自己紹介
何話か投稿したい…とりあえず一話目です
「……うう……」
呻くその声が日当たりのいい部屋の雰囲気を少しだけではあるが悪くする。
ここは聖女院。
先代女神を輩出し、帝国の病院の役割も担っているこの施設に先ほど女神になったばかりの四人は集まっていた。
「ちょっと……大地の女神。あんたこうなるのわかってて来たんじゃなかったの?」
燃え盛るような赤髪をツインテールにして魔力光で光らせる【火炎の女神】が、机に突っ伏してうなる幼女……サナに言った。
「仕方ないだろ……こいつの場合。男から女になるだけじゃなく……こんなことになってんだから」
【雷鳴の女神】。
元のプリン頭を稲光のような黄髪にしておさげにまとめた彼女はサナを見て同情を宿した声音で言った。
「……かわいい……」
透き通るような青髪を背に流している【流水の女神】がサナの正面に座ってサナのことを観察している。
そんな女神たちの関心を一身に受けている【大地の女神】は…
「うそだ……おれが……こんな辱め……くっころ……」
もともと少しイケメンという個性しかない男だったのだが、今では緑髪の幼女である。
本人的には孤児院にいる家族よりも幼くなったこの体が恨めしいのだ。
地面につくほど長い緑髪は【流水の女神】によって一つ縛りにまとめられており若干の女子力がにじみ出ていた。
「あんまり気にしてたら、世界救うまで体持たねえぞ?」
「……ありがとう。不良少女」
「誰が不良か!」
雷鳴の女神の言葉によって少しだけ元気を取り戻したサナは顔を上げた。
「ああ、ごめん。髪を染めてるみたいだったから…ただの偏見だから気にしないでほしい」
「……そうかい」
「あはは!不良だって!黄色!」
「あんだと?!」
再び、火炎の女神と雷鳴の女神の喧嘩が始まった。
この光景にサナは率直な印象を言ったことを後悔したが、いい機会だと女神たちに話しかけた。
「ちょっとまって、黄色とか赤色とか言うんじゃなくて、俺達には名前があるんだから自己紹介しないか?」
「「あ?」」
「……忘れてた」
「そう、ね。あたしはケレン・ガラシア。ガラシア家の三女で、火炎の女神よ!」
ガラシア、という家名に誇りを持っているようで、ふふん、と胸を張っている。
火炎の女神とわざわざ名乗るところに年相応の部分を感じサナはほほえましく感じた。
サナも十歳だが。
「………クロナ・スパーク・セイエス。セイエス家の次女で………ら、雷鳴の女神だ」
雷鳴の女神も女神としての名乗りに憧れがあるようで、少し顔を赤くしながら名乗った。
かわいい。
「クルーシア・フォント。フォント家の次女。流水の女神」
流水の女神がサナを見ながら自己紹介する。
クルーシアはサナに興味津々なようでここ数十分、サナを見続けている。
「俺はサナ。セナリス孤児院のサナ」
「サナね」
「サナ……かわいい」
「かわいくねえよ」
「女の子になる前から女の子みたいな名前なのね」
「うるせえよ」
サナがふてくされ始める。
その姿を見てよっぽどの重症なのだとケレンとクロナは認識を改めた。
サナが再びうなだれていく様子を見ながらクロナは話題を変えなければと、今後の予定について話した。
「サナは今後の予定は知ってるか?」
「いや、知らない」
「そうか。このあと、聖女院の先生から使命についての説明を受ける」
「…先生。そういえば俺が男だって先生から聞いたって」
「ああ…うちのクラスでは説明を受けた。ケレンは、話されなかったか、聞いてなかったかのどちらだな」
「い、言ってなかったのよ。あたしのクラスじゃ」
「……その先生ってのはいつ来るんだ?」
「わから「もういます。女神様方」
「「「いつの間に?!」」」
「ごきげんよう。先生」
「こんにちは。女神様方。クロナ様がおっしゃったとおり、女神様方の今後の行動の指針になる大事な話がございます」
先生、と呼ばれたモノクルをかけ白髪交じりの髪の毛をオールバックにした男性が扉を開けて「こちらへ」と言った。
◇ ◇ ◇
読んでいただきありがとうございます