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最強姉弟 ~Lv0の弟とLv100の姉は世界を救う~  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章――3 『 騎士への招待とならず者の邂逅 』
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第34話 『 二人目の合格者 』


 入団テスト二日目。

 本日もモンスターと対峙するアノンとならず者たちは、檻の中で絶叫を上げていた。


「てめぇ! クリアしたんならさっさと出てけよ!」

「確かに入団テストの合格条件はモンスターを倒すことですけど、倒したら戦ってはならない、なんてどこにも書いてなかったしシエスタさんは一言も言ってませんよ?」


 一日目と違ってモンスターと健闘しているガエンが、襲い掛かる爪と鍔迫り合いをしながら唾を吐く。


 しかし、ガエンと違って余裕の表情を崩さず爪を受け止めるアノンは、口笛を吹きながら反論した。


「屁理屈だろんなの! お前がいたらコイツ倒せねえだろ」

「だったら僕より早く倒せばいいだけじゃないですか」

「ああ言えばこう言いやがって! ホントッ生意気なガキだなお前は⁉」

「そのガキに何度モンスターを倒されてるんでしょうねぇ」


 罵倒に煽りで返せば、ガエンは顔を真っ赤にして地団太を踏む。


「俺様を、舐めんじゃねえ!」


 アノンに完全に格下と見られたガエンは、その怒りを力に変えてモンスターの爪を押し返した。


「ふっ。どうだ見たか。これが俺の力だぜ……」

「その程度で調子に乗らないでください」


 自慢げに胸を張るガエン。そんな巨漢男にアノンは自信の実力を思い知らせるように、容易く爪を押し返し、ついでに空いた胴体にメイスを叩き込んだ。


 決して張り合っている訳ではないけれど、そのやり取りは傍から見れば完全にそう見えて。


「…………」

「…………」


 アノンとガエン。火花を散らすように睨み合う。


「コイツは俺の獲物だ」

「いいえ。僕の獲物です」


 お互い、一歩も主張を譲らない。

 ならば、眼前の敵を自分の獲物だと証明する方法は、一つしかないだろう。


「――俺がコイツを殺ぉぉす!」

「――蛮族を姉さんに近づけさせる訳にはいかない!」


 両者。武器を強く握り直した瞬間。一気に大地を蹴った。

 急接近するアノンとガエンに、モンスター――ライオットコングも威嚇に胸を叩く。


「コイツは、俺ん獲物(もん)だ!」

「貴方に譲るつもりはない!」

「――ッ⁉」


 そんなライオットコングを惑わすように、アノンとガエンは左右に挟み込む。


 期せずしてライオットコングの動揺を誘った二人は、そのまま困惑するライオットコングに向かって同時に攻撃を浴びせた。


「オラアァァァァ!」

「――シッ!」


 野太く力強い呼気と、裂帛のような鋭い呼気が木霊する。


「ウッ……ウオオォォォォォ!」

「おっと」


 左右から斬撃と打撃を食らったライオットコング。倒れかけた巨体が寸前のところで耐え、咆哮を轟かせる。


 そして、最後の抵抗と言わんばかりにアノンの方へ剛腕を振る。回避を図るアノンだが、メイスがライオットコングの肉に食い込んでうまく抜けなかった。否、ライオットコングがメイスの食い込まれた箇所に力を入れ、筋肉で引き抜けないようにしたのだ。


 全ては一撃でアノンを殺す為。しかし、アノンはライオットコングの思考を即座に把握すると、肉で固定されたメイスから手を放して攻撃を回避した。


 その瞬間を、ガエンが見逃すはずもなく。


「この勝負。俺のもらいだァァ!」


 高らかに笑いながら、ガエンは瀕死のライオットコングに、己の武器としたバスターソードをさらに奥へ食い込ませていく。


 筋肉が収束されるよりも早く。それすらも力技でねじ伏せて、ガエンのバスターソードがライオットコングの胴体を貫いた。


 飛ぶ血飛沫が、その豪快さを物語らせる。


「――カァァ」


 ガエンの一撃に、ライオットコングは白目を剥きながら崩れ落ちた。


 巨体が地面に倒れ伏せて、粉塵が上がる。その様を彼の仲間であるならず者たちは唖然としながら見届けていて、アノンは舌打ちしながら見届けた。


 わずかな静寂の後に聞こえたのは、遠くからの拍手だった。


「おめでと~。ならず者たちから初めての、そして二人目の合格者が出ました~。ぱちぱち~」


 二日目にしてようやく二人目の合格者の登場に、試験監督であるシエスタは賞賛を送った。


 心の底から祝福などしていない拍手。しかし、ガエンは、


「ははっ。どうだお前ら。これが俺の実力よ」


 と、満更でもなさげに鼻を指で擦った。

 そして、ガエンはアノンに不敵な笑みを向けてきて、


「ははっ。残念だったなガキンチョ。大切なお姉ちゃんの騎士に、俺みたいなならず者が就いちゃって。ブアハハハハ!」

「……やっぱ殺しておくか」


 あまりに神経を逆撫でてくるゲスな笑い方に、アノンはメイスを握り直す。


 そんなアノンの並々ならぬ殺気を感じたかどうかは不明瞭だが、シエスタが「はいはい」と手を叩いた。


「ほら。合格者はまだたったの二人だけよ。休む暇なくどんどん投入していくから、全員気合入れなさい」


 ガエンが合格したことで、ならず者たちの士気が上がっていく。

 自分たちもガエンに続けと。アイツができるなら自分たちもできて当然だと。

 そういった集団が厄介な存在になると、アノンは初めて知って――


「――これは、僕も少し本気を出さないとダメかな」


 これ以上合格者など出させる気がないアノンは、ならず者たちを初めて警戒すべき存在だと認識した。

本日のモンスター紹介

【ライオットコング】


全長最大3メートル。


――西諸国の密林地帯に生息するモンスター。性格は比較的は温厚だが、自身や子どもに脅威を察すると攻撃的になる。


棍棒を思わせる太い腕とそこから生える鋭利な爪が特徴的で、それを使って外敵を攻撃する。

足は襲いが頭の回転が速く、また理知的。


好物は『バナゴ』という黄色い果物で、バナゴを見つけた親は子と一緒に食べるらしい。

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