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プロローグ

どうもはじめまして!沙羅誘イと申します!

稚拙な処女作にはなりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです!

 


 【ZEXseedONLINE】 


 そう銘打たれたゲームが開発途中であることを知った時の佐薙 大輔の興奮は計り知れない。

 別に大輔に無意味なミーハー根性があったわけではない。ではなぜ彼がたかが広告に興奮したのか、それは単純明快にして当時のゲーマーたちにとってはよく理解できるもので、ひとえに【ゲーム史上初のフルダイブ式のVRMMO】であったからだ。

 動画サイトに投稿された動画ですらもかなりの高クオリティであり、大輔の興奮を再び燃え上がらせたのは記憶に新しい。

 大輔はZEXと呼ばれ始めたこのゲームを最強の環境でプレイしてやると意気込み、今まで以上に仕事に打ち込んだ。そして体を壊しかけながらも十分なほどに金はたまった。

 のだがその時になって、ヘッドギアタイプではないリクライニングチェア一体型の排泄まで管理してくれるという廃人仕様のダイブマシンの発売が決定した。

 これは絶対に欲しい。

 そう思った大輔は壊れかけの体に鞭を打って、働いた。

 結果、ZEXseedONLINEのサービス開始のCMを見ることなく過労死した。

 23年の命であった。









 ◇ ◇ ◇



 牧歌的。

 大輔の乏しい語彙で表現するのならばこの言葉が一番合うのだろう。

 黄金色に光る小麦畑、その合間あいまのあぜ道を走る子供たち。

 耳に入ってくる川の流れる音に視界の隅を飛び回る虫たち。

 しまいにはかなりでかい風車。

 これを牧歌的と言わずしてなんというのか。


 組んだ足を崩して寝返りを打ち、大輔は思案の矛先を自らの故郷ではなく生い立ちに向ける。

 今更考えることではない。だがときどき思い出してしまうのだ。


 あの日、体に鞭を打ち続けてついに壊し尽くしてしまった日。

 立ち上がって大輔の顔を打ち据えた地面に恨み言を漏らす間もなく速やかに意識を沈められた日。

 あの日から大輔の世界は変わった。

 簡潔に言えば異世界に転生した。


 死んだ日と異世界で起きた日が連続したものであったかは覚えてはいないが、物心ついたころふと自分が佐薙 大輔であったと自覚したのである。

 死んだ理由ともいえるZEXseedONLINEを惜しむ心がなかったわけではないが、異世界転生という事実とちょっとイケメンだったことがもうゲームができないのだという現実のダメージを減らしてくれた。


 大輔が生まれた地域は帝国の中でも農耕が盛んであり、大輔の生まれた家も例にもれず農民の家であった。

 今生の名前はサナであり、なんでこんな名前を付けたのか、どんな意味があるのかを大輔は知らない。

 なんでかと言われれば両親がいないからであり、なんで両親がいないのかと言われれば魔獣災害で失ったとしか言えない。

 サナなんて名前、女々しくて堂々と名乗れないと考えていた時期はあったもののここにもここなりの文化と価値観があると無理やり納得した。


 そんな大輔はこの世界では十歳を迎えていた。

 成人するにはあと五年ほど足りない、だがこの年のほどになるとある大事なイベントが待っていた。


 それは転生者であるサナの心を躍らせる一大ファンタジーイベント、帝選の儀である。


 この儀式の内容を簡潔に述べるのならば、スキル配布という一言に尽きる。

 帝国の住民は十歳になると全員漏れなく【異能】と呼ばれるスキルが配布される。

 異能は基本一人一つの代物で性能もピンキリであり、一長一短なものが多い。

 オーソドックスなもので【剣術】【火魔術】が挙げられて、読んで字のごとく【剣術】の異能を得たものは剣の扱いがうまくなり、【火魔術】の異能を得るとその日から火を扱う魔術の才能が生えてくる。

 これらの異能を成長前の異能ということで無垢異能と呼ぶ。

 成長先の異能は人によって違い、有名どころでいうと帝国一番の剣士は【剣術】の異能を【神剣】まで成長させたらしい。

 と、こんな前例もいるからわかる通り異能の成長に限界はない。と言われている。

 どこが限界なのか、研究はされているらしいがその研究も芳しくないとか。


 閑話休題。


 そんな異能にも《特別》というのは存在しているらしい。

 英雄異能。

 そう呼ばれ始めた異能群は通常の異能とは隔絶した性能を誇っている。

 代表的な英雄異能は【勇者】であり、この【勇者】に覚醒するとすべての武器の才能とすべての魔法の才能がその日から備わる。文字通りのチート。

 その【勇者】に覚醒した農民がいるという情報が流れてきて自分にもチャンスがあると興奮したのは内緒だ。


(そう。天文学的な確率かもしれないけど、あるんだ。農民にもチャンスが!)


 思い出し興奮しているとあたりが薄暗くなっていることに気づいた。

 門限のことを思い出し、急ぎ立ち上がり走り出す。


(明日。帝選の儀が行われる!そこで俺の人生はまた変わるんだ!)



 ちなみに門限には遅れた。

 

 












読んでいただきありがとうございます!

今日中にあと三話連続投稿する予定です!

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