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ショート「いなくなっちゃったね」
クセ「二対一だから、分が悪いと判断したんでしょ」
ショート「ごり押ししてくるタイプだと思ったんだけどなあ」
クセ「人は見かけによらず、よ」
目の前にあった氷が溶けていく。
後ろ足が焼けて焦げた臭いがしていた。
痛い。
さっきの魔法使いと戦っていた、別の魔法使いが近づいてくる。
来るな!
唸り声をだして、警告した。
犬歯をむき出しにする。
一人がしゃがんで声をかけてきた。
「もう大丈夫よ、怖くない、怖くない」
手を伸ばしてきた。
「グルルルルル」
もう一人がそいつの後ろに立つ。
「怯えているね、この子」
目をそちらに向けた。
なんだろう。
時が、
止まったように感じた。
胸が高まるのがわかった。
目が離せなかった。
彼女は綺麗だった。
なんだ、
この感覚は。
まるで満月を見ている時のようだ……
狼の唸りはだんだんと小さくなっていく。
ショート「あり?」
ショートヘアの女は狼の体に触れてみる。
触っても大人しかった。
女は撫でながら、家で手当してあげるからねと言った。
狼はじっと撫でている女を見ていた。
「ねえ、なんで私だと唸ってくるのよ」
「見る目がある、この子」
「なにそれ!」
「あ、ほっぺに三日月形のハゲがある」