誘い
キユリさんの差し出した一着のポロシャツは胸の穴を中心に血が大量に付き右胸のポケットには「空乃」と丁寧に刺繍がされてあった。
「嘘……だろ……?なら何故俺が生きてるんですか?」
「そりゃあ私が生き返らせてあげたからだよ。まあ生き返らせるといっても『遺物』を使ってだけどね」
「遺物?なんですかそれ?」
「君のぶら下げてる青い石のネックレスの事だよ。遺物ってのは簡単に言ってしまえば物凄い力を秘めた道具の事だよ」
「これが俺の命の代わりになってくれたってことですか?」
澄んだ青色のネックレスの中を覗き込む。市販で売られているネックレスと大差は無いが効果はあるのだろう。
「命の代わりじゃないよ。君の身体の時間を少しだけ戻したんだ。もうそのネックレスは数年……いや数十年は使えないだろう。」
「まじです?そんな貴重な物を俺に使ったんですか?」
「君自分が殺されて生き返った事を本当に信じているのかい?さすがに疑うくらいはするだろう。そんな信じきったような顔されたらなんか恥ずかしくなるよ」
「いや嘘も何もさっきまで着てたポロシャツが血まみれの状態になって帰ってきたら信じますよ。」
「信じてくれるなら話は早いね。君を生き返らせた理由はいくつかあるけど、そのうちの一つに君が魔術師の素養がある事が分かったからかな」
「魔術師……魔術……?そういえば」
『交渉成立ね。じゃあ答えてあげる。他の生徒や先生方には私の声を通して眠る魔術よ。この事は皆には記憶は残ってないはずだわ。これでいいかしら?』
「思い出した、俺あいつに心臓を撃ち抜かれたんだ。なんで忘れてたんだ?普通絶対忘れないのに……」
キユリさんに言われるまで体育館での出来事を完全に頭から抜けていた。
「望月#希香__ききょう__#のあの集団での魔術は眠らせて記憶を忘れさせるまでがセットだったんだろう。とにかく話を戻すよ。君みたいな一般人が魔術の素養を持っているなんて珍しいにも程がある、例えば落雷に打たれる確率より低いくらい珍しい。私はどうしても望月に見られるというリスクを犯しても君が魔術師としてどうなるのか見たくなった」
彼女はまくし立てあげた後1呼吸し俺に言った。
「君私の元で働かない?」
危険な魔女の誘いはこれまでの日常を全て投げ打ってまでもノリたくなるような雰囲気をしていた。
そして俺は
「よろしくお願いします」
もう後戻りは出来なくなった。
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