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最強姉弟 ~Lv0の弟とLv100の姉は世界を救う~  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章――3 『 騎士への招待とならず者の邂逅 』
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第25話 『 グレアスフォール騎士団0番隊 』

 

 ――そして三日後。


「シエスタの奴、こんな所に呼び出してうちの弟に何させるつもりなのかしら」

「入団テストでしょ……」


 神妙な顔をする姉に、アノンは苦笑しながら言う。


 前日にリアン越しから連絡があり、騎士団へと正式に加入する前に、まず入団テストを受けなければならなくなった。流石に適正審査や実技試験を通さずに騎士団へ加入するのは王族である姉のコネでも一番目(プラチナ)から誘われたという理由でも無理なようで、形式は多少異なるが試験は受けなければいけないらしい。


 なので、本日はその採用試験となる会場を目指しているのだが、


「……こんな街の外れでやる試験て、絶対ロクでもないことが確定してるじゃない」

「そうなの?」


 世間の事情にあまり詳しくないので小首を傾げれば、姉は「そうよ」と首肯した。


「本来の入団テストは〝騎士宮〟っていうこの国の騎士全隊員が生活している施設で行うものなの」

「あぁ、たしか王城のすぐ隣に大きな建物がそうだっけ?」

「そうよ。あそこが騎士宮」


 流石アノン、と頭を撫でながらリアンは続けた。


「そこで適性試験も実技も行うはずなんだけど……それがどうしてこんな辺鄙な森を会場にしてるのか……なーんか怪しいのよね。――うんっ。やっぱり帰りましょうか!」

「え、ちょっと待ってよ姉さん⁉」

「お姉ちゃんの勘はよく当たるの。きっとあの女。入団テストというのは建前でアノンに酷いことさせるつもりよ。そうなる前に退散しましょう!」


 突然手を引いて方向転換するリアンに、アノンは狼狽する。


「安心してアノン。アノンがこのまま無職でもお姉ちゃんが養ってあげるから」

「この間の誓いはどうなるのさ⁉ 僕がただ姉さんと一緒にお風呂に入っただけになっちゃうよ⁉」

「私を守るっていう約束なら騎士にならずとも果たせるでしょう。とにかく、まずはお家に帰りましょう」

「帰ったらシエスタさんに怒られるって⁉」

「べつに構わないわ。それに、私に歯向かったら首跳ねるだけだし」

「二人って本当に友達なの⁉」

「友達である前に王族と騎士よ」


 と澄ました顔で答えるリアンは、力づくでアノンを家に連れ帰ろうとする。

 そんなやり取りをしていると、


「なんか騒がしいと思ったら、どうやら迷わずに来れたようね」


 目的地となる方向から声が聞こえて、姉弟は揃って顔を振り向かせる。

 挨拶する直前、女性の登場にリアンは舌打ちしながらその名前を呼んだ。


「……シエスタ」

「朝から盛大な舌打ちをありがとう、リアン。弟くんもおはよう」

「おはようございます、シエスタさん」


 リアンに嫌味を吐きながら、アノンには華やかな笑みを向けてくる。


 けっ、と唾を吐く姉を尻目に、アノンは今日の入団テストの監督となるシエスタに頭を下げた。


「今日はよろしくお願いします」

「あはは。弟くんはお姉さんと違って礼儀正しいわね」

「……アナタ。あまり私に無礼な態度を取らない方がいいわよ。いくら友人でも、簡単に首を跳ねることができるんだからね」

「こわっ。冗談じゃん」


 へらへらと笑うシエスタに、リアンは二度目の唾を吐く。

 それから姉は飄々としたシエスタを睨んだまま、己の腕を組んで問いかけた。


「それで、いつもは騎士宮でやるはずの入団テストを、今回はどうしてこんな街離れの森でやるのかしら?」

「いやー、やっぱりそこ気になるわよねー」

「私を欺けると思って?」


 高圧的な態度を崩さないリアンに、シエスタはふるふると首を横に振った。


「そんなの最初から思ってないわよ。ただ、どうしても今回の入団テストに騎士宮は使えなかっただけ」

「? なぜ? 入団テストはアノン一人だけでしょう」


 怪訝な顔で問い詰めるリアンに、シエスタは腕を交差させて✕印を作ると、


「それが今回の入団テストは弟くん一人じゃないんだなー」

「何それ。私初耳よ」

「僕も」

「だって言ってないもん」


 このクソ女っ、と姉が奥歯を噛む。


「やっぱり帰りましょうアノン。この入団テスト、絶対ロクでもないわ」

「ロクでもなくなんかないわ。しっかりと将来のことを見据えた大切な入団テストよ」

「何を馬鹿な事言ってるのよ」

「馬鹿な事なんて何もないわ」


 そしてシエスタは意図的に間を置くと、真っ直ぐにリアンを見つめた。

 その視線にわずかにたじろぐリアンに、シエスタは不気味な笑みを浮かべると、 


「本日行う入団テストは、リアン。アナタ専属の護衛部隊を確立する為のもの。そして、その隊の名は――グレアスフォール騎士団・0番隊」


 それを聞いた瞬間、アノンは心の中で、シエスタに誘われたのは運命だったと感じた。

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