちょ!え!やべえ!女神ってこんなことできんのかよ!ベロ!配信は?!」


「ちゃんとストリーミングしてんぜ!すっげ―伸びてる!」


「でかしたあ!」

  

 茨のように枝分かれし全員まとめて貫こうとするもベータテスターたちは手腕巧みに捌き切る。

 貫く意味を持った魔力が枯渇し、粘土のように成形されまとめられていた石の槍は役目を果たすことなく動きを止めた。

 

「くそっくそっくそっ。俺がお前らの立場だったら今更心を痛めることもねえってのに!!俺はもうこの世界で生きちまった!ッお前ら!なにしたかわかってんだろうな!!」


「あの子。俺らがゲームしてることを認識してんのか?そんなキャラいんのかよ!濃すぎるだろこのゲーム!!」


「許さねえからな!あの子たちは死んじゃいけなかったんだ!!人としても!女神としても!」


 ベータテスターたちに手を向け、奇跡を発動させようとする。

 が少しだけ出力が落ちた感覚がする。思考にもやがかかるようなそんな感覚。

 そういえばブルー仮面と呼ばれていたやつが魔法陣を展開してなにかしている。


「が、関係ねえなぁ!この世界にいる限り、いや地面がある限り大地の女神は負けねぇ!手探りでやってるせいで詠唱決まってんのが盾と槍だけなのが悲しいよなぁプレイヤーァ!!」


 そう俺が叫ぶと、呼応したかのように地表が爆発し宙に砂と石と土が舞う。

 中空に浮いたその土が大剣を形成される。

 ほぼ無意識に敵の武器を発現させてしまったらしい。

 イメージが肝になる女神になったのだからいい加減、思考ぐらい制御できるようにならなきゃな。


 発現させた大剣を圧縮し小回りが利くように普通の剣程度のサイズにする。


「あれ?小さくしちゃっていいの?」


「硬くしねえとてめえらを八つ裂きにできねえだろうがバケモンが」


「さすがに土の剣で攻撃してくるほど馬鹿じゃないか!」


 合計五本の硬化土剣を操作しベータテスターたちを攻撃する。

 イメージは古のアニメの流用だ。


「ッ微妙に当たらねぇ!」


 が速度が足りず当たらない。

 あと一歩足りない。出力が落ちていなければやれるのにッ!


「だあああ!まだなのかブルー!!」


「まだでござる!展開はできているはずでござる!」


「ほかの女神の討伐配信と違って威力あんま落ちてないよー?!」


「女神の討伐配信?」


 女神討伐配信って言ったか?あいつらあの子たちの覚悟を踏みにじっただけに飽き足らず見世物にして笑いやがったのか…!


「このくそやろうどもがあああああ!!」


「出力が上がりやがった?!」



 魔力を失った土石剣が地に落ちる。

 だが俺はそれを歯牙にもかけず、二重三重、いや五重に奇跡を発動させた。


 俺が何かするのを察したかのように今までとは打って変わって攻撃を開始する。

 それを俺は成長しきっていない【盾術】を使って捌く。

 

「何をしようとしているのかな!!」


「いうわけねえだろ。マルチタスクは前世からの得意分野だ。そんなぬるい攻撃でどうにかなると思うなよなぁ!!」


「いろいろ気になる情報を急に放出するのやめてくれないかな!!」


 こいつらが攻撃してきたことでこいつらの使う武器種がはっきりする。

 ミルク=ポンチオは大剣、がらら丸が長剣、ベロリンガルが弓、ブルー仮面はおそらく魔法職。


「もう一人は「ここ、だよ」言われなくてもわかってるっつーの」


 とりんてぃかいろは短剣。

 背後から急に現れたとりんてぃかいろの短剣を【地殻小盾】でいなしパリィで弾き飛ばす。

 地面とつながっている俺には誰がどこにいるかが地面を伝ってわかる。だから生半な隠密では俺には通用しない。

 無理やり出現させた【地殻小盾】は役目を終え消えていく。

 ここまでで俺が意外に思ったのは手に持った盾でなくとも【盾術】の効力が乗ることだ。

 効力というのが、盾術の才能の発現と手に持つ盾の耐久力上昇だ。デメリットは攻撃の威力が単純に下がること。これが一番痛いと思う。


 その効力のいい部分をフル活用し、いま俺は【地殻小盾】を合計六つ操りながらこいつらを相手している。

 ただミルク=ポンチオは間合いの詰め方がうまく、すでに奇跡である【地殻小盾】を越えており、手に持った盾で相手している。


「やっぱりお前は複数枚の盾で相手するよりも自前の盾でやった方が楽にいなせるな」


「こんな小さい体に全力で大剣振り下ろしてる俺が言うのもなんだけど、君異常だよ。技の冴えがさっきよりも段違いじゃないか」


「こんな無様に攻撃されるだけのものが技だというのならば、そうだろうな。俺は受けのほうが専門分野なんだよ」


 がらら丸ととりんてぃかいろは周りを浮遊する【地殻小盾】に行く手を阻まれ、ミルク=ポンチオは俺の盾術の前で何もできていないでいる。


 そんな時、奇跡の包囲を抜け、俺に迫る轟音と形容しても差し支えのない風切り音を確認した。


「まあ切り札はお前だよなストリーマーァ!!」


 俺は即座に肘に岩石のアーマーを出現させ頭を守る。

 一射で放たれたらしきソレはいとも簡単にアーマーを吹き飛ばし、ついでとばかりに俺の左腕も吹き飛ばしていった。

 左腕は吹き飛んだが、鏃が触れた瞬間に受けきれないことが分かったため、頭は避難済みだ。


「だけど、これほどとは思わなかったでしょ、女神様?」


「その通りだよ!」


 地面からジャンプ台よろしく土の柱を出現させ、連中から距離をとれるように斜め方向に体を吹き飛ばす。

 その間、また矢が飛んできて右足を吹っ飛ばされたが些事だ。

 右足がないせいで受け身が取れなかった俺に、ミルク=ポンチオが言う。


「万策尽きたかな?痛いでしょ?もうあきらめてもいいよ?」


「くぁははは!おいおい!人間の尺度で語るなよ!俺も最初はぎょっとしたがよぉ、痛みがねえんだよなあ。これでどう焦ろっていうんだよ?」


 そもそも女神と人間では戦う土俵が違う。

 痛みはなく、断面から流れ出るのは血液ではなく、魔力光だった。

 察した俺は左腕に魔力を送り込み再生させる。

 消費する魔力量も多くおいそれとできるものでもないようだ。



「ほら、そんなこと話してる間に左腕が生えちまった、ぞ!!」



 背に隠していた左腕を連中に見せると同時に握りこんでいた土をミルク=ポンチオめがけて投げつけて追加で奇跡を乗せる。


 空中で失速しかけていた土は魔力を吸収し即座に盾を形どり、豪速で迫っていた矢をその身に抱え込み役目を終えさせた。



 それを冷めた目で見送ってから、城門を一瞥する。 


 ここは城門から少し出た程度の場所、どういうわけか街の衛兵などは一切出てこないがかえって丁度いい。


 同時並行で伏せていた奇跡を発動させる。

 まず直近の森から根を伸ばし、強制的に巨大樹をここに生やす。

 生えた巨大樹の成長に介入し、そこらの土であったり石であったり岩を巻き込むように成長させる。

 無から有は作りだせないが、大地の女神にとって土は無限の選択肢になりえる。


 だから、こんなものも作れる。





「【樹岩竜ガウス】…自然に呑まれろ」




 樹木に呑まれた岩石から構成される四肢に、淡い魔力光が漏れる胴体。

 二対四個ある目は、生まれた瞬間からプレイヤーたちを睨んでいる。


「うそ…だろ」


 まだ粗削りな部分も当然ある。

 だがこの世界では天災として数えられる竜がたしかにそこに存在していた。


「無尽蔵の魔力っつっても、有限だ。女神になってから鍛錬らしい鍛錬もしたことねえしな」


 プレイヤーたちに語り掛ける。


「なあ、知ってるか、魔力がどこで作られるか。まだ文明が発達しきってねえこの世界じゃまだ解明されてねえんだけどよ。一説によると」


 胸の中心当たりを拳で力強くたたき言う。


「心で作られるらしいぜ」


「ッ…へえッ」


「そんで俺は今、生まれて初めて、ガチギレしてる。しかも魔力の総量もうなぎのぼりだ。ってことはそう言うことだよな?」



「なあそうだよなア。プレイヤーァ!!!!」

「グオオオオオオオオオオッッ!!!!」


 樹木と岩石で構成され、淡い緑色の魔力光をその身から漏らす【樹岩竜ガウス】が咆哮する。

 戦いの終わりの時は確かに迫っていた。





読んでいただきありがとうございます。

評価、感想、批評、誤字報告お待ちしております。

小説情報の数字がモチベーションになってます!!(豹変)

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