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最強姉弟 ~Lv0の弟とLv100の姉は世界を救う~  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章――3 『 騎士への招待とならず者の邂逅 』
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第37話 『 プリムとデニム 』


「――ねぇ、そこの二人~。何楽しそうに話してるのー?」

「べつに楽しくはないですけど」


 ガエンと軽く(と言っても彼の話に適当に相槌を打ってただけ)話していると、桜髪の少女が寄ってきた。


「おー貧乳女」

「誰が貧乳だ殺すぞ肉団子」


 ガエンの嫌味に、少女は本気で殺意を宿した目で睨む。

 バシン、とガエンの頭を叩いた少女は、それからアノンに近づいてきて、


「ほぉ。見れば見るほど子どもだ。キミ、年齢は?」

「えーと、十五です」

「ふふん! じゃあ私の方がお姉さんって訳だ!」

「僕の姉は姉さん一人だけですけど」


 誇らしそうに薄い胸を張る少女に、アノンは真顔で言い返す。

 そんなアノンの言い分を無視して、少女は犬歯をみせると、


「私の名前はプリム! アンタは?」

「アノン、です」


 アノンね! と名前を復唱する少女――プリムはそれから、


「入団テストで一番目に抜けたからって、アンタが先輩な訳じゃないからね。私より年下なら舎弟よ!」

「ハッ。お前よりコイツの方が強ぇのに何が舎弟だ。そういうのはコイツより強くなってから言え断崖絶壁」

「いちいち私の胸を指摘しなきゃ気が済まないのかクソゴリラ」


 いがみ合う二人。

 やがて強く鼻息を吐くと、プリムは苛立たし気にアノンに言った。


「この肉団子とは仲良くしない方がいいわよ。一緒にいると頭まで肉団子になるから」

「まぁ、頭が足りないという意味では納得できますけど……」

「んだとコラァ!」

「事実でしょう。でも、細かいことを気にしない性格はいいと思いますよ。女性に対して暴言を吐くのはどうかと思うけど」

「あら。貴方子どものくせに女性の扱いは長けてるのね」


 アノンの言葉にガエンは眉間の皺を深く寄せて、プリムは上機嫌に鼻を鳴らす。


「ならこんな肉団子より私と話さない? ここにいる連中と話すのは飽きたし、何より品がないから自分が女だということを本気で忘れそうなの」


 なんだかげんなりとするプリム。


「ハッ。囚人服着てる時点で男も女も関係ねぇだろ」

「牢屋は別ですぅ」

「けど便所は?」

「一緒ですぅ……」


 声音を落としたプリムに、ガエンは「ブアハハハ!」と汚く嗤う。

 悔し涙を浮かべているプリムを苦笑交じりに見ていると、


「――騒がしい連中ですまないな」

「うわっ」


 突然背後から声を掛けられて、アノンはびくりと肩を震わせる。


 心臓がバクバクと音を鳴らしがら声音の方へ顔を向ければ、そこにはやせ細った男がいた。


「い、いつから背後に?」

「? キミがプリムと話している時からずっといたが」

「……僕の後ろを取るなんて人いたんだ」


 空間認識と気配感知に優れているアノン。男の言う通りならば、その時点で存在は認識できていたはずだ。


 まさか自分の背後を取る人間がいることに驚嘆としつつ、


「ええと、貴方は?」

「申し遅れてすまない。私の名前はデニム。よろしくな、アノンくん」

「よ、よろしくお願いします」


 これまで粗暴の目立ったならず者たちとは対照的に、デニムという男は社交的な礼儀をみせる。


 それに戸惑いながらも、アノンはデニムに会釈する。


「粗暴な連中ですまないな。我々にとっては日常茶飯事だが、君にとっては強烈な光景だろう?」

「そう、ですね。こんな騒がしい人たちは初めてみました」


 周りを見れば、まるで宴のように騒いでいるならず者たち。

 それはデニムの言う通り強烈だけど……けど。


「見ていて面白いですよ――まぁ、交じりたいかと問われれば、絶対ノーですけど」

「ふっ。同感だ」


 苦笑しながら答えたアノンに、デニムも蛮族の宴を眺めながら苦笑するのだった。


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