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男は立て膝で座り、くせ毛の姉とショートの妹はソファに座っていた。
「あの魔法使い制服着てたわね、ってことは私たちと同じ年くらいか」
「相当、力も強かったよ」
「あなた、何か悪いことでもしたの?」
「俺は……」
男はうつむいた。
「言いたくないならいいよ、ね、おねえちゃん」
「ええ、誰にでも言いたくないことくらいあるものよ、無理に言う必要はないわ」
「だが……助けてもらっておいて」
「いいよ、私たちが助けたかったんだもの」
「それより、おねえちゃん日曜日に眼鏡かけてるとか、イギリス人みたいじゃん」
「うふふふ」
(なに、笑ってるんだこいつら、なにがおかしいんだ?イギリスは日曜日に眼鏡をかけるのか?いや、ないだろ……え、あるのか?俺が知らないだけで本当はあるのか?)
「珈琲でよかったわよね?」
「ああ、ありがとう」
男はコップに入った黒い液体を飲んだ。
蕎麦つゆだった。
三人は男物の服を買いに行った。
姉妹は楽しんでいるようだったが男はこれは?これは?これは?攻撃に嫌氣がして早く帰りたがっていた。それでも買い物はしばらく続いた。