4話 同居人?増える
ガシャアァン
「うおわああ?!何事?!」
悪王と色々あった数日後、いつもと変わらない日常に戻った俺は、いつものように家に帰ると二階から窓ガラスの割れる音が聞こえて飛び上がった。慌てて階段を駆け上がり自室に飛び込めば、そこには見覚えのないキーホルダーが転がっている。まさか、誰かがこれを俺の家の窓に投げつけたのだろうか。もしそうだとしたらなんて陰湿な嫌がらせをしてきやがるんだ。
「どこの誰だよくそ……それにこのキーホルダーの人形、なんかイラっとくるんだよなあ」
「不遜だぞ貴様」
「おっ?これ押すと喋るタイプか?凝ってんなー」
「喋る玩具ではないが?」
「……お前まさか、オルターか?」
持っていたキーホルダーを机に乗せて立たせると、俺がそんなことしなくとも動けるらしく、デフォルメされた男の頭に耳がついている、所謂狼男のような人形はその辺にあった消しゴムに腰掛けた。この偉そうな態度、そこはかとない突っ込み気質は、あの悪王オルターだ。
「まったく、本来であれば貴様ではなくエルストの所へ襲撃に行くつもりだったのだがな。運悪くここに引き寄せられてしまったようだ」
「人んちの窓ぶっ壊しておいてなんだこいつ。いや、そもそもなつきのところにも行くんじゃねえよ。つうかお前、生きてたのかよ?」
「この姿しか保てぬ今、もはや死んだも同然。だが、未練がある。余はそれを見届けるために無様な姿になろうと戻ってきたのだ」
「意味わかんねえ。ま、とりあえず悪さしねえんならいいわ」
あー片付けだりいなあ、と割れた窓ガラスを見ていたら、キーホルダーになった悪王は心底おかしそうに笑っていた。なんだよと見下ろすと、ふんと鼻を鳴らす。
「普通の人間なら、悲鳴を上げるか誰かに助けを求めるものだと思うのだがな」
「はあ?!あのなあ、こっちは変な世界でお前となつきの一騎打ち見てんだぞ!ある程度の非現実にはもうビビったりしねえよ!」
「ところで、飯はないのか」
「お前それで食えんの?!」
とりあえず悪王オルターは俺のカバンにつけておきました。落としたらごめんな。