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立場の確認、と……?

お久しぶりです。



 先生から話を聞いてから四日がたった。

 話を聞いたからと言って特別なことはあまりなく、幼女の大地の女神こと俺は連休があと何日かで終わってしまうがまだまだ休めるという謎の安心感に包まれながらダラダラしていた。

 聖女院で生活し始めて、意外だったのは待遇がとてもよかったことだ。

 いやまあ当然かもしれないが、当初の俺は聖職者はパンと水だけで暮らしてるという印象があったため聖女院での初めての夕飯の時は戦々恐々で食卓に座っていた。

 修道服を着たきれいなお姉さんが食堂に入ってきて夕食は何がいいかと聞かれたから冗談でステーキと言ったら本当に出てきてビビった。


「……」


 護衛、誰なんだろうか。

 反りが合わなかったら地獄みたいな旅になるなぁ、と考えていると


―――コンコン


 とドアをノックする音が聞こえてきた


「はい」


「護衛として、あなたに同行する聖騎士のグラハム・バーキンです」


「あー、いまあけましゅ…あけまーす」


 ドア越しの声に舌足らずの声で返答する。

 正直言ってこれが一番堪えた。

 ドアを開けると目の前に大腿部の鎧が視界全体に広がった。

 こういうことになるのは予想できたわけだが、辟易しながら後ろに一歩下がって首が痛くなるほど見上げる。

 

「あれ?めがみさまー?どこですか?グラハムでーす」


「おい!ここだよ!わかってんだろ!知ってんだかんな!女神覚醒の式典は聖騎士全員が動員されてたって知ってんだかんな!おい!俺のこと知ってんだろ!見ろ!こっちを見ろ!首痛いんだよ!」


 わざとらしくグラハムは驚いたふりをして、俺のことを見た後跪き俺に視線を合わせる。


「すみません。女神様が妹に似ていて、からかいたくなってしまいました」


「あんた本当に聖騎士か?」


「聖騎士ですよ?この聖封剣が証ですし、皇女様からの任命状もあります。…見ます?」


「……いいえ結構…はあ。この体も面倒なもんだよ。特にぃ…あんたみたいな…デカブツとしゃべってると」


「自分の身長は聖騎士団の中でも中くらいですよ?」


「有益な情報どうも。で?顔合わせはすんだ?」


「はい済みましたね」


「……済んだよな。じゃあ……………なあ?この時間なんだよ?知らない間にジョークでも言われてた?」


「いえ、この場合、指示を出すのは女神様ですから。指示待ちですよ。あなたの権限は今のところ枢機卿と同格であるはずですから。いわばあなたは自分の上司です」


「…孤児院のガキには荷が重い…あれ?枢機卿?皇帝よりは高くないんだな」


「先々代の女神がいた時代、文字通り女神を神のように扱った結果この国は痛い目を見ていますから。せめて権力的には制御できるように…と、まあ無意味ではあると思いますが」


「いや、俺みたいなガキには…効果的さ。てきめんだね」


 と、無意味な会話を重ねてみたものの。

 ここまで放任主義だとは思わなかったな。

 てっきり先生が指示してくるもんだと思ったが、そんなことでもないらしぃ…


「ってそういえばほかの女神たちって学校通ってたな」


「聖女院のことですか?ええ確かに、女神候補者は先に指導を受けるはずです…ああ、女神さ…サナさまは聖女院の聖女候補生ではありませんでしたね」


「ああ、どうしたらいいかよくわからんが………グラハム。あんた旅のノウハウは?」


「ええ、まあ、聖騎士も騎士ですから、野営は心得ています」


「そいつは重畳。じゃあー明日には出よう。俺の分も旅の準備をしといてくれ。頼んだぞ」


「はい。わかりました」


「たのんだぞー」


 権力があるなら使おうねー。聖騎士もつま先でいいように使ってやるぜー。

 扉を閉めて、カーテンを閉めてベッドに飛び込む。

 扉の外からぼそぼそ何かが聞こえる。


「いやぁ、孤児院のガキなんてうそなんじゃねえかな。部下の使い方が隊長のそれだぜ」


 聞こえてんぞバーキン。

 さて、俺は星典の位置を世界地図で確認しなきゃなー。

 先生のとこで大まかに見たけど陸路で行けた気がするんだよな。








◇ ◇ ◇








 


「なあ…お話ししないか???えーっと…たしかミルク=ポンチオさん?」


「サナさ……早く逃げて…」


「お前の片足が吹っ飛んでんだぞ。逃げられるかっての」



 時刻は…昼頃。

 グラハムが俺に買ってきた服が気に入らなくて昼頃まで買い込んだ。

 女児服を平然と渡すな。

 …いや俺がわがままを言わなければこうはならなかったか。


 俺の目の前にいるのは、色とりどりの鎧や魔法衣に身を包んだ、所属する組織や国が推測できない奴ら。

 俺たちが乗り込んだ馬車をド派手な魔法で吹き飛ばし、おまけにグラハムの左足を魔法で吹き飛ばした。

 とどめにこいつらが呼び合っている名前。

 全部で5人

 ミルク=ポンチオ。がらら丸。ベロリンガル。ブルー仮面。とりんてぃかいろ。

 とてもじゃないが人間の名前じゃない。

 が、俺ならわかる。グラハムはピンときていないようだったが、異世界産の記憶を持っている俺なら。

 

「えええ……女神がこんな幼いなんて聞いてないよー。超タイプ」


「いやミルクさん。こんなところで性癖暴露しないでください」


「えー、だってがららっち。めっちゃ可愛いうえに美人じゃん!いまもいいけど将来が楽しみなんだもん!光源氏してえ」


「出た出た。ていうか殺害任務でしょ?連邦の【キャピタルクエスト】に逆らってみます?それも面白そうだけど」


「いや。面白そうなのは面白そうだけど、ほかの国に勢いをつけられると困るのも事実…後輩たちの助けになれるようにベータテスターの俺たちは動かなきゃね」


「それもそうですね。無能のベータテスターなんて言われたくないですよ」


 この自分たち以外に無頓着な感じ。もう少し言うなら、NPCに関心が薄い感じ。

 しかもベータテスターっていう単語。




 こいつらゲームしてるわ。

 俺もゲームの世界で重要NPCになってしまったらしい。

読んでいただきありがとうございます。

感想、批評、誤字報告などお待ちしております。

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