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帝都へ

連続投稿です!前話を読んでいない場合はそちらからお読みください!



 興奮冷めやらぬ様子の村民たちが教会から出ていく。

 その理由は一つ。大地の女神が生まれた瞬間に立ち会えたからであろう。男だが。

 教会の中に残されたのはセナリス孤児院の面々。


「すごいじゃない!サナが大地の女神さまの後継者なんて!」


「すっごーい!」


「サナにぃって おんなのこ なの?」


「男だ」


「サナにぃ せんたく できないのに おんなのこ なの?」


「男だ」


「でもサナにぃのちんち「男だぁ!!」


 世界を救う一大決心の後だというのにいわれのない無邪気な悪意がサナの心をふかく傷つける。


 そこで教会の扉が開いた。

 無意識にそちらに視線を向けるとここで待っていろと出て行ったギーア院長。とその横に立っているもう一人の影が見えた。


「えーと、どちらさ「皇女殿下……」


 本日二回目の信じられないといったような声音を漏らす。


「ゼレシアと申します。大地の女神様」


 そこにいたのはパージア帝国第三皇女 ゼレシア・ケレス・パージアであった。

 きらきら光る金髪に碧い目、美人だ。


「それで皇女サマが俺に何の用?俺、とっととこの異能ものにしなきゃなんだよね」


「ちょっとサナ!」


「…大地の女神様。恐れながら申し上げます。【盾術】はともかく【大地の女神】の異能に関してはどうしたらいいか、わからないのではありませんか?」


「……」


「………簡潔に申し上げますと【女神】の異能は四女神がそろった時初めて、共鳴反応によって覚醒が促されます」


 さすがにその覚醒の仕方は予想外であったようでサナは驚いたような顔でゼレシアを見た。


「そっか……」


「ねえ、それって…」


「……何時発つんだ?」


「できれば今日の夜には。そのための護衛も連れております」


「準備はばっちりってわけか」


 薄く溜息を吐きながら、居心地悪そうにしている子供たちと目線を合わせる。


「ごめん、みんな。お兄ちゃん仕事しなきゃいけないから今日からしばらく絵本を読んでやれなさそうだ」


「えー!!」

「なんでなんで?!」

「しばらくってどれぐらい?!」


「それはわからない。大地の女神さまになって、世界を守らなきゃなんだよ。わかるだろ?」


「うー…」

「うん…」

「サナにぃ…」


「だから、絵本は読んでやれない。でも」


「う?」

「?」

「……」


「すぐに世界を救って、帰ってくる!そしたらいっっっっぱい絵本読んでやる!!」


「「「!!!」」」


「待てるか?」


「「「うん!!」」」


 その様子に満足したのか、サナは立ち上がり少し面倒そうな表情を顔に貼り付けて言う。


「さ、用意しなきゃ、な。たいして持っていくもんはないが」


「失礼ですが、あなた本当に十歳ですか?」


「ちゃんと十歳だぜ。皇女殿下」


「ゼレシア、とお呼びください。大地の女神様」


「そりゃどうも。慣れなかったんだよな。ゼレシアも俺のこと呼び捨てでいいぜ」


「……サナ様、とお呼びいたします」


「そ。勝手にしてくれ」


 気負う様子なく、サナが用意のために教会を出ていく。


 軽く息を吐きゼレシアがいまだ緊張の中にいるセナに問う。


「…彼はいつもこうなのかしら?」


「い、いえ!いつもはもっとダラダラしてるので、カッコつけてるんだと思います。殿下」


「そう…面白いわね」


 そう言って第三皇女は微笑んだ。




  ◇ ◇ ◇




 少しの準備を終え、サナはゼレシアが指示した馬車に乗り込む。

 夜も更けているが村民たちが総出で見送ってくれた。

 その中でも子供たちの見送りは壮絶で、大泣きしながらお気に入りの品を押し付けてきたのだ。


 カールがちっちゃい木剣、ジェナがお気に入りのぬいぐるみ、マリアがおもちゃの指輪。


「あげるわけじゃないもん!」

「はやくかえってきて かえしてよね!!」

「やくそくだからね!!」


「っああ!」


 このとき、さすがにサナは泣いた。



 それから、サナは気になっていたことをゼレシアに聞いてみた。


「どうやって、事前に知ったんだ?この村で大地の女神の後継者が出るって」


「………」


 いくらかの逡巡を経て、サナの問いに対して返答する。


「帝国は【予言】の異能を持つ人材を保護しています。その予言を頼りに村にやってきました」


「な、なるほど…もしかしなくても俺って結構やばい情報聞いちゃった?」


「どうかご内密に」


「わ、わかった」


 冷汗を流しつつ、無理やり寝に入る。





 

 その日はつかれていたのか起きたときには帝都は目と鼻の先で、サナは帝都が思ったよりも近いことをこのタイミングで知った。



「あれが帝都……そうだ。ほかの女神たちとはいつどこで会うんだ」


 女神たちと会うことは覚醒を意味する。

 いつ覚醒するのか。それを聞いたのだ。


「今日の昼時、中央のコロッセウムにて覚醒を行っていただきます」


「昼時……」


 このとき、目の前の皇女が言っていることと自らの体内時計を照合すること0.5秒。


「いやすぐじゃん!!」


「はい。サナ様の身支度を終え次第、コロッセウムにて覚醒していただきます」


「てか妙に人いると思ったら今日って臨帝の日じゃねえか…」


「…ああ、人の目があることを言っていませんでしたね」


 その言葉を聞き、サナは確信犯であったことを理解する。


「士気を高める意味合いが強いのです。辛抱してください」


「…了解」


 そう言われどう反論していいかわからなくなってしまった。


 ガコン。


 と音を立てて馬車が停車する

 ついたようだ。


「屋敷に尽きました。ここで身支度したのち、コロッセウムに向かいます。使用人たちの指示に従ってください」


「…指示ってそこまでのことすんの?身ぎれいにするだけじゃ?」


「いろいろします」


「……いや、それだけじゃわから「いろいろします」


「いろいろしま「わか、わかったよ!」



 特筆すべきことといえば…

 ここで身ぎれいにしたことでサナのムダ毛は根こそぎ全部消え去った。

 風呂場からは常にサナの悲鳴が聞こえていたという。








読んでいただきありがとうございます!

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