未来のお話
プロローグを投稿済みではありますがこちらを導入として読んでいただけたら幸いです。
【ZEXseedONLINE】の【キャピタルクエスト】の一つである、【鬱世の都】の影響を受け霧に覆われた廃都市。
高層建築物が乱立する石の森とも形容できる場所で何かに追われるように疾走する外套で身を隠した……お姫様抱っこをしている人影があった。
「なあ、なんでにげるんだ?」
「そりゃお前、舞台を整えるためだよ」
「舞台……まさか、またか?」
「またってなんだよ。俺だってべつに」
「む、サナ。舌噛むなよ」
苦言が漏れる口を強制的にふさがれるほどの魔力光が二人を襲う。
ざっと見ただけでも二十人以上分の魔力光。
これほどの魔法を浴びる経験は皆無に等しかった抱えられている方は喉からひぅと空気を漏らす。
二十人分の魔力光に若干ひるんだ抱えられている方とは対照的に抱えている方は的確な判断でもって【技能】を発動する。
「【授かりし威光:心核の巨盾」
瞬間的に言霊を発したとき、迫りくる魔力光に勝るとも劣らない光が地面からあふれ出し、その光は盾を形づくった。
ドッッガアアアアンッ!!
あまたの魔法と盾が衝突し途轍もない衝撃波と土煙を生んだ。
「げっほっげえっほ!!もっとマシな防ぎ方あったろ!!」
「好都合だ。移動するぞ」
「ええ?なんて?」
「舞台が整ったから移動するっつってんだアホ女神」
「誰がド貧乳メスガキなんちゃって女神か!!??」
「ド貧乳メスガキなんちゃって女神。口上考えとけよ」
「否定しろよ!!「そこまで言ってねえよ!」っていうテンプレを求めてんだよ?!」
「そこまで言ってねえよ?!?!」
「おせえんだよ!!」
……二人が漫才をしている最中も事態は動いており、二人を追っていた集団はすでに土煙を晴らし捜索を開始しようとしていた。
こりゃまずいと、小高い建物の屋上に移動した二人組のもう一方が外套をバサリと取り払い、よく通る声で言った。
「……聞きなさい!!共和国の者たちよ!!」
その時、空を覆っていた分厚い雲が途切れ強い月光が降り注いだ。
天使のはしご、というらしい。
どういう因果か、ゲームの運営がわざわざ起こしたものなのか。
判断しかねるが、その光景を見たものは後に語った。
あの光景だけは天使というには奇麗すぎた。
薄い緑色の髪の毛が妙に神聖なものに見えた。
女神っていうのはああいうのを言うんだな、と。
そして、皆がこう付け加えた。
「……んー、ま、フィーリングでいいっしょ。共和国のみなさーん!【流水の女神】の在り処をおしえなさーい!さもないとなます切りにしまーす。さもあっても三枚おろしでーす!」
「うーんお前の名前って悪魔だっけ?」
「女神です」
でも全然女神っぽくなかった、と。